私の婚約者が完璧過ぎて私にばかり批判が来る件について

下菊みこと

文字の大きさ
上 下
15 / 67

弟がむかつく。というか許せない。

しおりを挟む
今日は学園がお休みなので、家にユリアが遊びに来てくれてます。

「ユリアナさん、ご機嫌よう」

「ユリアナさん。よく来てくれたね」

「ご機嫌よう。お義父様、お義母様、アベル様」

「ご機嫌よう、義姉上」

父上と母上はいつもユリアを笑顔で出迎えてくれる。ユリアとの出会いが、僕を変えてくれたのを知っているから。一方アベル様はいつもと同じ素っ気ない態度。

「アベル、ユリアナに素っ気ない態度をとるのはやめろ」

「兄上には関係ないでしょう」

「関係ある。僕はユリアの婚約者なんだから」

「ノア、そんな風に言わないで。私は気にしてないから」

「ほらほら、ユリアナさんが困っているよ。二人ともその辺にしておきなさい」

ユリアと父上に止められる。まだ言い足りないのに。

「それよりも良質な茶葉が入ったのよ、一緒にお茶会にしましょう?」

「ああ、いいですね。ユリア、僕が淹れてあげるね」

「ありがとう、ノア」

「…お待ちください、兄上。少々淹れ方にコツがあります。今日は僕が淹れましょう」

「…?そうか、なら頼む。…珍しいこともあるものだな」

僕はこの後後悔することになる。やっぱり弟なんて信用するものじゃないと。

「ええ、まあ…」

「ありがとうございます、アベル様」

「いえ、将来の義姉になる方の為ですので」

そう言うと手際よくお茶を淹れてくれるアベル。

「さあ、どうぞ」

「ありがとう、いただきます…甘い、香り?」

…甘い香り?ジャムも何も入れていないのに?そう思ってアベルの方を見ると、アベル様の顔が歪んだ。…あれ、これ、マズいのでは?

「…!ユリア!そのお茶は飲んだらダメだ!」

ユリアの手の中にあるカップを奪う。

「アベル。お前、ユリアナに毒を盛ろうとしたな…?」

「…ええ、しましたね」

「アベル!?」

「ユリアナさんになんて事を…!お前の将来の義姉なんだぞ!」

…僕の怒りは頂点に達した。

「…もう、我慢出来ない。ユリアナに対して素っ気ない態度だっただけでも許せないのに、この仕打ち。許せない。」

バシンッ

手袋を地面に叩きつける。

「拾え。アベル、僕と決闘しろ」

「ええ、お受けいたします。」

しかしユリアが間に割って入る。

「あ、あの…きっと私が何かアベル様に失礼があったのよ!だから私が悪いの!お願いだから馬鹿な真似はやめて!」

「いや、ユリアは何も悪くない。悪いのはアベルだ」

「ええ、義姉上は関係ありません。ただ僕が気にくわないだけです」

一体何がそんなに気にくわないんだ。

「…決闘が成立してしまった以上仕方がない。私が見届け人になろう」

「お義父様!?」

「ありがとうございます、父上」

「ありがとうございます、申し訳ありません父上」

「…ああ、まさかこんなことになるなんて。母は悲しいわ。アベル」

「…申し訳ありません、母上」

「決闘の勝敗は、どちらかが命を落とすことで決定する。では、はじめ!」

そうして戦いが始まった。

最初はお互い互角の勝負だったけれど、次第にアベルが劣勢になっていった。そして、ついに僕がアベルの手から剣を弾き飛ばした。カラカラと音を立てて落ちたアベルの剣。アベルの首元に、僕の剣先が添えられる。

「何か言い残すことはあるか?」

「…僕は貴方と義姉上が大っ嫌いだ」

「言い残すことはそれだけか」

アベルの首を落とそうとしたその時だった。アベルの剣を持ったユリアが間に割って入ってしまった。

「…義姉上?」

「ユリア!?」

「ちょっと待った!ストップ!ストップ!」

「いくらユリアの願いでもそれは聞けない!どいて!ユリア!」

「いいえ!退きません!」

ユリアが剣を構える。

「どうしてもアベル様を殺すと言うのなら私を殺してからにして!」

「…っ!…それはっ」

そんなこと、僕には出来ない。

「…そんなこと、できるはずない」

カラン…

僕の手から剣が滑り落ちた。

「…ありがとう、ノア」

「ユリアは狡いよ…」

ユリアを抱きしめる。ユリアは黙って抱きしめ返してくれた。

「…さて、これはどうしたものかな。見届け人としてはどうすればいいと思う?」

「圧倒的にノアの方が優勢だったのだし、ノアの勝ちってことでいいじゃない」

父上と母上がひそひそと相談している。いや、こっちまで聞こえてますよ?

「義姉上…何故僕を庇うのですか?」

「だって、大切な義弟ですもの。それに、ノアの綺麗な手が汚れるなんて嫌でしょう?」

「…っ!ユリア!」

僕は今のユリアの台詞に感激し、抱きしめる力が更に強くなる。

「…すまない、ユリアナさん。今日の出来事はなかった事にしてくれないか?」

「父上!?」

何言ってるんだこの人!

「…父上、何を言っているのですか?」

「わかりました!なかった事にしましょう!」

「ユリア!?」

何でそこまでアベルを庇うの!?

「義姉上まで一体何を…」

「アベル、お前は一週間自室で謹慎処分だ」

「は?」

「待ってください!処分が軽すぎます!」

こんな軽い処分納得いかない!

「だが、ユリアナさんは軽い処分を望んでいるようだぞ?」

「…っ!ユリア!君は優し過ぎだ!」

「いいじゃない、それで穏便に済むのなら」

「ユリア…」

なんで君はそんなにまで優しいんだ。

「さあ、アベル。今から自室で謹慎してきなさい」

「…はい、母上」

「待て!アベル!いくらユリアナが許したって僕はユリアナを傷つける奴は許さないからな!」

僕のその言葉には何の反応も示さずアベルは自室に戻った。

「ごめんなさいね、ユリアナさん。うちのバカ息子が…」

「いえ、お気になさらないでください」

「今日はもう帰った方がいいだろう。ノア、送っていって差し上げなさい」

「…わかりました」

今日は馬車の中でユリアの方からたくさん僕の顔中にキスをしてくれた。僕は凄く喜んだ。喜んでるふりをした。本当はユリアが心配で仕方がなかった。…今日のことが、ユリアのトラウマにならなければいいんだけど。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。が、その結果こうして幸せになれたのかもしれない。

四季
恋愛
王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません

黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。 でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。 知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。 学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。 いったい、何を考えているの?! 仕方ない。現実を見せてあげましょう。 と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。 「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」 突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。 普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。 ※わりと見切り発車です。すみません。 ※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位) 第12回ネット小説大賞 小説部門入賞! 書籍化作業進行中 (宝島社様から大幅加筆したものを出版予定です)

婚約破棄を喜んで受け入れてみた結果

宵闇 月
恋愛
ある日婚約者に婚約破棄を告げられたリリアナ。 喜んで受け入れてみたら… ※ 八話完結で書き終えてます。

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

処理中です...