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婚約者のせいで他のご令嬢方に絡まれます

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「あんた一体何様のつもり!?」

「なんであんたなんかがノア様の婚約者なのよ!顔こそいいけど家柄がいいわけでもない、成績も平均的、ノア様にはあんたなんかよりもっといい人がいるじゃない!」

学園の一室でご令嬢方に絡まれる。いつものことだ。

私はユリアナ・オルコット。悲しきかな平凡な平民…ではなく男爵令嬢である。なんで貴族なのが悲しいか?そんなもの婚約者のせいに決まってる!

「ノア様は家柄良し、顔良し、文武両道、まさに学園の王子様なのよ!」

「なんであんたが独り占め出来るのよ!?」

そう。私の婚約者、ノア・オルティスは完璧超人なのである。公爵令息で、文武両道、見た目もまさに王子様と言った感じだ。彼の綺麗な黒髪と紫色の目はどんな令嬢でもポーッとしてしまうほど美しい。色白な肌もゴツゴツした手も、整えられた爪も美しい。顔のパーツも整っているし、背は高いし細マッチョ。そりゃ皆きゃーきゃーいうよね。

一方私はというと、家柄男爵家としては普通、成績普通、唯一顔だけはいいらしい。その顔で彼との婚約が決まったようなものだ。それにしたってプラチナブロンドの髪と緑の瞳。この国ではありふれた色だし、肌も色白だけどノアの美しさには遠く及ばない。そりゃ皆文句言ってくるわ。そりゃね。だからそれは私はべつにいい。好きなだけ文句言ってくれ。

ただし。私の婚約者は何故だか顔以外平凡な私を溺愛しています。ユリア、ユリアといつも甘やかしてくる彼にこんな場面見つかったら大変なのでは?

「ユリア!見つけた!こんな所にいたんだね、探したよー…こいつら、誰?」

「…っ、の、ノア様、ご機嫌よう」

「ご機嫌よう…」

「ご機嫌よう」

ノアに睨まれても挨拶を出来るあたりは尊敬する。

「…どーも。ところで、なんでこんな所でユリア…ユリアナと一緒にいるの。返答次第ではタダじゃおかないけど」

「…っ!」

あー、怯えちゃった、可哀想に…。助け船出すからちょっと待ってて。

「あー、のあ、ノア?」

「なーに?ユリア」

「この方々とはちょっと世間話していただけよ?そんなこと言わないで?」

「…本当に?」

「本当に。ねぇ、皆さん?」

「は、はい、そうです…」

「え、ええ、もちろんそうですわ」

「その…そうです、はい」

「ふーん。まあいいや、ユリアナに手を出したらわかってるよね?下手な真似はしないでね?…じゃあ、ユリア、一緒に帰ろ!」

さっきまでの怖い顔は何処へやら。花が咲いたような綺麗な笑顔で私に微笑むノア。

「ええ、そろそろ帰らないとね」

「馬車はもう準備してあるよー」

「じゃあ帰りましょ」

「うん!ユリアと帰れるなんて嬉しいなぁ」

「毎日一緒に帰ってるじゃない」

「それはそうだけど、でも嬉しいの!」

「ふふっ、ありがとう」

「僕こそありがとう」

ノアにさりげなく手を握られてるのが気になるけど、彼女達を守れてよかった。前に他のご令嬢方に絡まれたのを見られた時、ノアったらそのご令嬢方の家ごと潰していたからね。色んな不正やらなんやらが発覚して爵位没収されていたけれど、それ暴いたのノアだから。いくら私を溺愛してるからってやりすぎ。いやまあ、悪いことしてたご令嬢方の家が一番悪いんだけど。

「…でも、好きなのよねー」

「え?」

「ノアの事、だーいすきよ。」

「…!嬉しい!僕もユリアがだーいすき!」

そう言って私を抱きしめてくるノア。こんな平凡な私をここまで溺愛してくれる男性は後にも先にもノアだけだろう。そんなノアが私も大好きだ。多分いつか、愛してると思う時が来るんだろう。いやもしかしたら今も愛してるのかもしれない。でも確信出来るまでは愛してるなんて言えないかな。だってノアが学生結婚するとか言い出すのが目に見えてるんだもの。
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