108 / 108
番外編 雪の日
しおりを挟む
まだ幼い日のこと。
キューは雪の日に、雪で作ったウサギをオレにプレゼントしてくれた。
「兄様、雪でウサギを作ってみたの」
「わあ、キューは器用だね。ありがとう」
微笑んで受け取れば、どこか得意げな表情のキュー。
その素直さが愛おしくて、思わずキューを抱きしめたっけ。
その後は、雪のウサギを溶けるまでの間キューと共に愛でたのだ。
「キュー」
「なに、旦那様」
キューがオレを旦那様と呼ぶようになって。
もう兄様と呼ばれることはなくなった。
嬉しいのだけど、少しさみしい気もする。
「今日は冷えるから、これを羽織っておいで」
優しく上着をキューに着せる。
キューは微笑んだ。
「旦那様は過保護」
「それはそうだ。キューのことだもの」
「旦那様は甘い」
クスクス笑うキュー。
「そういえば、すごく冷えるけど雪は?」
「降ってるよ」
「旦那様、一緒に雪遊びしない?」
ワクワクした表情でキューが言う。
「ふふ、少しならいいよ」
「じゃあ雪だるまを作ろう?」
「うん」
キューと共に庭に出る。
庭とはいえ、寺から出ることはほぼないのでなんとなくそわそわしてしまう。
キューとともに二つの雪だるまを作った。
「旦那様とキューだよ」
「ああ、そういうこと」
「あとこれ、パンダ」
いつのまにか、キューはパンダの雪だるまも作っていたらしい。
二人と一匹で寄り添い合う雪だるま。
それを寺の中から尊そうに崇める教徒たちには気付かないキューは、満足そうに何度も頷いて満面の笑みを浮かべていた。
「さあ、身体が冷えるといけないから寺に戻ろう」
「はーい」
お互い、冷たい手を握りあって寺にもどる。
パンダも雪だるまの作成を見守ってくれていたらしく、にゃあにゃあ鳴いて冷えた身体にすりすりしてくれていた。
そんなパンダにあの雪だるまはパンダだよと教えれば、にゃーんと誇らしそうに鳴いた。
それから雪が溶けるまでの間、教徒たちは毎日オレたちの雪だるまにお参りをするようになったのだが…まあ、そのくらい別にいいだろう。
キューは雪の日に、雪で作ったウサギをオレにプレゼントしてくれた。
「兄様、雪でウサギを作ってみたの」
「わあ、キューは器用だね。ありがとう」
微笑んで受け取れば、どこか得意げな表情のキュー。
その素直さが愛おしくて、思わずキューを抱きしめたっけ。
その後は、雪のウサギを溶けるまでの間キューと共に愛でたのだ。
「キュー」
「なに、旦那様」
キューがオレを旦那様と呼ぶようになって。
もう兄様と呼ばれることはなくなった。
嬉しいのだけど、少しさみしい気もする。
「今日は冷えるから、これを羽織っておいで」
優しく上着をキューに着せる。
キューは微笑んだ。
「旦那様は過保護」
「それはそうだ。キューのことだもの」
「旦那様は甘い」
クスクス笑うキュー。
「そういえば、すごく冷えるけど雪は?」
「降ってるよ」
「旦那様、一緒に雪遊びしない?」
ワクワクした表情でキューが言う。
「ふふ、少しならいいよ」
「じゃあ雪だるまを作ろう?」
「うん」
キューと共に庭に出る。
庭とはいえ、寺から出ることはほぼないのでなんとなくそわそわしてしまう。
キューとともに二つの雪だるまを作った。
「旦那様とキューだよ」
「ああ、そういうこと」
「あとこれ、パンダ」
いつのまにか、キューはパンダの雪だるまも作っていたらしい。
二人と一匹で寄り添い合う雪だるま。
それを寺の中から尊そうに崇める教徒たちには気付かないキューは、満足そうに何度も頷いて満面の笑みを浮かべていた。
「さあ、身体が冷えるといけないから寺に戻ろう」
「はーい」
お互い、冷たい手を握りあって寺にもどる。
パンダも雪だるまの作成を見守ってくれていたらしく、にゃあにゃあ鳴いて冷えた身体にすりすりしてくれていた。
そんなパンダにあの雪だるまはパンダだよと教えれば、にゃーんと誇らしそうに鳴いた。
それから雪が溶けるまでの間、教徒たちは毎日オレたちの雪だるまにお参りをするようになったのだが…まあ、そのくらい別にいいだろう。
170
お気に入りに追加
1,795
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(19件)
あなたにおすすめの小説
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!
枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」
そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。
「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」
「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」
外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。
悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない
亜瑠真白
恋愛
推しキャラを幸せにしたい転生令嬢×裏アリ優等生攻略キャラ
社畜OLが転生した先は乙女ゲームの悪役令嬢エマ・リーステンだった。ゲーム内の推し攻略キャラ・ルイスと対面を果たしたエマは決心した。「他の攻略キャラを出し抜いて、ルイスを主人公とくっつけてやる!」と。優等生キャラのルイスや、エマの許嫁だった俺様系攻略キャラのジキウスは、ゲームのシナリオと少し様子が違うよう。
エマは無事にルイスと主人公をカップルにすることが出来るのか。それとも……
「エマ、可愛い」
いたずらっぽく笑うルイス。そんな顔、私は知らない。
転生悪役令嬢、物語の動きに逆らっていたら運命の番発見!?
下菊みこと
恋愛
世界でも獣人族と人族が手を取り合って暮らす国、アルヴィア王国。その筆頭公爵家に生まれたのが主人公、エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌだった。わがまま放題に育っていた彼女は、しかしある日突然原因不明の頭痛に見舞われ数日間寝込み、ようやく落ち着いた時には別人のように良い子になっていた。
エリアーヌは、前世の記憶を思い出したのである。その記憶が正しければ、この世界はエリアーヌのやり込んでいた乙女ゲームの世界。そして、エリアーヌは人族の平民出身である聖女…つまりヒロインを虐めて、規律の厳しい問題児だらけの修道院に送られる悪役令嬢だった!
なんとか方向を変えようと、あれやこれやと動いている間に獣人族である彼女は、運命の番を発見!?そして、孤児だった人族の番を連れて帰りなんやかんやとお世話することに。
果たしてエリアーヌは運命の番を幸せに出来るのか。
そしてエリアーヌ自身の明日はどっちだ!?
小説家になろう様でも投稿しています。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
最後までとても楽しく読ませて頂きました。
キューとの結婚の時に「どこの馬の骨」と言われないようにキューの実家は後ろ盾にする為に残しておくのかと思ったけど…これでは命令されただけの乳母の方が罰がキツかったかなと思いました。
お狐様、弟が成人したら両親にも天罰がありますように。
キューは孤独なお兄様のためにこの世に生まれたような気がします。
これからも2人で仲良くね!
感想ありがとうございます。弟が爵位を継いだら両親ともに不可解なアンラッキー体質になるかもしれませんね。二人とも末永く幸せになってくれると思います!
キューちゃんが幸せで良き。
狐が保護した子のその後はどうなったのでしょう。心を入れ替えて幸せに成れれば良いけど。
感想ありがとうございます。お狐様が色々考えてもう大丈夫だろうと判断したら現実世界にリリースされて幸せになれるでしょうし、このまま夢の世界にいた方がいっそ幸せと判断されればその可能性もあります。
兄様、キューちゃん見つけたあたりから
無意識に執着していらしたような?ふふっ
妖より?気になりますわ〜
更新お待ちしております♪
感想ありがとうございます。実際には最初から結構執着気味でしたよね笑