75 / 108
聖女が見たもの
しおりを挟む
「教皇猊下、今よろしいでしょうか」
「なんだ、聖女ではないか。どうした?」
いつまで経っても私を名前で呼んでくださらない教皇猊下。
きっと、名前自体覚えていないのだろう。
「今日、ついさっきまでパラディース教に行って参りました」
「む、なにをしに行った?」
「パラディース教の教主の悪行を止めようと」
私の言葉に教皇猊下は愉快そうに笑う。
「でかした!その神から与えられし聖なる魔力で、あの憎き寺を灰にしたのだな!」
「…パラディース教の教主は、まだ幼い子どもでした」
「ああ、そうとも!生意気なクソガキだ!」
私はこの地位に就くのに何十年もかけたというのに、と言う教皇猊下はまるで俗物だ。
子どもが相手だと知っていてこんな風に言うなんて。
「パラディース教では、生活に困窮している者を寺に泊めて自立の手伝いをしているそうです」
「ああ。そうやって人々の心を惑わし信者を増やし、ついには棄民や平民だけでなく貴族社会や商人たちの間にまで広がっているのだ!」
敬愛すべき教皇猊下だけど、それはあんまりな言い方だと思う。
「私はパラディース教を灰にしたりしません」
「なに?」
「私が見たのは幼い妹を守る小さな教主の姿。そして、そんな彼を守る幼い妹の姿です。教徒たちもなに不自由なく暮らしている様子でした」
「…聖女よ、まさか奴らに肩入れするつもりか?」
「もし聖神教がパラディース教に嫌がらせをしたり対立したりするならば、私は聖女としての力を使うことを一切やめます」
教皇猊下は目を見張る。
「…くぅっ、わかった!奴らには手出しはせんっ」
「わかっていただけてよかったです。あと、教会にある莫大な資金も少しは民草のためにお使いください」
「わかった!わかった!話はそれだけだな!」
こくりと頷けば、教皇猊下は深くため息をつく。
そのため息がどんな意味かは、考えないことにした。
その後、教皇猊下のご下命で我ら聖神教の者はパラディース教を害することを禁じられた。
これであの双子が、安心して過ごせるようになればいいのだけれど。
…双子だよね?
「なんだ、聖女ではないか。どうした?」
いつまで経っても私を名前で呼んでくださらない教皇猊下。
きっと、名前自体覚えていないのだろう。
「今日、ついさっきまでパラディース教に行って参りました」
「む、なにをしに行った?」
「パラディース教の教主の悪行を止めようと」
私の言葉に教皇猊下は愉快そうに笑う。
「でかした!その神から与えられし聖なる魔力で、あの憎き寺を灰にしたのだな!」
「…パラディース教の教主は、まだ幼い子どもでした」
「ああ、そうとも!生意気なクソガキだ!」
私はこの地位に就くのに何十年もかけたというのに、と言う教皇猊下はまるで俗物だ。
子どもが相手だと知っていてこんな風に言うなんて。
「パラディース教では、生活に困窮している者を寺に泊めて自立の手伝いをしているそうです」
「ああ。そうやって人々の心を惑わし信者を増やし、ついには棄民や平民だけでなく貴族社会や商人たちの間にまで広がっているのだ!」
敬愛すべき教皇猊下だけど、それはあんまりな言い方だと思う。
「私はパラディース教を灰にしたりしません」
「なに?」
「私が見たのは幼い妹を守る小さな教主の姿。そして、そんな彼を守る幼い妹の姿です。教徒たちもなに不自由なく暮らしている様子でした」
「…聖女よ、まさか奴らに肩入れするつもりか?」
「もし聖神教がパラディース教に嫌がらせをしたり対立したりするならば、私は聖女としての力を使うことを一切やめます」
教皇猊下は目を見張る。
「…くぅっ、わかった!奴らには手出しはせんっ」
「わかっていただけてよかったです。あと、教会にある莫大な資金も少しは民草のためにお使いください」
「わかった!わかった!話はそれだけだな!」
こくりと頷けば、教皇猊下は深くため息をつく。
そのため息がどんな意味かは、考えないことにした。
その後、教皇猊下のご下命で我ら聖神教の者はパラディース教を害することを禁じられた。
これであの双子が、安心して過ごせるようになればいいのだけれど。
…双子だよね?
595
お気に入りに追加
1,812
あなたにおすすめの小説
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました
みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。
日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。
引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。
そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。
香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される
安眠にどね
恋愛
社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。
婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。その虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!?
【第16回恋愛小説大賞 奨励賞受賞。ありがとうございました!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる