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今世の仇はどうしてくれよう

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結局その後キューはとてもよく寝て、次の日のお昼…つまりは今の今までぐっすりだ。

精神的なあれそれで寝て回復しているんだろう。

だが起きたら綺麗さっぱり、とまではいかなくてもすごくすごく心が楽になっているはず。

それはまあ、よかったんだけど。 

「昨日のキューケン様は年相応のお姿だったな」

「ゴッドリープ様の言いつけを破ってまで看病しに行くとは」

「だがゴッドリープ様もおかげで癒されたと朝仰っていたからな」

「よかったよかった」

寺の中の居住区画にちらっと顔を出せば、やはり昨日の事情を知る教徒たちが話をしていた。

「だが、その後キューケン様は泣き叫んでいらしたな」

「キューケン様のことが心配で仕方なかったとはいえ、聞いてしまって申し訳無かったな…」

「とても痛ましい内容だったな…」

「だが、ゴッドリープ様や…ありがたいことに我々への愛まで叫んでくださったな」

「あれはお可愛らしかったな」

わかる。可愛かった。

さて、そろそろ声をかけようか。

「…まあ、そういうことでね」

「ご、ゴッドリープ様っ」

「昨日の妹はとても愛らしかっただろう?お前たちもキューからとても大切に思われているんだよ」

そう微笑んで登場してやる。

「は、はい!本当にありがたいことです!」

「もちろんオレも、キューにも負けないくらいお前たちを大事に思っているからね」

「は、はい!」

心酔した瞳。

そう、オレを見る目は普通これだ。

キューは、特別。

キューだけは、初めから違った。

オレだけのキュー。

「…けれど可哀想に。そんな心清らかで優しくて、オレの自慢の妹はここに来るまでそんな扱いを受けていたらしい」

オレが悲しげな顔をすれば、教徒たちの顔も曇る。

「大切にされるべき、美しい心を持った聡明な幼子を…事もあろうに忌み子扱いとは」

「忌み子扱いっ…!」

「本当は、オレだってこの世全ての罪を赦してやりたいと思ってる。けれど…けれど、キューが受けた仕打ちはあまりにも…」

言いながら、胸が痛む。

涙が出てしまって、おっといけないと服の袖で拭った。

教徒たちの心に寄り添ってやる時に泣いてしまうのはしょうがないが、普段はゆったりと大きく構えていなくちゃね。

「ゴッドリープ様…」

「ふふ、ごめんよ。大丈夫。ああけれど、キュー自身は昨日気持ちを吐露したことで少しは救われてくれただろうか」

「も、もちろんです!きっと、きっと!」

「であれば嬉しい。けれど悪い子なオレは思ってしまうんだ」

彼らを見据えて、はっきりと言った。

「キューに仇を成した者たちに、神罰を与えたいと」

彼らは何も言わずに、静かに頷いた。
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