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約束の証

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「じゃあ、指をほどくよ」

そうわざわざ宣言して兄様は私の小指を解放する。

「え、なにこれ」

すると私の小指には、刺青みたいなものが入っていた。

こそばゆいのの正体はこれか!

「兄様、言ってくれたらよかったのに」

「ごめんね、でもどうしても特別なお約束がしたかったんだ」

「特別なお約束?」

どういう意味だろう。

「うん、あのね。兄様は人間だよ」

「知ってる」

「でも兄様は、あのクソギツネのせいで半分妖に片足を突っ込んでる。人間だけど、妖。えっと、マシな言い方をするなら…現人神的なものかなぁ。実際は神というより妖に近いとはいえ、我がパラディース教的に言うならそれで間違いない」

ふむふむ。

可哀想な兄様。

「そっか。でもキューはずーっと一緒にいるからね」

「ありがとう。これはね、そのためのお約束だよ」

兄様が刺青を愛おしそうに撫でる。

「兄様は加護の他に、妖に片足を突っ込んでるせいでちょっと神通力的なものも使えるんだ。これもその一環と思っていい」

「キューわかんない」

「この刺青があれば、キューは兄様とずーっと一緒にいられるんだよ」

まあ、実際ちゃんと理解できているのかは怪しいが。

とりあえず、この刺青があればずーっと一緒という約束は守られるということらしい。

「そっか。ゾクゾクしたけどいい物なんだね」

「いい物と思うかは人それぞれかな。オレもキューと約束すると決まるまでは要らない力だと思っていたから」

「でも、これでずーっと一緒なんだよね?」

なら、私にとっては大切なものだよ。

そう言って、私が小指にちゅーをしたら兄様はたまらない様子で私をぎゅっと抱きしめる。

「兄様?」

「一生離さない」

「え、うん。そのためのこれでしょう?」

これとは言わずもがな刺青のことである。

「そうだよ」

「ならもう大丈夫。ずーっと一緒だもんね」

「うん…」

兄様は私の肩に顔を埋める。

「愛してるよ、キュー」

「キューも兄様が大好きだよ」

「一生一緒だよ…」

その言葉はまるでいっそ呪いにも近いような。

なんでか知らないけれど、そう感じた。

けれどそれでもいいやと思う辺り、やっぱり私は兄様が大好きだ。

「兄様」

「うん」

「お約束してくれてありがとう」

お礼を言えば、兄様は目を丸くする。

何故。

「あのね、お約束してくれて…素敵なお約束の証もくれて嬉しかったよ。何も言わずにつけるから、最初はちょっと怖かったけど」

「うん、何も言わなくてごめんね…喜んでくれるとは思わなかったんだ」

「兄様とずーっと一緒にいれるなら、嫌なことなんてないよ」

「…嬉しい。キューはオレを喜ばせる天才だ」

そう言ってやっぱり嬉しそうに、過去一の笑顔を見せてくれるから。

ちゃんと気持ちを伝えて良かったなぁとぼんやり思った。

約束の証に感じた嫌な予感に関しては、知らないふりをすることに決めた。

兄様の方が、小指なんかより大事だもん。
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