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妹を傷つけた者の末路
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結局。
あの子爵家は爵位と領地の返上をお上に申し出た。
無事あの辺りは国の直轄領となり、民はむしろ税金が僅かばかり安くなって喜んだとか。
彼ら本人は平民となる。
目敏くも自らの立場の危うさはわかっていて、ボディーガードをきちんとつけているらしい。
「いやはや、さすがは元お貴族様。身の振り方はわかっている」
私財を一部投資に当てて、継続的な収入源も得た。
金銭的にも落ち着いてやり繰りを上手く出来るようになったらしく、勝ち逃げされたかなと思ったが。
まあ、一つだけ残念なお知らせもある。
「ムーンリットが、行方知れずになった…か」
ムーンリット。
オレの妹を傷つけた憎い相手。
調査報告書が、オレの手の中でぐしゃりと音を立てた。
「せっかく腕のいい私立探偵を雇ったが、同じことか」
どこの情報屋も同じ情報しか寄越さない。
これはもう確定だろう。
「あの忌々しいキツネめ」
アレが余計なことをしてくれたに違いない。
オレが手を下すことを嫌がり、自分の手元に引き寄せたのだろう。
アレは人間に甘いから、拷問などは行わず長い間神隠しでもしてその間自分の世話をさせ償わせるとかそんな程度の罰しか与えない。
…なんの罰もないよりはマシだが。
「とはいえ」
気を取り直して調査報告書を見る。
あの娘の両親は、愛娘を失い相当参っているらしい。
昔から仕えてくれている使用人は残ってくれていて、ボディーガードは事前に長期契約済み、投資の方も既に金は出していて後は入って来るだけの形にしてあるからあの娘の両親が魂が抜けたような状態になっていても、まあ生きてはいけるようにはなっているようだが。
割と本気で、生死を彷徨っていたはずの娘が神隠しに遭いショックで腑抜けとなったらしい。
神隠しに遭った娘自身も、オレに追い打ちをかけられるより何倍もマシだろうが幼子が親と引き離されたので精神的に厳しいだろう。
「…仕返しとしては十分」
だが気に食わない。
この手で終わらせられなかったこともそうだが。
「愛し子だのなんだのと…こちらが望んでもいないのに手を出してきて」
忌々しいキツネめ。
憎たらしい。
今となってはあの娘より憎たらしい。
「いつか絶対に泣かす」
あのキツネは泣かす。
確実に泣かす。
具体的な手段は思い浮かばないが、泣かせてやる。
そう心に決めて、調査報告書をビリビリに破いた。
八つ当たりではなく、万が一にも可愛いキューの目に触れさせないためである。
「さ、細切れにしたところでゴミ箱にイン」
バラバラになったそれがゴミ箱にしっかり入るのを見届けてから、オレはなんでもない顔をして自然ふれあい体験と銘打ってオレをおもてなしするキューが今日も待っているだろうキューの部屋へ向かった。
オレがいつもの仕事終わりと違い先に自分の部屋に向かったことに、聡明なキューが気付かないでいてくれたことを祈りつつ、だが。
結果、多分気付いていたようだがスルーしてくれたので助かった。
あの子爵家は爵位と領地の返上をお上に申し出た。
無事あの辺りは国の直轄領となり、民はむしろ税金が僅かばかり安くなって喜んだとか。
彼ら本人は平民となる。
目敏くも自らの立場の危うさはわかっていて、ボディーガードをきちんとつけているらしい。
「いやはや、さすがは元お貴族様。身の振り方はわかっている」
私財を一部投資に当てて、継続的な収入源も得た。
金銭的にも落ち着いてやり繰りを上手く出来るようになったらしく、勝ち逃げされたかなと思ったが。
まあ、一つだけ残念なお知らせもある。
「ムーンリットが、行方知れずになった…か」
ムーンリット。
オレの妹を傷つけた憎い相手。
調査報告書が、オレの手の中でぐしゃりと音を立てた。
「せっかく腕のいい私立探偵を雇ったが、同じことか」
どこの情報屋も同じ情報しか寄越さない。
これはもう確定だろう。
「あの忌々しいキツネめ」
アレが余計なことをしてくれたに違いない。
オレが手を下すことを嫌がり、自分の手元に引き寄せたのだろう。
アレは人間に甘いから、拷問などは行わず長い間神隠しでもしてその間自分の世話をさせ償わせるとかそんな程度の罰しか与えない。
…なんの罰もないよりはマシだが。
「とはいえ」
気を取り直して調査報告書を見る。
あの娘の両親は、愛娘を失い相当参っているらしい。
昔から仕えてくれている使用人は残ってくれていて、ボディーガードは事前に長期契約済み、投資の方も既に金は出していて後は入って来るだけの形にしてあるからあの娘の両親が魂が抜けたような状態になっていても、まあ生きてはいけるようにはなっているようだが。
割と本気で、生死を彷徨っていたはずの娘が神隠しに遭いショックで腑抜けとなったらしい。
神隠しに遭った娘自身も、オレに追い打ちをかけられるより何倍もマシだろうが幼子が親と引き離されたので精神的に厳しいだろう。
「…仕返しとしては十分」
だが気に食わない。
この手で終わらせられなかったこともそうだが。
「愛し子だのなんだのと…こちらが望んでもいないのに手を出してきて」
忌々しいキツネめ。
憎たらしい。
今となってはあの娘より憎たらしい。
「いつか絶対に泣かす」
あのキツネは泣かす。
確実に泣かす。
具体的な手段は思い浮かばないが、泣かせてやる。
そう心に決めて、調査報告書をビリビリに破いた。
八つ当たりではなく、万が一にも可愛いキューの目に触れさせないためである。
「さ、細切れにしたところでゴミ箱にイン」
バラバラになったそれがゴミ箱にしっかり入るのを見届けてから、オレはなんでもない顔をして自然ふれあい体験と銘打ってオレをおもてなしするキューが今日も待っているだろうキューの部屋へ向かった。
オレがいつもの仕事終わりと違い先に自分の部屋に向かったことに、聡明なキューが気付かないでいてくれたことを祈りつつ、だが。
結果、多分気付いていたようだがスルーしてくれたので助かった。
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