43 / 108
お揃いのものを持つということ
しおりを挟む
お部屋に飾ってある白いキツネの編みぐるみ。
初めて編みぐるみに挑戦したにしては上手く出来上がってくれた、我が渾身の傑作だ。
みんなでお揃いで持つ編みぐるみはどれも超傑作ばかり。
特に兄様に上げたのは本当に初めての作品。
だが、この子も二つ目の作品であり自分のものであるから思い入れが強い。
「まあ、兄様のおかげで上手く作れただけだけど」
それを言ってしまうと元も子もないが、上手く作れたのは兄様のおかげだ。
自分が天才だったわけではなく、何に対してもチートな兄様がアドバイスをくれながら作ったから。
しかし、であればこそ二人の初めての合同作品とも言えるのではないだろうか。
うん、言える。
私史上初の編みぐるみであり、私史上初の誰かとの合作であり、その誰かが他でもない大好きな兄様。
「そう考えると、より愛おしいよね」
飾ってあった白いキツネの編みぐるみを手に取り、抱きしめてやる。
小さなそれは強く抱きしめると壊れてしまいそうで、結局はすぐに元の位置に戻したが。
「ふふっ」
こうして思い出と、思い出の品が増えていくのは感慨深い。
前世では家を飛び出すまで人との交流などあってないに等しい状態だったし、当然思い出の品などなかった。
家を飛び出して工場に入ってからも、先輩方は可愛がってくださったが深入りはお互いしない。
今世は紆余曲折ありつつも、なんだかんだで色々な経験を積み人として成長出来ているのではないだろうか。
…いや、わからんけども。
「そうだといいな」
少なくとも、兄様のくれた色々なものは大切にしたい。
物もそうだけれど、思い出や感情など形に残らないものも。
…ちょっと照れくさいけど、愛情とか絆とかいうものも。
「ふふっ」
私は多分、私自身が思っている何倍も恵まれていて。
私は多分、私自身が思っている何倍も愛されていて。
私は多分、私自身が思っている何倍も愛している。
その全部が兄様由来だ。
「兄様に出会えたことが、今世どころか前世も丸っと含めて全部で一番のラッキーだよね」
そうひとりごちる。
胸が温かくなる。
そろそろ時間だろうか。
「キュー、おまたせ」
「兄様!」
「今日は何を見せてくれるの?」
「今日は、じゃーん!たんぽぽです!」
「おや、可愛い」
今日も兄様の自然ふれあい体験のために境内から採取したたんぽぽを見せる。
兄様はそれすら物珍しそうにしているから、本当に自然ふれあい体験を開催して正解だった。
兄様にたくさんのものをもらっている分、兄様にも少しでもお返し出来ていたら嬉しいな。
初めて編みぐるみに挑戦したにしては上手く出来上がってくれた、我が渾身の傑作だ。
みんなでお揃いで持つ編みぐるみはどれも超傑作ばかり。
特に兄様に上げたのは本当に初めての作品。
だが、この子も二つ目の作品であり自分のものであるから思い入れが強い。
「まあ、兄様のおかげで上手く作れただけだけど」
それを言ってしまうと元も子もないが、上手く作れたのは兄様のおかげだ。
自分が天才だったわけではなく、何に対してもチートな兄様がアドバイスをくれながら作ったから。
しかし、であればこそ二人の初めての合同作品とも言えるのではないだろうか。
うん、言える。
私史上初の編みぐるみであり、私史上初の誰かとの合作であり、その誰かが他でもない大好きな兄様。
「そう考えると、より愛おしいよね」
飾ってあった白いキツネの編みぐるみを手に取り、抱きしめてやる。
小さなそれは強く抱きしめると壊れてしまいそうで、結局はすぐに元の位置に戻したが。
「ふふっ」
こうして思い出と、思い出の品が増えていくのは感慨深い。
前世では家を飛び出すまで人との交流などあってないに等しい状態だったし、当然思い出の品などなかった。
家を飛び出して工場に入ってからも、先輩方は可愛がってくださったが深入りはお互いしない。
今世は紆余曲折ありつつも、なんだかんだで色々な経験を積み人として成長出来ているのではないだろうか。
…いや、わからんけども。
「そうだといいな」
少なくとも、兄様のくれた色々なものは大切にしたい。
物もそうだけれど、思い出や感情など形に残らないものも。
…ちょっと照れくさいけど、愛情とか絆とかいうものも。
「ふふっ」
私は多分、私自身が思っている何倍も恵まれていて。
私は多分、私自身が思っている何倍も愛されていて。
私は多分、私自身が思っている何倍も愛している。
その全部が兄様由来だ。
「兄様に出会えたことが、今世どころか前世も丸っと含めて全部で一番のラッキーだよね」
そうひとりごちる。
胸が温かくなる。
そろそろ時間だろうか。
「キュー、おまたせ」
「兄様!」
「今日は何を見せてくれるの?」
「今日は、じゃーん!たんぽぽです!」
「おや、可愛い」
今日も兄様の自然ふれあい体験のために境内から採取したたんぽぽを見せる。
兄様はそれすら物珍しそうにしているから、本当に自然ふれあい体験を開催して正解だった。
兄様にたくさんのものをもらっている分、兄様にも少しでもお返し出来ていたら嬉しいな。
182
お気に入りに追加
1,826
あなたにおすすめの小説
破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました
平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。
王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。
ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。
しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。
ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
告白さえできずに失恋したので、酒場でやけ酒しています。目が覚めたら、なぜか夜会の前夜に戻っていました。
石河 翠
恋愛
ほんのり想いを寄せていたイケメン文官に、告白する間もなく失恋した主人公。その夜、彼女は親友の魔導士にくだを巻きながら、酒場でやけ酒をしていた。見事に酔いつぶれる彼女。
いつもならば二日酔いとともに目が覚めるはずが、不思議なほど爽やかな気持ちで起き上がる。なんと彼女は、失恋する前の日の晩に戻ってきていたのだ。
前回の失敗をすべて回避すれば、好きなひとと付き合うこともできるはず。そう考えて動き始める彼女だったが……。
ちょっとがさつだけれどまっすぐで優しいヒロインと、そんな彼女のことを一途に思っていた魔導士の恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
幼女公爵令嬢、魔王城に連行される
けろ
恋愛
とある王国の公爵家の長女メルヴィナ・フォン=リルシュタインとして生まれた私。
「アルテミシア」という魔力異常状態で産まれてきた私は、何とか一命を取り留める。
しかし、その影響で成長が止まってしまい「幼女」の姿で一生を過ごすことに。
これは、そんな小さな私が「魔王の花嫁」として魔王城で暮らす物語である。
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。
橘ハルシ
恋愛
ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!
リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。
怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。
しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。
全21話(本編20話+番外編1話)です。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる