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お揃いのものを持つということ

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お部屋に飾ってある白いキツネの編みぐるみ。

初めて編みぐるみに挑戦したにしては上手く出来上がってくれた、我が渾身の傑作だ。

みんなでお揃いで持つ編みぐるみはどれも超傑作ばかり。

特に兄様に上げたのは本当に初めての作品。

だが、この子も二つ目の作品であり自分のものであるから思い入れが強い。

「まあ、兄様のおかげで上手く作れただけだけど」

それを言ってしまうと元も子もないが、上手く作れたのは兄様のおかげだ。

自分が天才だったわけではなく、何に対してもチートな兄様がアドバイスをくれながら作ったから。

しかし、であればこそ二人の初めての合同作品とも言えるのではないだろうか。

うん、言える。

私史上初の編みぐるみであり、私史上初の誰かとの合作であり、その誰かが他でもない大好きな兄様。

「そう考えると、より愛おしいよね」

飾ってあった白いキツネの編みぐるみを手に取り、抱きしめてやる。

小さなそれは強く抱きしめると壊れてしまいそうで、結局はすぐに元の位置に戻したが。

「ふふっ」

こうして思い出と、思い出の品が増えていくのは感慨深い。

前世では家を飛び出すまで人との交流などあってないに等しい状態だったし、当然思い出の品などなかった。

家を飛び出して工場に入ってからも、先輩方は可愛がってくださったが深入りはお互いしない。

今世は紆余曲折ありつつも、なんだかんだで色々な経験を積み人として成長出来ているのではないだろうか。

…いや、わからんけども。

「そうだといいな」

少なくとも、兄様のくれた色々なものは大切にしたい。

物もそうだけれど、思い出や感情など形に残らないものも。

…ちょっと照れくさいけど、愛情とか絆とかいうものも。

「ふふっ」

私は多分、私自身が思っている何倍も恵まれていて。

私は多分、私自身が思っている何倍も愛されていて。

私は多分、私自身が思っている何倍も愛している。

その全部が兄様由来だ。

「兄様に出会えたことが、今世どころか前世も丸っと含めて全部で一番のラッキーだよね」

そうひとりごちる。

胸が温かくなる。

そろそろ時間だろうか。

「キュー、おまたせ」

「兄様!」

「今日は何を見せてくれるの?」

「今日は、じゃーん!たんぽぽです!」

「おや、可愛い」

今日も兄様の自然ふれあい体験のために境内から採取したたんぽぽを見せる。

兄様はそれすら物珍しそうにしているから、本当に自然ふれあい体験を開催して正解だった。

兄様にたくさんのものをもらっている分、兄様にも少しでもお返し出来ていたら嬉しいな。
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