39 / 108
思ったより容赦ない
しおりを挟む
さてさて、二人が戻ってきてからまたまた数日が経ち。
落ち着いてきた頃に、特別任務とはなんだったのか兄様に聞いてみた。
「え、そんなことを気にしていたの?」
「うん」
「その場で聞けばよかったのに」
なんだ、聞いてもよかったのか。
特別任務とのことだったから、だめかと思っていた。
「ムーンリットを処すのにちょっとね」
「…?」
処す?
処すって言った?
え?
「に、兄様、なんて?」
「ああ、処すと言ってもさすがに打ち首とか拷問じゃないよ」
え、怖い。
普段のめちゃくちゃ優しくて温厚な兄様の口から出たと思えない言葉に戦慄する。
「ただほら、やったことの責任は負わせないとね」
「え、うん」
そりゃそうだけども。
「それに見せしめの意味もあるし」
「見せしめ!?」
だから言葉のチョイスが怖いよ!
おおよそ幼子の口から出ていい言葉じゃないよ!
「あと、全教徒たちにオレがいかにキューを愛してるか教えなくちゃ」
「それは素直にありがたいけども」
兄様の愛を見せつけてくれれば、ムーンリットみたいに私に意地悪する人は…増えるか減るかの両極端だろう。
そして、見せしめの意味を込めて処すならばおそらく減る方に動く。
とはいえ。
「…お、穏便に済ませたりとか」
「無理」
いい笑顔で言い切られた。
ああ、これは無理だ。
止められない。
普段優しい人ほど怒らせちゃいけないのだ。
私も気をつけよう。
「まあ、安心していいよ。ただ単に貴族社会で孤立無援…まで行かなくてもそれなりに浮いた状態にしてやるだけだから」
「それ子爵家のご令嬢にとっては致命的では」
「ムーンリットだけでなく、子爵家ごとだから大丈夫だよ」
「何が大丈夫なの?」
兄様、それオーバーキルだよ。
多分わかっていらっしゃるとは思うけど。
「まあまあ、いいじゃない。見せしめなら派手にやらないとね」
「キュー決めた。キュー一生兄様を怒らせない」
「そもそも兄様がキューに怒ることなんて一生ないよ。諭すなり叱ることはあるだろうけど」
兄様の甘々な言葉にまあそうだろうな、と思えてしまうくらいには甘やかされている。
だからこそ。
だからこそ見えない地雷には気をつけないといけないなと肝に銘じる。
大好きな人に、嫌われたくないからね。
「兄様、大好き」
「オレも大好きだよ」
心の中でこのぬるま湯のような幸せがずっと続くように祈りつつ、子爵家の面々にはせめて苦しまずに逝けと合掌した。
落ち着いてきた頃に、特別任務とはなんだったのか兄様に聞いてみた。
「え、そんなことを気にしていたの?」
「うん」
「その場で聞けばよかったのに」
なんだ、聞いてもよかったのか。
特別任務とのことだったから、だめかと思っていた。
「ムーンリットを処すのにちょっとね」
「…?」
処す?
処すって言った?
え?
「に、兄様、なんて?」
「ああ、処すと言ってもさすがに打ち首とか拷問じゃないよ」
え、怖い。
普段のめちゃくちゃ優しくて温厚な兄様の口から出たと思えない言葉に戦慄する。
「ただほら、やったことの責任は負わせないとね」
「え、うん」
そりゃそうだけども。
「それに見せしめの意味もあるし」
「見せしめ!?」
だから言葉のチョイスが怖いよ!
おおよそ幼子の口から出ていい言葉じゃないよ!
「あと、全教徒たちにオレがいかにキューを愛してるか教えなくちゃ」
「それは素直にありがたいけども」
兄様の愛を見せつけてくれれば、ムーンリットみたいに私に意地悪する人は…増えるか減るかの両極端だろう。
そして、見せしめの意味を込めて処すならばおそらく減る方に動く。
とはいえ。
「…お、穏便に済ませたりとか」
「無理」
いい笑顔で言い切られた。
ああ、これは無理だ。
止められない。
普段優しい人ほど怒らせちゃいけないのだ。
私も気をつけよう。
「まあ、安心していいよ。ただ単に貴族社会で孤立無援…まで行かなくてもそれなりに浮いた状態にしてやるだけだから」
「それ子爵家のご令嬢にとっては致命的では」
「ムーンリットだけでなく、子爵家ごとだから大丈夫だよ」
「何が大丈夫なの?」
兄様、それオーバーキルだよ。
多分わかっていらっしゃるとは思うけど。
「まあまあ、いいじゃない。見せしめなら派手にやらないとね」
「キュー決めた。キュー一生兄様を怒らせない」
「そもそも兄様がキューに怒ることなんて一生ないよ。諭すなり叱ることはあるだろうけど」
兄様の甘々な言葉にまあそうだろうな、と思えてしまうくらいには甘やかされている。
だからこそ。
だからこそ見えない地雷には気をつけないといけないなと肝に銘じる。
大好きな人に、嫌われたくないからね。
「兄様、大好き」
「オレも大好きだよ」
心の中でこのぬるま湯のような幸せがずっと続くように祈りつつ、子爵家の面々にはせめて苦しまずに逝けと合掌した。
191
お気に入りに追加
1,811
あなたにおすすめの小説
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。
ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。
実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました
みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。
日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。
引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。
そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。
香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる