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妹は可愛い

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ムーンリットとの件以降、オレは時々少し不安になった。

オレに敬語を使ったキューが、まるでオレの知らないキューに見えたから。

その不安を払拭するように、オレは思い付いた時にはすぐにキューを可愛がるようになった。

ナデナデしたり、ぎゅっと抱きしめる。

常に手を繋ぎ、してほしいことはないかと聞いてあればすぐに叶えてやる。

「キューは多分、そんなオレに気付いてる」

気付いていて、何も言わない。

気付いていて、甘えてくれる。

甘やかしているようで、実はオレがキューに甘やかされている。

けれど、止められない。

そうして甘やかしていると、心が落ち着くから。オレのキューはちゃんとここにいるって、安心できるから。

「キュー…ずっと変わらず、そばにいてよ」

キューのいない、誰もいない、自分の部屋でひとりごちる。

今はキューがお風呂から上がって来るのを待っているところ。

キューが上がって来たら、今日もいつも通り添い寝して寝る。

「…ああ、でも」

ふと、ラッコさん座りをした時のキューを思い出す。

あれは可愛かった。

顎を頭に乗せていたら、普段反抗しないキューが抗議の声をあげたのだ。

「だから顎を離して、その分ぎゅっと抱きしめたら…ぐえって変な声が出たんだよね」

その後力が強いと抗議の声をあげたキューも可愛かった。

力を緩めてやれば、なんとオレに背中を預けてくれて。

「しかもオレに疲れさせられたなんて、可愛い文句付きで」

その後も可愛らしいことを何度も言っていたっけ。

「兄様、上がったよ」

「おかえり、キュー」

「ただいま」

お風呂から上がって、髪も乾かしたキューが寝巻きで部屋に入ってくる。

「おいで」

「うん」

二人で布団に入る。

布団は湯たんぽで事前に温めていて、湯たんぽはもう危ないから布団の外に出す。

二人で向かい合わせに添い寝して、ぎゅっとする。

「今日も兄様が、背中トントンしてあげて羊を数えてあげようね」

「うん」

「羊が一匹…羊が二匹…」

優しく優しく背中を叩き、可愛いキューに眠りを促す。

羊を数える間に、段々とウトウトする可愛いキュー。

時々本当に子供なのか疑わしいくらい聡明な子だけれど、こういうところを見るとやはりまだまだ子供だ。

「羊が十三匹…羊が…寝たかな」

すやすやと、いつのまにやら寝息を立て始めた愛し子に優しく囁く。

「おやすみ、オレの可愛いキュー」

「…」

「ふふ」

返事なんて当然帰ってこない。

穏やかな寝息が聞こえるだけ。

それが心地よくて、オレも気付いたら寝落ちしていた。
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