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兄様の癒しになりたい

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しばらく、自分に与えられた部屋で休む。

それからどれだけの時間が経っただろう。

兄様が戻ってきた。

「…キュー」

「兄様!」

戻ってきた兄様の表情は、少しだけ暗くて。

兄様がそういうのは表に出さないタイプだというのは想像がつく。

だからこそ、お仕事をしたらそんな表情になってしまうのだと思うととても悲しい。

無理しなくていいんだよというのは簡単でも。

それを役目だと認識している兄様にはきっと響かない。

「キュー、どうしたの」

「兄様。大好き」

だから、兄様の小さな体を。

私の短い腕でぎゅうと抱きしめた。

兄様にも、何か伝わるものがあったのだろうか。

無言で、ぎゅうと抱きしめ返してくれる。

「…」

「…」

お互いに、ただ無言で抱きしめ合う。

兄様が、これだけのことで救われるかはわからない。

けれど、少しでもいい。

兄様を癒してあげたい。

独りよがりな想いかもしれないけれど。

「…キュー、ありがとう」

どれだけの間、そうしていただろうか。

兄様は礼を述べて、私の体から腕を離した。

それに伴って私も兄様の体から腕を離す。

兄様の表情は、だいぶ柔らかくなっていて。

穏やかな表情に、少しほっとする。

「ふふ、兄様は兄様なのにキューに助けられてしまったね」

「兄妹は支え合うものだよ」

「キューは大人だね」

まあ、中身は少なくとも幼児ではない。

幼女の皮を被っているつもりでも上手くできてないのが物語っている。

「それに、兄様からは色々なものをもらったから。お返し」

「そうかい?もしなんならもっと頼ってくれると兄様は嬉しいけどね」

「私もそう。兄様に色々あげたい」

私がそう言えば、兄様は少し驚いた表情を見せて。

それから、多分出会ってからのこの数時間の中では一番の笑顔を見せてくれた。

「そっか。キューは兄様の自慢の妹だよ」

「兄様も、キューの自慢の兄様だよ」

どうせ兄妹ということで過ごすなら。

本当の兄妹になっていけたら、嬉しいな。

なんて、ね。
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