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これは誰が悪いんだろう
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「すまないが、彼女は優秀な部下だ。関係を断つことはできない。だが、浮気じゃない。俺はそんなことはしない」
「…はい」
「なにか誤解をさせる言動があったならすまない。だが本当になにもないんだ、信じて欲しい」
「…はい、わかりました」
「わかってくれてよかった。我慢させることも多くてすまない…許して欲しい」
そう言って彼は仕事に出かける。誠実に謝ってくれたのだけど、納得がいかないのはもうどうしようもなかった。
彼が言っていた彼女とは、彼の仕事先の部下。商会を設立し、稼いでいる彼の右腕のような存在だという。
彼は彼女を信頼しているようだが、その彼女に私は『彼が本当に愛しているのは私』と何度も言われている。
その場では相手にせず微笑んで、使用人に追い返させているが…実際には結構ダメージを受けていた。
だが、彼の大事な仕事のパートナーであるのは事実。彼が彼女を切れないのは仕方がない。
「本当は、幼い子供たち二人のためにも何かしら改善して欲しかったのだけど…こうなったら仕方ないか」
彼は一応謝ってはくれた。
私と向き合ってはくれた。
それ以上なにも言えなかったのは私。
あの女は幸い、子供たちには今のところ近寄っていないし…子供たちに何かしてこない限りは、私が我慢すればいいや。
だがストレス発散も大事。まともにやってたらあの女のせいで胃に穴が開く。なので、ずっと堪えていた性癖を解放しよう。
子育てに力を入れ、家事もきちんとこなし、義理の両親や親戚にも尽くし、彼女の口撃も笑顔で躱す。
およそ良妻に見える風を装って、おかげで私の妻として母として人としての評判は上々。
夫もそんな私に喜んでお小遣いを弾んでくれて、私もそれだから喜んで良い嫁のフリができるというもの。
さらに夫はそんな私に月一で『お休み』をくれる。
自由に過ごして良い、最高の一日だ。
「やっぱりあの人と結婚してよかった」
優しく誠実で、身内に甘くてお金持ち。
両親は政略結婚なのに、私にとって最高の夫を引き当ててくれた。
なのでたんまりもらうお小遣いの半分は両親に送っている。
もう半分は、性癖の解放に使う。
「今日も来たわ!大好きな動物保護施設!!!」
そう、私の性癖…それは、人間ではなく動物に興奮するというもの。
こればかりはちょっと自分でもどうしようもない。
一度は夫に嫁いだ身なので自制しようと思ったが、あの女のストレスはどこかで発散しないとやってられない。どうか許して欲しい。
といっても動物に酷いことはしない。動物保護施設にお小遣いを寄付金として渡して、その代わりちょっと小動物と触れ合うだけ。
ちょっと触れ合うことで勝手に興奮して、それでストレスを発散できるのだから浮気でもないし虐待でもないし、世間的には保護施設に寄付して良いことしてるように見えるし…許されて…許されて…!
「このリスちゃん可愛いー!!!」
とてもテンション高く動物と触れ合うのも、人から見たら動物好きの変わった人でしかない。
まさか性癖を解放しているとはわかるまい。
公然と性癖を満たせるなんて、なんて幸せなのだろうか。
「…その意味ではあの女に感謝しないといけないかもしれない」
こんな私を解放してくれたのは、他ならぬあの女なのだから。
「…彼女が君に失礼な、最低なことを吹き込んでいると聞いた」
「…あ、お耳に入ってしまいました?お仕事に障りはないですか?」
「彼女は叱ったからもう同じことは起きないはずだ。仕事にも支障はない。だが…君を傷つけた。すまなかった」
「いえ、お気になさらないでください」
「だが…」
夫は申し訳なさそうな顔をするので、フォローする。
「これからは立場をわきまえてくれるなら、彼女が愛人になってもなにも申し上げません」
「…え?」
「避妊をちゃんとする、私を正妻として敬う。これだけ守ってくれれば、大丈夫ですから」
夫は目を見開く。
そんなに驚くことでもあるまいに。
「ですから、あなたの方から叱ってくれたならもう大丈夫ですよ」
私は良妻の皮を被っているが、公然と性癖を解放する悪妻なのでそのくらいは我慢しよう。
夫も、あんな美人がそばにいるなら我慢するのも大変だろうから好きにしたら良い。
子供たちには隠して、きちんとわきまえてお付き合いする分にはなにも言わない。
そのつもりで言ったのだけど、何故か夫は顔色を青くする。
そして私に頭を下げた。
「すまない、勘違いさせたのは本当に俺のせいだ。申し訳なかったと思っている。だが、俺にそのつもりはない。浮気なんて絶対しない」
「そうですか」
「信じてくれないか」
まあ、この人がそういうのならそうなんだろう。
「わかりました、信じます」
「ありがとう…!愛してる、本当に」
…信じるけれど、もう一度愛してみようと頑張るとは言っていない。
というか、獣にしか興奮しない私が夫として彼を愛する方が無理がある。
もちろん家族として、パートナーとしては愛しているが…性愛の対象ではないのだ。
あれ以降、あの女からのちょっかいはなくなった。子供たちにも影響はない。
そして相変わらず私は、良妻賢母を演じている。
子供達は私のようにはならず、今のところ優秀で優しい良い子に育っている。
夫との関係も良好。
だが、性癖の解放は相変わらず続けている。誰がなんと言おうが、これが私が良妻賢母を演じる上で欠かせないのだ。
「愛してる」
「ありがとうございます、あなた」
残念ながら夫に愛してると胸を張って言える日は来る気がしないが、その分歪んだ性癖は死んでも隠し通す。
だから性癖の解放くらいは許して欲しい。
きちんと子供たちと夫の幸せは守ってみせるから。
「…はい」
「なにか誤解をさせる言動があったならすまない。だが本当になにもないんだ、信じて欲しい」
「…はい、わかりました」
「わかってくれてよかった。我慢させることも多くてすまない…許して欲しい」
そう言って彼は仕事に出かける。誠実に謝ってくれたのだけど、納得がいかないのはもうどうしようもなかった。
彼が言っていた彼女とは、彼の仕事先の部下。商会を設立し、稼いでいる彼の右腕のような存在だという。
彼は彼女を信頼しているようだが、その彼女に私は『彼が本当に愛しているのは私』と何度も言われている。
その場では相手にせず微笑んで、使用人に追い返させているが…実際には結構ダメージを受けていた。
だが、彼の大事な仕事のパートナーであるのは事実。彼が彼女を切れないのは仕方がない。
「本当は、幼い子供たち二人のためにも何かしら改善して欲しかったのだけど…こうなったら仕方ないか」
彼は一応謝ってはくれた。
私と向き合ってはくれた。
それ以上なにも言えなかったのは私。
あの女は幸い、子供たちには今のところ近寄っていないし…子供たちに何かしてこない限りは、私が我慢すればいいや。
だがストレス発散も大事。まともにやってたらあの女のせいで胃に穴が開く。なので、ずっと堪えていた性癖を解放しよう。
子育てに力を入れ、家事もきちんとこなし、義理の両親や親戚にも尽くし、彼女の口撃も笑顔で躱す。
およそ良妻に見える風を装って、おかげで私の妻として母として人としての評判は上々。
夫もそんな私に喜んでお小遣いを弾んでくれて、私もそれだから喜んで良い嫁のフリができるというもの。
さらに夫はそんな私に月一で『お休み』をくれる。
自由に過ごして良い、最高の一日だ。
「やっぱりあの人と結婚してよかった」
優しく誠実で、身内に甘くてお金持ち。
両親は政略結婚なのに、私にとって最高の夫を引き当ててくれた。
なのでたんまりもらうお小遣いの半分は両親に送っている。
もう半分は、性癖の解放に使う。
「今日も来たわ!大好きな動物保護施設!!!」
そう、私の性癖…それは、人間ではなく動物に興奮するというもの。
こればかりはちょっと自分でもどうしようもない。
一度は夫に嫁いだ身なので自制しようと思ったが、あの女のストレスはどこかで発散しないとやってられない。どうか許して欲しい。
といっても動物に酷いことはしない。動物保護施設にお小遣いを寄付金として渡して、その代わりちょっと小動物と触れ合うだけ。
ちょっと触れ合うことで勝手に興奮して、それでストレスを発散できるのだから浮気でもないし虐待でもないし、世間的には保護施設に寄付して良いことしてるように見えるし…許されて…許されて…!
「このリスちゃん可愛いー!!!」
とてもテンション高く動物と触れ合うのも、人から見たら動物好きの変わった人でしかない。
まさか性癖を解放しているとはわかるまい。
公然と性癖を満たせるなんて、なんて幸せなのだろうか。
「…その意味ではあの女に感謝しないといけないかもしれない」
こんな私を解放してくれたのは、他ならぬあの女なのだから。
「…彼女が君に失礼な、最低なことを吹き込んでいると聞いた」
「…あ、お耳に入ってしまいました?お仕事に障りはないですか?」
「彼女は叱ったからもう同じことは起きないはずだ。仕事にも支障はない。だが…君を傷つけた。すまなかった」
「いえ、お気になさらないでください」
「だが…」
夫は申し訳なさそうな顔をするので、フォローする。
「これからは立場をわきまえてくれるなら、彼女が愛人になってもなにも申し上げません」
「…え?」
「避妊をちゃんとする、私を正妻として敬う。これだけ守ってくれれば、大丈夫ですから」
夫は目を見開く。
そんなに驚くことでもあるまいに。
「ですから、あなたの方から叱ってくれたならもう大丈夫ですよ」
私は良妻の皮を被っているが、公然と性癖を解放する悪妻なのでそのくらいは我慢しよう。
夫も、あんな美人がそばにいるなら我慢するのも大変だろうから好きにしたら良い。
子供たちには隠して、きちんとわきまえてお付き合いする分にはなにも言わない。
そのつもりで言ったのだけど、何故か夫は顔色を青くする。
そして私に頭を下げた。
「すまない、勘違いさせたのは本当に俺のせいだ。申し訳なかったと思っている。だが、俺にそのつもりはない。浮気なんて絶対しない」
「そうですか」
「信じてくれないか」
まあ、この人がそういうのならそうなんだろう。
「わかりました、信じます」
「ありがとう…!愛してる、本当に」
…信じるけれど、もう一度愛してみようと頑張るとは言っていない。
というか、獣にしか興奮しない私が夫として彼を愛する方が無理がある。
もちろん家族として、パートナーとしては愛しているが…性愛の対象ではないのだ。
あれ以降、あの女からのちょっかいはなくなった。子供たちにも影響はない。
そして相変わらず私は、良妻賢母を演じている。
子供達は私のようにはならず、今のところ優秀で優しい良い子に育っている。
夫との関係も良好。
だが、性癖の解放は相変わらず続けている。誰がなんと言おうが、これが私が良妻賢母を演じる上で欠かせないのだ。
「愛してる」
「ありがとうございます、あなた」
残念ながら夫に愛してると胸を張って言える日は来る気がしないが、その分歪んだ性癖は死んでも隠し通す。
だから性癖の解放くらいは許して欲しい。
きちんと子供たちと夫の幸せは守ってみせるから。
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