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食の国、ラーイ
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ご機嫌よう。リンネアル・サント・エルドラドです。今日はラーイの闇の沼地を浄化しに行きます!
ラーイは別名食の国ともいわれる、食に特化した国です。世界的に有名なシェフは、ほとんどラーイ出身だったりします。しかしこの三十五年、闇の沼地が田舎町コッヘンに突如現れたため、コッヘンは閉鎖され、コッヘン以外の地区は問題なく暮らしているといいますが、コッヘンの近隣の地区はいつも魔獣に怯えて過ごしていると聞きます。
今回もみんなと協力して、コッヘンを救いラーイに安心を取り戻してみせます!頑張ります!
「リンネ。何かあったら通信石で俺を呼べ」
通信石とはその名の通り、通信ができる不思議な宝石です。とても高価なもので、今回から闇の沼地の浄化の時限定でティラン兄様が特別に貸し出してくれることになりました。
「うん。ティラン兄様、ありがとう。じゃあ、行ってきます!」
「いってこい。気をつけてな」
転移魔法で、ラーイ国王陛下の元へ行きます。
「…聖女様!」
私達を見た途端、ラーイ国王陛下はすぐに私の元へ駆け寄ります。そして私の手を取り、両手で握りしめます。
「大国エルドラドの百合姫様が我々を救いに来てくださるなんて!こんなに有り難いことはない!ありがとうございます、本当にありがとうございます…」
ラーイ国王陛下に続いて、臣下の皆さん達が跪きます。
「聖女様!どうかラーイをお救いください!」
「はい、任せてください」
「なんと頼もしい…。おや、これはすみません。ヴァイス王太子殿下も来てくださったのですね、ありがとうございます」
「愛する婚約者のためですから」
二人は固い握手をします。
「失礼ですが、他の皆様は…?」
みんなを紹介します。
「こちらは我がエルドラドのターブルロンド辺境伯令息の、ノブルです」
「ラーイ国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「これはご丁寧に。我がラーイを助けに来てくださってありがとうございます」
「こちらは我がエルドラドのファータ男爵令嬢の、ミレアです」
「ラーイ国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「ご機嫌よう。お嬢さん、我がラーイを助けに来てくださってありがとう」
「こちらは我がエルドラドの宮廷魔術師のレーグルです」
「ラーイ国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「宮廷魔術師殿が!?ありがとうございます!」
「こちらは私の護衛騎士のフォルスです」
「おお、あの魔獣どもから聖女様をお守りくださるのですね。どうもありがとう」
「いえ、俺はそのくらいしか出来ないので」
私達はコッヘンへ転移魔法で移動します。…すると、そこは三十五年前まで栄えていたとは思えないほど朽ち果てていました。魔獣はズィルベの時と同じで物陰に隠れています。…が、ズィルベの時と同じで私達を獲物だと思ったのかじりじりと迫ってきます。
「じゃあ、始めるよ!」
「お任せください!」
「私達はご心配なく」
「まあ、魔力を供給するだけだしね」
「フォルスもいるからね」
「そこ、わざとプレッシャーかけないでください!」
みんなと声をかけあい、魔力を私に回してもらいます。私はシュパリュへ魔力を回しつつ、シャパリュに命令をします。
「怪猫シャパリュ。妖精の王。…すべての妖精の力を束ね、魔獣どもを殺しなさい。…屠れ」
シャパリュは私の命令に、間髪いれずににゃおーんと返します。そして、今度はコッヘン全体に響くようににゃおーんと大声を出します。すると、妖精の生息しないはずのコッヘンは、闇の沼地から出た瘴気を癒すように暖かな光で満たされます。…シャパリュの妖精召喚です!
「…やっぱり、いつ見てもすごいな。これだけの妖精をたった一声で召喚してしまうなんて」
「シャパリュは妖精の王ですから」
「ふふん。みてみて、妖精が俺の方によってきてる。やっぱり俺の魔力はリンネの聖力と相性がいいんじゃない?」
「おや、喧嘩なら買うよ?」
「レーグル、今は後にしろ」
「もう、ヴァイス王太子殿下、レーグルさんを相手しちゃダメです!」
「ちょっとミレアそれどういう意味!?」
「皆さん余裕ですね!…っ!少しはこっちにも加勢して欲しいです!」
迫り来る魔獣を斬り殺しつつ雑談に混じるフォルス。本当に強くなったなぁ。
シャパリュはそのまま、四方八方に駆けていきます。そして、コッヘン全体から魔獣たちの悲鳴、絶叫が聞こえ、シャパリュとフォルスのおかげで魔獣が粗方片付いた頃には、妖精達の光は眩いほどのものになります。そして…。
「…闇の沼地が消えたな」
「今回のお仕事も終了のようです」
朽ち果てていた街並みもすっかり綺麗になっています!
「やっぱりこれ、妖精の力じゃないかなぁ」
「何言ってるのさリンネ。君が頑張ってシャパリュに妖精召喚させたからこうして闇の沼地を浄化出来たんだよ」
「そうですわ!王女殿下はもっと自信を持ってください!」
「ありがとう。みんなの魔力供給と、フォルスが頑張ってくれたおかげだよ」
「…ありがとうございます」
「まあ、当然だよね」
「ふふ、レーグルさんったら」
「私の魔力がお役に立てたなら、何よりです」
「さて、ルリジオンの教皇様に報告に行かなきゃね。…でもその前に、先にラーイ国王陛下のところに行っちゃう?」
「あら、ヴァイス王太子殿下!ノリが良いですわね!」
「今度は食の国だし、美味しい料理、期待できるんじゃない?」
「俺は、王女殿下がそうしたいならそれでいいです」
「リンネ様とかの有名な食の国を楽しめるなら、私は文句はありません」
「じゃあ、ラーイ国王陛下のところに行っちゃおうか」
転移魔法で、ラーイ国王陛下の元へ行きます。
「…聖女様!」
私達を見た途端、ラーイ国王陛下はすぐに私の元へ跪きます。
「え!?ラーイ国王陛下!?」
「通信兵から、コッヘンの闇の沼地が消えたと報告がありました!」
ラーイ国王陛下に続いて、臣下の皆さんも跪きます。
「聖女様!コッヘンを、ラーイをお救いくださりありがとうございました!」
「聖女様万歳!」
「万歳!」
「ラーイ万歳!」
「万歳!」
「コッヘン万歳!」
「万歳!」
みんな大盛り上がりです。
「聖女様…本当に、本当にありがとうございます!」
ラーイ国王陛下は跪いたまま私の手を両手で握りしめ、涙を流して喜びます。…役に立てて良かった。
「いえ、みんなが手伝ってくれたからです」
「皆様も、本当にありがとうございます」
ラーイ国王陛下は、みんなと固い握手を交わします。
「そうだ、もしよろしければ、ぜひ我がラーイの宮廷調理師の料理を食べていっていただけませんか?」
「えっと…いいんでしょうか?」
「聖女様がよろしければ、是非!」
宮廷調理師さん達も熱い視線を送ってくれます。
「…じゃあ、お願いします」
「はい!お前たち、よろしく頼む!」
ラーイ国王陛下に命じられた宮廷調理師さん達は、急いで準備をし始めます。うん?ホールで料理するの?
「我がラーイでは、食は一つのエンターテイメント。作る工程もあってこそのものなのです」
「そうなんですね!楽しそう!」
「リンネ、エルドラド以外の食文化知らないし、きっと気にいるんじゃない?」
「そうだね!」
「リンネにはお嫁さんに来る前にハイリヒトゥームの食文化にも触れて欲しいな」
「ヴァイス様…は、恥ずかしいです…」
「ふふ、リンネ可愛い」
ヴァイス様が私の頬を撫でます。
「ちょっと、いくらなんでも結婚前なんだからべたべた触るの禁止!」
「ヴァイス様、節度を持ってください。私はティラン国王陛下に報告したくありません」
「ヴァイス様ばっかりずるいですわ!私も王女殿下に触れたいです!」
「ミレア様、その言い方は語弊があるんじゃないですか?」
「いいんです!」
「皆様、仲がよろしいのですな」
「ふふ、はい!」
「さて、そろそろ我がラーイの宮廷調理師達の準備が整ったようです。存分に『最高の食』をお楽しみください」
そう言って、ラーイ国王陛下は静かに用意されたテーブルに着きます。私達も同じようにテーブルに着きます。
まずはシャンパンを振舞われ、みんなで乾杯します。
「では、コッヘンの解放を祝して…乾杯!」
「乾杯!」
「王女殿下に乾杯ですわ!」
「俺の頑張りに乾杯!」
「乾杯。…レーグル、流石にそれはない」
「王女殿下の無事な帰還に乾杯」
「リンネの愛らしさに乾杯」
「ヴァイス様ったら!」
そうしてお通し、彩のよく食欲を誘われる前菜を振舞われます。そう、それはまさに『芸術』であり『娯楽』でした。調理師さん達の鮮やかな手付き、皿の柄、盛り付け、どれをとっても一級品。また、口に運べば繊細で、素材を生かした味付けに、これがまだ前菜であるということも忘れて夢中で食べてしまいます。
「これが、『最高の食』…」
「なんて美味しいのかしら…」
「俺はある程度色んな国の食文化も知ってる気になってたけど、これはすごいな」
「俺なんかが王女殿下とご一緒に食事をできるだけでもすごいのに、こんな美味しい食事…涙が出そうだ…」
「ラーイの宮廷料理は久し振りだけど、やっぱり食文化に関しては敵わないな」
「私はこの味を覚えて帰りたいです。これはすばらしい」
「素晴らしいシェフの料理と、盛り付け。味。そして会話。これこそが『最高の食』なのです」
思わず私達はラーイ国王陛下と宮廷調理師さん達に拍手を送ります。
そしてお皿が下げられ、スープ、魚料理、口直しときて、いよいよメインディッシュです。どんな素晴らしいものが出てくるのでしょうか?
「子羊のロティ…!」
すごく美味しそうな子羊のロティです!
「すごく上品なフレンチ…」
「羊の風味は前に出ない優しい味付けだな」
「でも後から微かに風味が生かされてくるよ」
「羊が苦手な俺でも平気で食べられるな…」
「私の領地でも子羊のロティはありますが、こんな上品な味ではなく、どちらかというとザ、羊って感じの味付けなんですよね。勉強になります」
「私もこんなに美味しい羊肉は初めてですわ!」
その後生野菜、チーズ、お菓子、フルーツと来て、最後にコーヒーと焼き菓子が出てきました。
「満足…幸せ…」
「上質な料理とは、人を幸せにするのです」
「勉強になります。ありがとうございました」
そうして私達は、幸せな気分なまま、ルリジオンの教皇様の元へ転移魔法で移動します。
「教皇猊下!ラーイの闇の沼地、浄化出来ました!」
「さすがは百合姫様。ありがとうございました。では、今週いっぱい休んでいただいて、来週にはラスカースの闇の沼地を浄化してください。…忙しくて、申し訳ない。これも全ては世界中の民のため。よろしくお願い致します」
「はい!頑張ります!」
そうして報告も終えた私達は、転移魔法でエルドラドに戻りました。
「…戻ったか」
「ティラン兄様!聞いて聞いて!」
「ああ、はいはい。詳しくはティータイムにな。…俺はこれからリンネとティータイムだから、お前たちは好きにしろ」
そんなこんなで、今日もなんとかなりました!…このまま怪我なく、浄化が終わるといいな。
ラーイは別名食の国ともいわれる、食に特化した国です。世界的に有名なシェフは、ほとんどラーイ出身だったりします。しかしこの三十五年、闇の沼地が田舎町コッヘンに突如現れたため、コッヘンは閉鎖され、コッヘン以外の地区は問題なく暮らしているといいますが、コッヘンの近隣の地区はいつも魔獣に怯えて過ごしていると聞きます。
今回もみんなと協力して、コッヘンを救いラーイに安心を取り戻してみせます!頑張ります!
「リンネ。何かあったら通信石で俺を呼べ」
通信石とはその名の通り、通信ができる不思議な宝石です。とても高価なもので、今回から闇の沼地の浄化の時限定でティラン兄様が特別に貸し出してくれることになりました。
「うん。ティラン兄様、ありがとう。じゃあ、行ってきます!」
「いってこい。気をつけてな」
転移魔法で、ラーイ国王陛下の元へ行きます。
「…聖女様!」
私達を見た途端、ラーイ国王陛下はすぐに私の元へ駆け寄ります。そして私の手を取り、両手で握りしめます。
「大国エルドラドの百合姫様が我々を救いに来てくださるなんて!こんなに有り難いことはない!ありがとうございます、本当にありがとうございます…」
ラーイ国王陛下に続いて、臣下の皆さん達が跪きます。
「聖女様!どうかラーイをお救いください!」
「はい、任せてください」
「なんと頼もしい…。おや、これはすみません。ヴァイス王太子殿下も来てくださったのですね、ありがとうございます」
「愛する婚約者のためですから」
二人は固い握手をします。
「失礼ですが、他の皆様は…?」
みんなを紹介します。
「こちらは我がエルドラドのターブルロンド辺境伯令息の、ノブルです」
「ラーイ国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「これはご丁寧に。我がラーイを助けに来てくださってありがとうございます」
「こちらは我がエルドラドのファータ男爵令嬢の、ミレアです」
「ラーイ国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「ご機嫌よう。お嬢さん、我がラーイを助けに来てくださってありがとう」
「こちらは我がエルドラドの宮廷魔術師のレーグルです」
「ラーイ国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「宮廷魔術師殿が!?ありがとうございます!」
「こちらは私の護衛騎士のフォルスです」
「おお、あの魔獣どもから聖女様をお守りくださるのですね。どうもありがとう」
「いえ、俺はそのくらいしか出来ないので」
私達はコッヘンへ転移魔法で移動します。…すると、そこは三十五年前まで栄えていたとは思えないほど朽ち果てていました。魔獣はズィルベの時と同じで物陰に隠れています。…が、ズィルベの時と同じで私達を獲物だと思ったのかじりじりと迫ってきます。
「じゃあ、始めるよ!」
「お任せください!」
「私達はご心配なく」
「まあ、魔力を供給するだけだしね」
「フォルスもいるからね」
「そこ、わざとプレッシャーかけないでください!」
みんなと声をかけあい、魔力を私に回してもらいます。私はシュパリュへ魔力を回しつつ、シャパリュに命令をします。
「怪猫シャパリュ。妖精の王。…すべての妖精の力を束ね、魔獣どもを殺しなさい。…屠れ」
シャパリュは私の命令に、間髪いれずににゃおーんと返します。そして、今度はコッヘン全体に響くようににゃおーんと大声を出します。すると、妖精の生息しないはずのコッヘンは、闇の沼地から出た瘴気を癒すように暖かな光で満たされます。…シャパリュの妖精召喚です!
「…やっぱり、いつ見てもすごいな。これだけの妖精をたった一声で召喚してしまうなんて」
「シャパリュは妖精の王ですから」
「ふふん。みてみて、妖精が俺の方によってきてる。やっぱり俺の魔力はリンネの聖力と相性がいいんじゃない?」
「おや、喧嘩なら買うよ?」
「レーグル、今は後にしろ」
「もう、ヴァイス王太子殿下、レーグルさんを相手しちゃダメです!」
「ちょっとミレアそれどういう意味!?」
「皆さん余裕ですね!…っ!少しはこっちにも加勢して欲しいです!」
迫り来る魔獣を斬り殺しつつ雑談に混じるフォルス。本当に強くなったなぁ。
シャパリュはそのまま、四方八方に駆けていきます。そして、コッヘン全体から魔獣たちの悲鳴、絶叫が聞こえ、シャパリュとフォルスのおかげで魔獣が粗方片付いた頃には、妖精達の光は眩いほどのものになります。そして…。
「…闇の沼地が消えたな」
「今回のお仕事も終了のようです」
朽ち果てていた街並みもすっかり綺麗になっています!
「やっぱりこれ、妖精の力じゃないかなぁ」
「何言ってるのさリンネ。君が頑張ってシャパリュに妖精召喚させたからこうして闇の沼地を浄化出来たんだよ」
「そうですわ!王女殿下はもっと自信を持ってください!」
「ありがとう。みんなの魔力供給と、フォルスが頑張ってくれたおかげだよ」
「…ありがとうございます」
「まあ、当然だよね」
「ふふ、レーグルさんったら」
「私の魔力がお役に立てたなら、何よりです」
「さて、ルリジオンの教皇様に報告に行かなきゃね。…でもその前に、先にラーイ国王陛下のところに行っちゃう?」
「あら、ヴァイス王太子殿下!ノリが良いですわね!」
「今度は食の国だし、美味しい料理、期待できるんじゃない?」
「俺は、王女殿下がそうしたいならそれでいいです」
「リンネ様とかの有名な食の国を楽しめるなら、私は文句はありません」
「じゃあ、ラーイ国王陛下のところに行っちゃおうか」
転移魔法で、ラーイ国王陛下の元へ行きます。
「…聖女様!」
私達を見た途端、ラーイ国王陛下はすぐに私の元へ跪きます。
「え!?ラーイ国王陛下!?」
「通信兵から、コッヘンの闇の沼地が消えたと報告がありました!」
ラーイ国王陛下に続いて、臣下の皆さんも跪きます。
「聖女様!コッヘンを、ラーイをお救いくださりありがとうございました!」
「聖女様万歳!」
「万歳!」
「ラーイ万歳!」
「万歳!」
「コッヘン万歳!」
「万歳!」
みんな大盛り上がりです。
「聖女様…本当に、本当にありがとうございます!」
ラーイ国王陛下は跪いたまま私の手を両手で握りしめ、涙を流して喜びます。…役に立てて良かった。
「いえ、みんなが手伝ってくれたからです」
「皆様も、本当にありがとうございます」
ラーイ国王陛下は、みんなと固い握手を交わします。
「そうだ、もしよろしければ、ぜひ我がラーイの宮廷調理師の料理を食べていっていただけませんか?」
「えっと…いいんでしょうか?」
「聖女様がよろしければ、是非!」
宮廷調理師さん達も熱い視線を送ってくれます。
「…じゃあ、お願いします」
「はい!お前たち、よろしく頼む!」
ラーイ国王陛下に命じられた宮廷調理師さん達は、急いで準備をし始めます。うん?ホールで料理するの?
「我がラーイでは、食は一つのエンターテイメント。作る工程もあってこそのものなのです」
「そうなんですね!楽しそう!」
「リンネ、エルドラド以外の食文化知らないし、きっと気にいるんじゃない?」
「そうだね!」
「リンネにはお嫁さんに来る前にハイリヒトゥームの食文化にも触れて欲しいな」
「ヴァイス様…は、恥ずかしいです…」
「ふふ、リンネ可愛い」
ヴァイス様が私の頬を撫でます。
「ちょっと、いくらなんでも結婚前なんだからべたべた触るの禁止!」
「ヴァイス様、節度を持ってください。私はティラン国王陛下に報告したくありません」
「ヴァイス様ばっかりずるいですわ!私も王女殿下に触れたいです!」
「ミレア様、その言い方は語弊があるんじゃないですか?」
「いいんです!」
「皆様、仲がよろしいのですな」
「ふふ、はい!」
「さて、そろそろ我がラーイの宮廷調理師達の準備が整ったようです。存分に『最高の食』をお楽しみください」
そう言って、ラーイ国王陛下は静かに用意されたテーブルに着きます。私達も同じようにテーブルに着きます。
まずはシャンパンを振舞われ、みんなで乾杯します。
「では、コッヘンの解放を祝して…乾杯!」
「乾杯!」
「王女殿下に乾杯ですわ!」
「俺の頑張りに乾杯!」
「乾杯。…レーグル、流石にそれはない」
「王女殿下の無事な帰還に乾杯」
「リンネの愛らしさに乾杯」
「ヴァイス様ったら!」
そうしてお通し、彩のよく食欲を誘われる前菜を振舞われます。そう、それはまさに『芸術』であり『娯楽』でした。調理師さん達の鮮やかな手付き、皿の柄、盛り付け、どれをとっても一級品。また、口に運べば繊細で、素材を生かした味付けに、これがまだ前菜であるということも忘れて夢中で食べてしまいます。
「これが、『最高の食』…」
「なんて美味しいのかしら…」
「俺はある程度色んな国の食文化も知ってる気になってたけど、これはすごいな」
「俺なんかが王女殿下とご一緒に食事をできるだけでもすごいのに、こんな美味しい食事…涙が出そうだ…」
「ラーイの宮廷料理は久し振りだけど、やっぱり食文化に関しては敵わないな」
「私はこの味を覚えて帰りたいです。これはすばらしい」
「素晴らしいシェフの料理と、盛り付け。味。そして会話。これこそが『最高の食』なのです」
思わず私達はラーイ国王陛下と宮廷調理師さん達に拍手を送ります。
そしてお皿が下げられ、スープ、魚料理、口直しときて、いよいよメインディッシュです。どんな素晴らしいものが出てくるのでしょうか?
「子羊のロティ…!」
すごく美味しそうな子羊のロティです!
「すごく上品なフレンチ…」
「羊の風味は前に出ない優しい味付けだな」
「でも後から微かに風味が生かされてくるよ」
「羊が苦手な俺でも平気で食べられるな…」
「私の領地でも子羊のロティはありますが、こんな上品な味ではなく、どちらかというとザ、羊って感じの味付けなんですよね。勉強になります」
「私もこんなに美味しい羊肉は初めてですわ!」
その後生野菜、チーズ、お菓子、フルーツと来て、最後にコーヒーと焼き菓子が出てきました。
「満足…幸せ…」
「上質な料理とは、人を幸せにするのです」
「勉強になります。ありがとうございました」
そうして私達は、幸せな気分なまま、ルリジオンの教皇様の元へ転移魔法で移動します。
「教皇猊下!ラーイの闇の沼地、浄化出来ました!」
「さすがは百合姫様。ありがとうございました。では、今週いっぱい休んでいただいて、来週にはラスカースの闇の沼地を浄化してください。…忙しくて、申し訳ない。これも全ては世界中の民のため。よろしくお願い致します」
「はい!頑張ります!」
そうして報告も終えた私達は、転移魔法でエルドラドに戻りました。
「…戻ったか」
「ティラン兄様!聞いて聞いて!」
「ああ、はいはい。詳しくはティータイムにな。…俺はこれからリンネとティータイムだから、お前たちは好きにしろ」
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