23 / 58
線香花火
しおりを挟む
「ねえ、百合。線香花火買ってきたので、庭で遊びましょうよ」
「え、いいですけど急ですね」
「ええ。君を食べるのを我慢できなくなる前になんとしてでも思い出作りをしなければと思いまして」
辰巳さんのその言葉に嬉しくなる。
「ふふ、そういうことでしたらぜひ」
このお化け屋敷紛いの自宅は戸建で庭付き、おまけにご近所さんはかなり離れたところに数軒程度。
あまりにもお化け屋敷なのと立地の関係もありタダ同然。
らっきー。
ということで線香花火をしても多分誰にも迷惑にならないので、庭に出て線香花火の準備。
バケツに水汲みよし、火の元よし、線香花火よし。
「では始めましょうか」
「はい」
二人で線香花火に火を付けて見つめる。
「君たち人間は、線香花火を見て儚さを感じるそうですね」
「そうですよ」
「僕にとって、君たちもこの線香花火と同じです」
ちらっと辰巳さんを見る。
辰巳さんは線香花火を見つめて、少し切なそうに瞳を揺らした。
「悠久を生きる僕にとって、君たちの人生というものはあまりにも儚い」
「…」
「なのに短い一生をかけて、命を輝かせる。僕はある意味では、君たち人類のファンとも言える」
「…そうですか」
「美味しくて、栄養満点で、そして食べずとも楽しませてくれる。僕は君たちの箱推しだったはずなのに、君という推しが出来た。同担拒否の強火ファンになってしまいましたよ」
「ふふ」
辰巳さんは真剣なのだろうけど、あまりにも現代に染まった言い方にちょっとだけ笑う。
「だからね、百合」
ぽとっと私の線香花火の先が落ちた。
辰巳さんのそれはまだ輝いている。
「…きっと、僕は君を食べてしまうけど。君の魂ごと取り込んで、逃がしてあげられないけれど。…永遠に愛しています」
「…私も愛してますよ、辰巳さん」
どちらともなく、キスを交わした。
触れ合うだけのそれは、それだけで満たされる。
「…ふふ、僕の百合。永遠に僕だけのものです」
「もちろんです」
「そのかわりといってはなんですが」
「?」
「僕も君のものですからね」
にっこり笑う辰巳さん。
その言葉に頬が緩む。
「ふふ、辰巳さん」
「ん?」
「一生私のものでいてくださいね」
「もちろんです」
早く食べられたい。
けれど、こんな日々がずっと続いて欲しい。
綱渡りの幸せに、背反する願望。
ゴールはいつになるだろうか。
「え、いいですけど急ですね」
「ええ。君を食べるのを我慢できなくなる前になんとしてでも思い出作りをしなければと思いまして」
辰巳さんのその言葉に嬉しくなる。
「ふふ、そういうことでしたらぜひ」
このお化け屋敷紛いの自宅は戸建で庭付き、おまけにご近所さんはかなり離れたところに数軒程度。
あまりにもお化け屋敷なのと立地の関係もありタダ同然。
らっきー。
ということで線香花火をしても多分誰にも迷惑にならないので、庭に出て線香花火の準備。
バケツに水汲みよし、火の元よし、線香花火よし。
「では始めましょうか」
「はい」
二人で線香花火に火を付けて見つめる。
「君たち人間は、線香花火を見て儚さを感じるそうですね」
「そうですよ」
「僕にとって、君たちもこの線香花火と同じです」
ちらっと辰巳さんを見る。
辰巳さんは線香花火を見つめて、少し切なそうに瞳を揺らした。
「悠久を生きる僕にとって、君たちの人生というものはあまりにも儚い」
「…」
「なのに短い一生をかけて、命を輝かせる。僕はある意味では、君たち人類のファンとも言える」
「…そうですか」
「美味しくて、栄養満点で、そして食べずとも楽しませてくれる。僕は君たちの箱推しだったはずなのに、君という推しが出来た。同担拒否の強火ファンになってしまいましたよ」
「ふふ」
辰巳さんは真剣なのだろうけど、あまりにも現代に染まった言い方にちょっとだけ笑う。
「だからね、百合」
ぽとっと私の線香花火の先が落ちた。
辰巳さんのそれはまだ輝いている。
「…きっと、僕は君を食べてしまうけど。君の魂ごと取り込んで、逃がしてあげられないけれど。…永遠に愛しています」
「…私も愛してますよ、辰巳さん」
どちらともなく、キスを交わした。
触れ合うだけのそれは、それだけで満たされる。
「…ふふ、僕の百合。永遠に僕だけのものです」
「もちろんです」
「そのかわりといってはなんですが」
「?」
「僕も君のものですからね」
にっこり笑う辰巳さん。
その言葉に頬が緩む。
「ふふ、辰巳さん」
「ん?」
「一生私のものでいてくださいね」
「もちろんです」
早く食べられたい。
けれど、こんな日々がずっと続いて欲しい。
綱渡りの幸せに、背反する願望。
ゴールはいつになるだろうか。
10
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
大好きだ!イケメンなのに彼女がいない弟が母親を抱く姿を目撃する私に起こる身の危険
白崎アイド
大衆娯楽
1差年下の弟はイケメンなのに、彼女ができたためしがない。
まさか、男にしか興味がないのかと思ったら、実の母親を抱く姿を見てしまった。
ショックと恐ろしさで私は逃げるようにして部屋に駆け込む。
すると、部屋に弟が入ってきて・・・
NTRするなら、お姉ちゃんより私の方がいいですよ、先輩?
和泉鷹央
青春
授業のサボリ癖がついてしまった風見抱介は高校二年生。
新学期早々、一年から通っている図書室でさぼっていたら可愛い一年生が話しかけてきた。
「NTRゲームしません?」
「はあ?」
「うち、知ってるんですよ。先輩がお姉ちゃんをNTRされ……」
「わわわわっーお前、何言ってんだよ!」
言い出した相手は、槍塚牧那。
抱介の元カノ、槍塚季美の妹だった。
「お姉ちゃんをNTRし返しませんか?」
などと、牧那はとんでもないことを言い出し抱介を脅しにかかる。
「やらなきゃ、過去をバラすってことですか? なんて奴だよ……!」
「大丈夫です、私が姉ちゃんの彼氏を誘惑するので」
「え? 意味わかんねー」
「そのうち分かりますよ。じゃあ、参加決定で!」
脅されて引き受けたら、それはNTRをどちらかが先にやり遂げるか、ということで。
季美を今の彼氏から抱介がNTRし返す。
季美の今の彼氏を……妹がNTRする。
そんな提案だった。
てっきり姉の彼氏が好きなのかと思ったら、そうじゃなかった。
牧那は重度のシスコンで、さらに中古品が大好きな少女だったのだ。
牧那の姉、槍塚季美は昨年の夏に中古品へとなってしまっていた。
「好きなんですよ、中古。誰かのお古を奪うの。でもうちは新品ですけどね?」
姉を中古品と言いながら自分のモノにしたいと願う牧那は、まだ季美のことを忘れられない抱介を背徳の淵へと引きずり込んでいく。
「新品の妹も、欲しくないですか、セ・ン・パ・イ?」
勝利者には妹の愛も付いてくるよ、と牧那はそっとささやいた。
他の投稿サイトでも掲載しています。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
女公爵となってなんとか上手くやれるようになった矢先に弟が出来たんですが…可愛いからオールオッケー!!!
下菊みこと
ファンタジー
かなり年の差のある血の繋がった美少年な弟に、無事ブラコンになった姉のお話。
ブラコンですが恋愛感情には発展しません。姉の恋人は別にいます。
弟の方も無事シスコンになります。
ご都合主義のハッピーエンド、短いお話です。
小説家になろう様でも投稿しています。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
不審者が俺の姉を自称してきたと思ったら絶賛売れ出し中のアイドルらしい
春野 安芸
青春
【雨の日に出会った金髪アイドルとの、ノンストレスラブコメディ――――】
主人公――――慎也は無事高校にも入学することができ可もなく不可もなくな日常を送っていた。
取り立てて悪いこともなく良いこともないそんな当たり障りのない人生を―――――
しかしとある台風の日、豪雨から逃れるために雨宿りした地で歯車は動き出す。
そこに居たのは存在を悟られないようにコートやサングラスで身を隠した不審者……もとい小さな少女だった。
不審者は浮浪者に進化する所を慎也の手によって、出会って早々自宅デートすることに!?
そんな不審者ムーブしていた彼女もそれは仮の姿……彼女の本当の姿は現在大ブレイク中の3人組アイドル、『ストロベリーリキッド』のメンバーだった!!
そんな彼女から何故か弟認定されたり、他のメンバーに言い寄られたり――――慎也とアイドルを中心とした甘々・イチャイチャ・ノンストレス・ラブコメディ!!
大切だった友達に媚薬を盛ったら、怖いくらい溺愛されています。彼が勧めてくれたお茶からも同じ香りがしていたのは気のせいかな。
下菊みこと
恋愛
媚薬を盛ったらとんでもなく愛されたお話。
マルスリーヌは友人、エルキュールに媚薬を盛る。エルキュールと結婚して、多額の結納金を実家に納めてもらうためだ。けれど肝心のエルキュールは、媚薬を入れた紅茶の香りを嗅いだだけで飲んでないのに媚薬が効いてしまった。マルスリーヌは困惑するも開き直るしかなかった。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる