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結局怪異

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辰巳さんに唆されて、その日めちゃくちゃおしゃれをした。

可愛らしい白のワンピースを来て、メイクとネイルを辰巳さんが完璧にしてくれる。

そして辰巳さんと手を繋いで、悪戯電話をくれた彼の待つ駅へ向かった。

「…」

「…」

「…おやおや」

駅に着くと、おどろおどろしい妖がいた。

こちらとしてはものすごく驚いたが、彼は彼で驚いた様子。

人の形は辛うじて保っているものの、背中に背負う負のオーラを見るに相当数の人間を食っているらしい。

人の身でありながら妖に変化するほどに人を食べるとか、相当な変態だ。

彼が悪戯電話の人だろうか。

「なんだよ、喰われたいって変な意味じゃなくて妖が相手かよ。俺じゃ勝ち目ないじゃん」

「ふふ、自覚があるなら結構ですね。で、なんで僕の百合を狙ったんです?」

「自殺志願者を嗅ぎつけるのが得意なもんでね。ちょちょっと調べて引っかかってくれそうな子に声をかけていただけ」

「プライバシー…」

「死にたがってる子にしか声かけてないし、許されるでしょ」

許されないと思います。

あと、死にたがってる子でも食べられたがるような私みたいなのは少数派のはず。

「相手の希望は尊重しないんですか」

「やだなぁ、してるよ。本当に死にたがってる子をなるべく苦しめず終わらせてあげるし、その後残された遺体も骨は親族に全部返してるし」

「うわぁ」

ドン引きである。

「で、俺を警察に突き出したりするわけ?」

「しませんよ、僕たちには関係ありませんし」

「え?まじ?」

「普通の人間たちには君の正体はわからないでしょうし、証拠もありませんから」

辰巳さんの言う通り。

証拠などどこにも存在しないなら、どうしようもない。

野放しにするのもどうかとは思うが、ドライなことを言ってしまえば私には関係はない。

「でも、出来れば自首してほしいです」

ぽろっと溢れた本音。

辰巳さんはそんな私ににっこり笑う。

「この男がそんな殊勝なことすると思います?」

「思いません」

「ですよね」

くすくす笑う辰巳さん。

悪戯電話の彼はやばいと思ったのか距離を取る。

でも遅かった。

「僕の可愛い百合が、君を野放しにするのを躊躇っているようなので。可哀想ですが、ご退場願いますね」

人体発火現象。

急に彼が燃えた。

「ぎゃー!」

「なに!?」

「うわぁ!?」

彼はすぐに燃え尽き、炎が他に広がることもなかった。

残ったのは消し炭だけ。

「あらまあ」

「ふふ、これで安心しましたか?」

「まあ…はい」

人を喰うような妖が解き放たれる世の中よりはマシだろう。

いや、それでいくと辰巳さんも問題なのだろうか。

まあ、私はそれでも辰巳さんに食べてほしいので関係ないが。

…彼に食べられた子の中にもそんな子はいたんだろうか。
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