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悪役令嬢に転生したのでヒロインであるお姉様とその婚約者に媚を売ります。え?なんでお姉様の当て馬役の従兄に溺愛されてるの?

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気が付いたら豪華絢爛なお部屋にいた。

はじめまして、私藤原蛍と申します。気が付いたら豪華絢爛なお部屋にいました。ここどこ?私なんでこんなところにいるの?とりあえず寝かされていたベッドから降りて部屋を探索します。わー、本当に凄いお部屋。私、大富豪に人攫いでもされたのかな?ふと鏡を見ます。…え?誰この美人…いや、誰って言うか、え、アデール・ルドフォン!?

その時、頭が痛くなって気を失いかけました。幸いにもすぐに回復しましたが。で、大事なことを思い出してしまいました。私、藤原蛍は交通事故で亡くなって、悪役令嬢ざまぁモノの漫画の悪役令嬢、アデール・ルドフォンに生まれ変わってしまいました!アデールとしての記憶が戻ります。私、アデール五歳はヒロインであるお姉様、イネス・ルドフォン公爵令嬢七歳の婚約者、ベネディクト・フィリップ第一王子殿下七歳に横恋慕して、しつこく付き纏い押しのけられた際に頭をテーブルに打ち付けて意識を失い、そのショックで前世を思い出しました。

で、ここからは前世の漫画の知識ですが、私は悪役令嬢としてお姉様を影で虐め、貶め、ベネディクト殿下に媚を売り続けて、やがて将来、お姉様のことを一途に愛する従兄、バスチアン・ヴァロワお兄様現在七歳漫画では十八歳侯爵令息に断罪され、ベネディクト殿下の命により身分剥奪の末国外追放され、傲慢な私は市井では生きていけず死亡します。

…んな殺生な!断罪なんてされたくない!悪役令嬢とはいえせっかく貴族に生まれたんだから、贅沢で平凡な日常を過ごしたい!

ならばやることは一つ。これからは心を入れ替えてお姉様とベネディクト殿下、ついでにバスチアンお兄様に媚を売るのよ!そのまたついでに両親と使用人にも媚を売るのよ!そうと決まれば作戦決行!

「お嬢様、失礼します。あら、もう起きて大丈夫なのですか?」

「ルシア!」

ルシアは私付きの侍女。傲慢でわがままな私の面倒を見てくれ、漫画ではなんと私の減刑を求めてくれたお人好し。この子には特に優しくしてあげよう。

「ルシア、あのね」

「どうしました?お紅茶ですか?」

「これを受け取って欲しいの」

私が差し出すのはお気に入りのネックレス。売れば相当なお金になる。

「!?お嬢様、それはお嬢様のお気に入りの…」

「ルシアには今まで迷惑をかけてたし、これからもかけると思うから、その分。あげる。だから、これからもよろしくね」

「お嬢様…!打ち所が悪かったのですね!すぐに医者を!」

慌てるルシアを引き止める。

「待って、違うの、ベネディクト殿下に突き飛ばされたショックで、色々反省したの。ごめんね」

「お嬢様…そんな、ルシアはお嬢様がご立派になってくださっただけで充分です…」

ルシアは本当に嬉しそうに笑う。うん、なんか、今まで迷惑かけて本当にごめんね。

「屋敷のみんなにもお詫び行脚してきていい?」

「本来、お嬢様のされることではありませんが…お嬢様がしたいのなら、ルシアもお付き合い致します。怒られる時は一緒ですよ」

「うん!」

ということでお詫び行脚してきます。

ー…

ということで屋敷の使用人全員にお詫び行脚してこれからもよろしくねと迷惑料という名の賄賂を渡しまくった結果。

「ルルや、こっちに来なさい」

お父様とお母様から呼び出されました。

「はい、お父様、お母様」

「ルルや、本来令嬢が使用人に頭を下げるなどあってはいけないのだよ。わかるね?」

「はい、ごめんなさい、お父様…」

「でも、私達は貴女の成長が嬉しいわ。だから、その気持ちは今後もずっと忘れてはダメよ」

「はい、肝に命じます、お母様」

「お父様、お母様!ルル!」

「お姉様?」

「ネネ」

お姉様が急に乱入してきました。

「お願い、お父様、お母様!ルルを責めないであげて!今度は何をしたか知らないけれど、きっと悪気はなかったのよ!」

「ありがとうございます、お姉様。それから…今までごめんなさい」

「ルル?」

「私、わがままばかりでお姉様に酷いことも言って…これ、お詫びに受け取って」

私が差し出すのはお気に入りの指輪。私の持ち物の中で一番高級なもの。お父様とお母様にもその次に価値があるものを渡し、改めて謝罪して、これからも家族として仲良くして欲しいと懇願します。

「当たり前よ。こんなものなくても私達は家族なんだから」

「ルルが成長してお父様は嬉しいよ」

「ルル、ありがとう。これは気持ちとして受け取っておくね。大好きよ、ルル」

こうして家族と使用人たちとは和解出来ました。

ー…

今日はベネディクト殿下がお姉様に会いに来ます。まあ、名目としては私に怪我をさせたお詫びにだけど。

「…やあ、将来の我が義妹よ。この間はすまなかったね」

「私こそ今まで迷惑をかけてごめんなさい。これ、お詫びに受け取ってください」

「これは…」

「ベネディクト殿下の好きなチョコレートです。お口に合うと良いのですが…。これで、仲直りしていただけませんか?」

「…本当に変わったのだね、アデール」

「え?」

「今までの君なら傷物にした責任を取れと私に迫ってきていただろう?」

「…あ、あはは」

「アデール。正直私は将来の義妹とはいえ君が嫌いだった」

「…はい」

「でも、今の君は好きだよ」

「え?」

「将来の義兄妹として仲良くしよう」

「…はい!ベネディクトお義兄様!」

「うふふ。二人が仲直りしてくれて嬉しいわ」

「私も嬉しいよ」

「私もです!」

ー…

今日はバスチアンお兄様が遊びに来る日です。そして、バスチアンお兄様がお姉様に恋する日。

「バスチアンお兄様!いらっしゃいませ!」

「バスチアン!いらっしゃい!」

「ネネ、ルル。元気だったか?…ルルは噂通り、変わったなぁ」

「え?わかる?」

「ん。魂の色が違う」

バスチアンお兄様は人の魂の色を見れる能力者です。そして今日、より一層魂の色が清らかになったお姉様に恋をする…はずなのですが…なんで、そんな狙いを定めた猛禽類のような目を私に向けるのです?

「ルル。確かお前にはまだ婚約者がいないよな?」

「はい…?はい」

何故そんなことを聞くのです?

「よし、親父殿は何処だ?」

「執務室よ?どうしたの?」

「なに、お前の妹を婚約者にもらおうと思ってな」

「…!?」

「まあ!それは良いわね。バスチアンは次男だから、婿養子に来れるもの」

「ネネはベネディクト殿下の婚約者だからルルが婿養子を取るしかないし、俺は血縁の繋がりがあるし、ちょうどいいだろ」

「えっ」

「お前は嫌か?」

「嫌じゃないけど、バスチアンお兄様は私なんかでいいの?」

「お前だからいいんだよ。今のお前以上の清らかな魂なんて存在しない」

「えっ」

「さあ、そういうことで婚約者として改めてよろしくな、ルル」

「えっ…う、うん?」

どうしてこうなった。

ー…

あれから十一年後。本来なら私が断罪されるこの日、私はバスチアンお兄様…バンと結婚します。

「バスチアンお兄様…じゃなくて、バン」

「お前いい加減慣れろって」

「だって、結婚するからって急に愛称で呼ぶなんて恥ずかしいもん」

「本当にルルは鈍臭いな。…まあ、そこも可愛いけど」

「え?」

「…聞こえなかったならいい。それより、ウェディングドレス、似合ってる」

「ありがとう!バン、大好き!」

「ん。俺も」

ちゅっと頬に軽いキス。バンったら。

「でも、本当に私でいいの?」

「言っただろ、お前以上の清らかな魂なんて存在しないって」

「そうかもしれないけど…」

「安心しろ、一生お前しか見ないよ。浮気もしないし、これでも甲斐性はあるつもりだ」

「バン…うん、ありがとう!」

「どういたしまして」

こうして私は、何故か断罪回避どころかむしろ幸せになれたのでした。
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