38 / 80
隠しキャラルートに入りたかったヒロインが逆ハーレムを築いたらしいけどその隠しキャラ、私です。男装王女ですけどよろしくね。
しおりを挟む
「やっとお会いできましたね、アレックス様…!」
そう言って目を輝かせるのは男爵令嬢、ルイーズ・ロアン嬢。この“乙女ゲーム”の世界のヒロインだ。
「はじめまして、ご機嫌よう。貴女のような美しいご令嬢にお会い出来て光栄です」
「まあ!そんな、美しいなんて…!」
頬を赤く染め、恥じらう姿は実に可愛らしい。“私のルート”に入るためだけに、数々の高位貴族を誑かそうとしたとは思えないほどに。
「ルル…ルルはアレックスが好きなのかい?」
兄である王太子、ジュール・ド・ブルボン兄上がルル嬢にそう聞く。でもルル嬢に向ける目はかなり厳しい。兄上、もうちょっと抑えてください。ばれてしまうではないですか。
「ええ、そうなの…だから、みんなの気持ちには答えられないわ…ごめんなさい」
申し訳なさそうに俯くルル嬢。それすらも演技だとわかっているが、それでも思わず心が揺さぶられる。ふと私のつけているピアスが揺れる。…魅了魔法か。魅了魔法を解くピアスをつけていてよかった。
「いや、いいんだ。ルルが幸せになれるなら、僕はその恋を応援しよう」
やや引き攣った表情でそういうのは魔術師団長令息、クレモン・レニエ。仮にも魔術師なんだから、もっと頑張って表情を作ってほしい。
「ルル、お幸せに」
そう無表情に伝えるのは騎士団長令息、ライアン・ルテル。まあ、彼の無表情はいつものことなのでばれはしないだろう。
「ルル、それなら私達はルルの恋を応援し、婚約者とは婚約破棄しないよ。それでいいんだね?」
にこにこしながらそういうのは公爵令息、テオ・モンペザ。にこにこ笑顔に圧を感じるんだが…。
「ええ、私、アレックス様と添い遂げたいの!」
私は魅了魔法にかかっていないんだがなぁ。なんでそんなに自信満々に相思相愛だと思い込めるのか。
「そうか、いやいや、ルルが幸せになれるならよかった」
そう笑顔を顔に貼り付けているのは裕福な商家の令息、ノエ・ポワティエ。さすがサービススマイルが得意だね。
「アレックス様…私、アレックス様が好きなんです!私を婚約者にしてください!」
にこにこと愛嬌のある顔で私に擦り寄るルル嬢は、たしかに可愛らしい。私が“男なら”魅了魔法なんてなくても堕ちていただろうな。
「…もちろんいいとも」
私も、この日の為に色々と準備してきたのだから。
ー…
私は、第二王子アレクサンド・ド・ブルボン。前世で日本という国の平民だった。そして、女だった私は、乙女ゲームという遊戯に嵌っていた。そして、私は突然前触れもなくトラックに轢かれて死んだ。私は気が付いたら赤ん坊になっていた。前世の記憶を持ったまま転生した先は、あの乙女ゲームの世界に酷似した世界だった。ただ一つ。隠しキャラである第二王子が私であり、私は男装王女であること以外は。
男装王女であるのには、意味がある。この国では、ある魔女の呪いで王家の女児は早死にするのだ。だから、王女はその対抗策として男として育てられる。
さて、この乙女ゲームではいくつかのルートがあり、もっとも攻略対象者達とその婚約者達が泣くのは逆ハーレムルートだ。逆ハーレムルートはその名の通り逆ハーレムが形成され、婚約者達は婚約破棄される。だが本当に可哀想なのはここから。逆ハーレムルートに入ったらその後、とある分岐で隠しキャラ、第二王子が現れる。そしてヒロインが第二王子を選ぶと、他の攻略対象者達は振られて、それでも健気にヒロインの幸せを願うのだ。
誰だよこんな最低なルート考えたの。まあ逆に、お陰で助かったけれども。
私はどうにか誰も泣くことがない結末を迎えたかった。だからヒロインのことを調べた。この乙女ゲームのヒロイン、ルイーズ・ロアンは魅了魔法持ちだった。そして、逆ハーレムルートのその先、私のルートを求めていることがわかった。王家の影は優秀で助かる。
だから私は、兄をはじめとして攻略対象者全員に魅了魔法を解くピアスを渡した。そして、将来ピンク頭の少女が誘惑してくるでしょうが適当に相手をして魅了魔法にかかったフリをしてください。もちろん婚約者達には事情を説明してください。大丈夫、最終的に私と婚約したがりますから。と伝えた。
その結果がこれである。これで攻略対象者達が泣くことも、その婚約者達が泣くこともない。…まあ、ヒロインは泣くだろうけれど、私のルートに入るためだけに兄達を誑かそうとした罰だ。
「私、幸せです」
「私も貴女のような可憐な花を愛でられて幸せだよ」
さあ、仮初めの幸せを楽しもうじゃないか。いつまで持つかわからないけれどね。
そう言って目を輝かせるのは男爵令嬢、ルイーズ・ロアン嬢。この“乙女ゲーム”の世界のヒロインだ。
「はじめまして、ご機嫌よう。貴女のような美しいご令嬢にお会い出来て光栄です」
「まあ!そんな、美しいなんて…!」
頬を赤く染め、恥じらう姿は実に可愛らしい。“私のルート”に入るためだけに、数々の高位貴族を誑かそうとしたとは思えないほどに。
「ルル…ルルはアレックスが好きなのかい?」
兄である王太子、ジュール・ド・ブルボン兄上がルル嬢にそう聞く。でもルル嬢に向ける目はかなり厳しい。兄上、もうちょっと抑えてください。ばれてしまうではないですか。
「ええ、そうなの…だから、みんなの気持ちには答えられないわ…ごめんなさい」
申し訳なさそうに俯くルル嬢。それすらも演技だとわかっているが、それでも思わず心が揺さぶられる。ふと私のつけているピアスが揺れる。…魅了魔法か。魅了魔法を解くピアスをつけていてよかった。
「いや、いいんだ。ルルが幸せになれるなら、僕はその恋を応援しよう」
やや引き攣った表情でそういうのは魔術師団長令息、クレモン・レニエ。仮にも魔術師なんだから、もっと頑張って表情を作ってほしい。
「ルル、お幸せに」
そう無表情に伝えるのは騎士団長令息、ライアン・ルテル。まあ、彼の無表情はいつものことなのでばれはしないだろう。
「ルル、それなら私達はルルの恋を応援し、婚約者とは婚約破棄しないよ。それでいいんだね?」
にこにこしながらそういうのは公爵令息、テオ・モンペザ。にこにこ笑顔に圧を感じるんだが…。
「ええ、私、アレックス様と添い遂げたいの!」
私は魅了魔法にかかっていないんだがなぁ。なんでそんなに自信満々に相思相愛だと思い込めるのか。
「そうか、いやいや、ルルが幸せになれるならよかった」
そう笑顔を顔に貼り付けているのは裕福な商家の令息、ノエ・ポワティエ。さすがサービススマイルが得意だね。
「アレックス様…私、アレックス様が好きなんです!私を婚約者にしてください!」
にこにこと愛嬌のある顔で私に擦り寄るルル嬢は、たしかに可愛らしい。私が“男なら”魅了魔法なんてなくても堕ちていただろうな。
「…もちろんいいとも」
私も、この日の為に色々と準備してきたのだから。
ー…
私は、第二王子アレクサンド・ド・ブルボン。前世で日本という国の平民だった。そして、女だった私は、乙女ゲームという遊戯に嵌っていた。そして、私は突然前触れもなくトラックに轢かれて死んだ。私は気が付いたら赤ん坊になっていた。前世の記憶を持ったまま転生した先は、あの乙女ゲームの世界に酷似した世界だった。ただ一つ。隠しキャラである第二王子が私であり、私は男装王女であること以外は。
男装王女であるのには、意味がある。この国では、ある魔女の呪いで王家の女児は早死にするのだ。だから、王女はその対抗策として男として育てられる。
さて、この乙女ゲームではいくつかのルートがあり、もっとも攻略対象者達とその婚約者達が泣くのは逆ハーレムルートだ。逆ハーレムルートはその名の通り逆ハーレムが形成され、婚約者達は婚約破棄される。だが本当に可哀想なのはここから。逆ハーレムルートに入ったらその後、とある分岐で隠しキャラ、第二王子が現れる。そしてヒロインが第二王子を選ぶと、他の攻略対象者達は振られて、それでも健気にヒロインの幸せを願うのだ。
誰だよこんな最低なルート考えたの。まあ逆に、お陰で助かったけれども。
私はどうにか誰も泣くことがない結末を迎えたかった。だからヒロインのことを調べた。この乙女ゲームのヒロイン、ルイーズ・ロアンは魅了魔法持ちだった。そして、逆ハーレムルートのその先、私のルートを求めていることがわかった。王家の影は優秀で助かる。
だから私は、兄をはじめとして攻略対象者全員に魅了魔法を解くピアスを渡した。そして、将来ピンク頭の少女が誘惑してくるでしょうが適当に相手をして魅了魔法にかかったフリをしてください。もちろん婚約者達には事情を説明してください。大丈夫、最終的に私と婚約したがりますから。と伝えた。
その結果がこれである。これで攻略対象者達が泣くことも、その婚約者達が泣くこともない。…まあ、ヒロインは泣くだろうけれど、私のルートに入るためだけに兄達を誑かそうとした罰だ。
「私、幸せです」
「私も貴女のような可憐な花を愛でられて幸せだよ」
さあ、仮初めの幸せを楽しもうじゃないか。いつまで持つかわからないけれどね。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
【完結済】悪役になりきれなかったので、そろそろ引退したいと思います。
木嶋うめ香
恋愛
私、突然思い出しました。
前世は日本という国に住む高校生だったのです。
現在の私、乙女ゲームの世界に転生し、お先真っ暗な人生しかないなんて。
いっそ、悪役として散ってみましょうか?
悲劇のヒロイン気分な主人公を目指して書いております。
以前他サイトに掲載していたものに加筆しました。
サクッと読んでいただける内容です。
マリア→マリアーナに変更しました。
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。
hoo
恋愛
ほぅ……(溜息)
前世で夢中になってプレイしておりました乙ゲーの中で、わたくしは男爵の娘に婚約者である皇太子さまを奪われそうになって、あらゆる手を使って彼女を虐め抜く悪役令嬢でございました。
ですのに、どういうことでございましょう。
現実の世…と申していいのかわかりませぬが、この世におきましては、皇太子さまにそのような恋人は未だに全く存在していないのでございます。
皇太子さまも乙ゲーの彼と違って、わたくしに大変にお優しいですし、第一わたくし、皇太子さまに恋人ができましても、その方を虐め抜いたりするような下品な品性など持ち合わせてはおりませんの。潔く身を引かせていただくだけでございますわ。
ですけど、もし本当にあの乙ゲーのようなエンディングがあるのでしたら、わたくしそれを切に望んでしまうのです。婚約破棄されてしまえば、わたくしは晴れて自由の身なのですもの。もうこれまで辿ってきた帝王教育三昧の辛いイバラの道ともおさらばになるのですわ。ああなんて素晴らしき第二の人生となりますことでしょう。
ですから、わたくし決めました。あの乙ゲーをこの世界で実現すると。
そうです。いまヒロインが不在なら、わたくしが用意してしまえばよろしいのですわ。そして皇太子さまと恋仲になっていただいて、わたくしは彼女にお茶などをちょっとひっかけて差し上げたりすればいいのですよね。
さあ始めますわよ。
婚約破棄をめざして、人生最後のイバラの道行きを。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヒロインサイドストーリー始めました
『めんどくさいが口ぐせになった公爵令嬢とお友達になりたいんですが。』
↑ 統合しました
乙女ゲームの悪役令嬢は生れかわる
レラン
恋愛
前世でプレーした。乙女ゲーム内に召喚転生させられた主人公。
すでに危機的状況の悪役令嬢に転生してしまい、ゲームに関わらないようにしていると、まさかのチート発覚!?
私は平穏な暮らしを求めただけだっだのに‥‥ふふふ‥‥‥チートがあるなら最大限活用してやる!!
そう意気込みのやりたい放題の、元悪役令嬢の日常。
⚠︎語彙力崩壊してます⚠︎
⚠︎誤字多発です⚠︎
⚠︎話の内容が薄っぺらです⚠︎
⚠︎ざまぁは、結構後になってしまいます⚠︎
転生悪役令嬢、物語の動きに逆らっていたら運命の番発見!?
下菊みこと
恋愛
世界でも獣人族と人族が手を取り合って暮らす国、アルヴィア王国。その筆頭公爵家に生まれたのが主人公、エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌだった。わがまま放題に育っていた彼女は、しかしある日突然原因不明の頭痛に見舞われ数日間寝込み、ようやく落ち着いた時には別人のように良い子になっていた。
エリアーヌは、前世の記憶を思い出したのである。その記憶が正しければ、この世界はエリアーヌのやり込んでいた乙女ゲームの世界。そして、エリアーヌは人族の平民出身である聖女…つまりヒロインを虐めて、規律の厳しい問題児だらけの修道院に送られる悪役令嬢だった!
なんとか方向を変えようと、あれやこれやと動いている間に獣人族である彼女は、運命の番を発見!?そして、孤児だった人族の番を連れて帰りなんやかんやとお世話することに。
果たしてエリアーヌは運命の番を幸せに出来るのか。
そしてエリアーヌ自身の明日はどっちだ!?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる