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王太子に捨てられたずたぼろ令嬢のはずが修道院でヒロインになりました
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「キャロライン・ベルン!貴様との婚約は破棄させてもらう!そして今ここで、僕の愛しいリリアンヌ・ノベルとの婚約を宣言する!」
王家主催のダンスパーティーで、いきなり私にそう突きつけるのはアルフィー・フィリップ王太子殿下。…まあ、遅かれ早かれこうなるとは知っていましたけれど。よりにもよってこの場でとか…ふふ。殿下らしいですわ。そういえばシナリオでもダンスパーティーで、と記載されていましたわね。忘れてましたわ。まあ覚えていても、王家主催の、ダンスパーティーでやらかすとは思いませんでしたが。
「承知いたしました」
えっ、という顔をするリリアンヌ様と殿下。私が何か言ってくると思っていたのね。残念ですがシナリオ通りには行きませんわ。
「ま、待て、貴様の断罪を…」
「婚約者として至らなかった私を身分剥奪の上最果ての修道院に送られるのでしょう?」
またえっ、て表情。仮にも王太子殿下とその婚約者がしていい表情ではありませんわよ。
「そ、そうだ。だが貴様が婚約者として至らなかったからだけではなく…」
「では身分剥奪された私はもう貴族ではありませんので、これで失礼致しますわ」
「ちょっとま…」
「それでは皆様、ご機嫌よう」
最後に綺麗にカーテシーを決め、お城を後にする。屋敷に帰るとすぐに、いつ婚約破棄されてもいいよう元々用意していた荷物を持って最果ての修道院へ向かう。両親と兄に挨拶?必要ない。私はあの人達にとってただの駒だ。今となっては利用価値もないし、なんの情もないだろう。ああ、もちろん馬車は私が手配したもので、私の貯金で雇った。これで挨拶もせずに旅立つ不義理は許してほしい。向こうは寒いらしい。寒いというか痛いらしい。防寒着は用意しているが、大丈夫だろうか。
ついてみると、本当に寒い。痛い。急いで門を叩く。早く中に入れて欲しい。
「はい、キャロライン様ですね。こちらへどうぞ」
「はい、これからお世話になります」
…驚いた。外見は立派でありながらも質素な修道院だったが、中身は豪華絢爛。さすが最果ての修道院。訳あり貴族の墓場とされるだけあって、寄付金という名の迷惑料はふんだくっていると見える。私のことも、王太子殿下からたっぷり迷惑料を支払われているのだろう。
「あのバカ王太子に振り回されて、貴女も大変でしたねぇ」
修道女の一人が言う。
「いえ、わかっていたことですから」
「あら、お強い。でも、安心してくださいね。この最果ての修道院は、お金には困っていませんから、送られてきた貴族の方は丁重におもてなしするんです」
その言葉の後ろに、死ぬまでね、と続かなければ完璧だったのだけど。まあ、この分なら病死ってことにされて間引かれることはなさそうだ。
「ありがとうございます。私も修道女の一人として頑張ります」
「…?あら、私、さっきも言ったでしょう?送られてきた貴族の方は丁重におもてなしするんです。貴女はお客様として好待遇でおもてなししますわ」
「えっ」
それは果たしていいのか。
「いいんですよ。院長の一種の当てつけですから」
「心を読まないでくださいまし。一種の当てつけというと?」
「あら、ごめんあそばせ。院長は元々高位貴族でしてね、国王陛下に嫌われてこの僻地に飛ばされたんですの。それ以来、この僻地に飛ばされてくる同じ境遇の方を丁重におもてなしすることで、王族へのうっぷんを晴らしていらっしゃるのよ」
それは果たして当てつけになるのだろうか。多分、院長は根が善良な方なのだろう。
「では、貴女様のお部屋にご案内致しますわ」
…驚いた。予想以上に豪華な部屋だ。
「ええ…なんだかすみません」
「私達修道女は修道女で好待遇を受けていますから大丈夫ですわ」
…むしろ家にいた時より好待遇だ。慣れるかな。
ー…
慣れた。さすがに三年も経つと慣れたけど申し訳ない。修道女さん達にまるで侍女のようにマッサージや身の回りの世話などをしてもらっていると本当に申し訳ない。
「ということでダーリン、修道女の皆様に私の身の回りの世話を任せるのをやめてくださいませ」
「おや、つまり俺直々に世話をしていいと?」
「余計嫌ですわ。そんなこと許したらいつまでもベッドの上から離してもらえませんもの」
「よくお分かりで」
そう笑うのはレオナルド・クラーク。レオは私の夫で…ここの院長ですわ。
「君がここに来てから俺の生活は変わった。暗く、復讐心に満ちていた心は闇が晴れ、些細な生活にも幸せを感じられるようになった。マイレディ。どうか甘やかさせてくれ」
そう、初めてここに来た後。レオに挨拶に行った瞬間、レオは頬を染めた。私に一目惚れしたらしい。そのあまりの分かりやすさ、優しさ、可愛らしさに私も惹かれていき、今では両思いで事実婚状態だ。
「もう…レオったら」
「愛してるよ、マイレディ」
「私もよ、マイダーリン」
え?王太子殿下?あれだけべた惚れだったリリアンヌ様が浮気…というか、何股もかけていたそうで絶賛修羅場中だそうですわ。
とまあ、なんだかんだありましたが、私は幸せです。
王家主催のダンスパーティーで、いきなり私にそう突きつけるのはアルフィー・フィリップ王太子殿下。…まあ、遅かれ早かれこうなるとは知っていましたけれど。よりにもよってこの場でとか…ふふ。殿下らしいですわ。そういえばシナリオでもダンスパーティーで、と記載されていましたわね。忘れてましたわ。まあ覚えていても、王家主催の、ダンスパーティーでやらかすとは思いませんでしたが。
「承知いたしました」
えっ、という顔をするリリアンヌ様と殿下。私が何か言ってくると思っていたのね。残念ですがシナリオ通りには行きませんわ。
「ま、待て、貴様の断罪を…」
「婚約者として至らなかった私を身分剥奪の上最果ての修道院に送られるのでしょう?」
またえっ、て表情。仮にも王太子殿下とその婚約者がしていい表情ではありませんわよ。
「そ、そうだ。だが貴様が婚約者として至らなかったからだけではなく…」
「では身分剥奪された私はもう貴族ではありませんので、これで失礼致しますわ」
「ちょっとま…」
「それでは皆様、ご機嫌よう」
最後に綺麗にカーテシーを決め、お城を後にする。屋敷に帰るとすぐに、いつ婚約破棄されてもいいよう元々用意していた荷物を持って最果ての修道院へ向かう。両親と兄に挨拶?必要ない。私はあの人達にとってただの駒だ。今となっては利用価値もないし、なんの情もないだろう。ああ、もちろん馬車は私が手配したもので、私の貯金で雇った。これで挨拶もせずに旅立つ不義理は許してほしい。向こうは寒いらしい。寒いというか痛いらしい。防寒着は用意しているが、大丈夫だろうか。
ついてみると、本当に寒い。痛い。急いで門を叩く。早く中に入れて欲しい。
「はい、キャロライン様ですね。こちらへどうぞ」
「はい、これからお世話になります」
…驚いた。外見は立派でありながらも質素な修道院だったが、中身は豪華絢爛。さすが最果ての修道院。訳あり貴族の墓場とされるだけあって、寄付金という名の迷惑料はふんだくっていると見える。私のことも、王太子殿下からたっぷり迷惑料を支払われているのだろう。
「あのバカ王太子に振り回されて、貴女も大変でしたねぇ」
修道女の一人が言う。
「いえ、わかっていたことですから」
「あら、お強い。でも、安心してくださいね。この最果ての修道院は、お金には困っていませんから、送られてきた貴族の方は丁重におもてなしするんです」
その言葉の後ろに、死ぬまでね、と続かなければ完璧だったのだけど。まあ、この分なら病死ってことにされて間引かれることはなさそうだ。
「ありがとうございます。私も修道女の一人として頑張ります」
「…?あら、私、さっきも言ったでしょう?送られてきた貴族の方は丁重におもてなしするんです。貴女はお客様として好待遇でおもてなししますわ」
「えっ」
それは果たしていいのか。
「いいんですよ。院長の一種の当てつけですから」
「心を読まないでくださいまし。一種の当てつけというと?」
「あら、ごめんあそばせ。院長は元々高位貴族でしてね、国王陛下に嫌われてこの僻地に飛ばされたんですの。それ以来、この僻地に飛ばされてくる同じ境遇の方を丁重におもてなしすることで、王族へのうっぷんを晴らしていらっしゃるのよ」
それは果たして当てつけになるのだろうか。多分、院長は根が善良な方なのだろう。
「では、貴女様のお部屋にご案内致しますわ」
…驚いた。予想以上に豪華な部屋だ。
「ええ…なんだかすみません」
「私達修道女は修道女で好待遇を受けていますから大丈夫ですわ」
…むしろ家にいた時より好待遇だ。慣れるかな。
ー…
慣れた。さすがに三年も経つと慣れたけど申し訳ない。修道女さん達にまるで侍女のようにマッサージや身の回りの世話などをしてもらっていると本当に申し訳ない。
「ということでダーリン、修道女の皆様に私の身の回りの世話を任せるのをやめてくださいませ」
「おや、つまり俺直々に世話をしていいと?」
「余計嫌ですわ。そんなこと許したらいつまでもベッドの上から離してもらえませんもの」
「よくお分かりで」
そう笑うのはレオナルド・クラーク。レオは私の夫で…ここの院長ですわ。
「君がここに来てから俺の生活は変わった。暗く、復讐心に満ちていた心は闇が晴れ、些細な生活にも幸せを感じられるようになった。マイレディ。どうか甘やかさせてくれ」
そう、初めてここに来た後。レオに挨拶に行った瞬間、レオは頬を染めた。私に一目惚れしたらしい。そのあまりの分かりやすさ、優しさ、可愛らしさに私も惹かれていき、今では両思いで事実婚状態だ。
「もう…レオったら」
「愛してるよ、マイレディ」
「私もよ、マイダーリン」
え?王太子殿下?あれだけべた惚れだったリリアンヌ様が浮気…というか、何股もかけていたそうで絶賛修羅場中だそうですわ。
とまあ、なんだかんだありましたが、私は幸せです。
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