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そるとそら
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私は猫と犬を飼っていました。名前はそるとそら。 二匹とも子供の頃から飼っていたのでとても仲良しでした。二匹ともとても臆病で、穏やかで優しく、私と父と母、近所に住む奏太君が大好きでした。私達は毎日夕方になると散歩に出かけるのが日課でした。田舎なもので、そらにはリードをつけて、そるには首輪だけで、一人と二匹仲良く散歩していました。そこに遊びから帰る途中の奏太君が途中から混ざってくるのです。そんな毎日がとても楽しく、まさかあんな事件が起こるとは思いもしませんでした。
ある日のことでした。遠くからびーびーと、防犯ブザーが鳴り響きました。何事かと思っているうちにそるが飛び出していき、続いてそらも飛び出していきました。そるとそらのあまりの速さについていけずに、途中でリードを離してしまいました。でもブザーの音で方向はわかるので、急いで走っていきました。
そこには、傷だらけのそるを抱きしめて泣いている奏太君と、その前に立ちはだかる同じく傷だらけのそらの姿。そして、手にナイフを持った不審者の姿がありました。そらとそると奏太君が殺されちゃう!私はそう思って、咄嗟に嘘をつきました。
「おまわりさん!こっちです!」
不審者はすぐに逃げて行きました。
奏太君を連れて、とにかく急いでその場を離れます。向かう先は近くの動物病院。あそこに逃げ込めば安全だし、そらとそるを助けられるかもしれない。
動物病院に着くと受け付けのお姉さんにまずそらとそるを預け、急患としてみてもらいました。そして受け付けのお姉さんに事情を話し、警察と親に連絡をしてもらいました。警察に保護されて事情を話していると、奏太君の親と私の親が迎えに来てくれました。
「よく頑張ったね、偉かったね」
「もう大丈夫だよ」
「そるとそらも命に別状はないよ」
私と奏太君はそこでようやく安心してわんわんと泣いてしまいました。警察のお兄さんは目頭を押さえていました。お兄さんもペットを飼っていたそうです。
後日犯人は逮捕されたそうです。その辺りの事情はよくわからなかったのですが、あとで聞いたところによると、犯人は近所の大学生だったそうで、奏太君を道連れに死のうとしていたそうです。奏太君はたまたま巻き込まれてしまったそうです。初犯だったため執行猶予がついたそうですが、遠くに引っ越していったためもう大丈夫とのことでした。
そるとそらは酷い怪我でしたが、獣医さんの懸命な治療のおかげで無事退院の日を迎え、またいつものように散歩が出来るようになりました。
その後数日経ち、奏太君とお話ししました。
「なんでそるとそらは奏太君が殺されちゃうってわかったんだろう?」
「あのね、僕、防犯ブザーを鳴らして必死に逃げながら、ママ!パパ!そる!そら!助けて!って叫んだんだ。それがそるとそらには聞こえたのかな」
「そっかー、偉かったね。そる、そら」
「わん!」
「んふわぁ」
「相変わらずそるの鳴き声は気が抜けるなぁ」
「ねー」
その後も、二匹の臆病で穏やかで優しい性格は変わらず、十五歳まで長生きしてから天国にいってしまいました。十二歳の頃には二匹とも認知症だと診断されましたが、私と父と母、奏太君のことは最期まで覚えていてくれたように思います。天国にいく時も、二匹仲良く一緒にいってしまいました。
時は流れて、はやくも私達は二十五歳。仕事にもつきました。私と奏太君は今度、結婚式を挙げることになっています。
私と奏太君は今、うちのお庭にあるそるとそらのお墓の前にいます。二人で手を合わせて、どうかこれからもずっと見守っていてね、と声をかけます。すると、
「わん!」
「んふわぁ」
と聞き慣れた声が聞こえた気がして、思わずぽろりと涙が溢れました。奏太君は急に泣き出した私にあたふたしています。その様子がおかしくて、二匹の気持ちが嬉しくて、私はにっこり笑いました。
ある日のことでした。遠くからびーびーと、防犯ブザーが鳴り響きました。何事かと思っているうちにそるが飛び出していき、続いてそらも飛び出していきました。そるとそらのあまりの速さについていけずに、途中でリードを離してしまいました。でもブザーの音で方向はわかるので、急いで走っていきました。
そこには、傷だらけのそるを抱きしめて泣いている奏太君と、その前に立ちはだかる同じく傷だらけのそらの姿。そして、手にナイフを持った不審者の姿がありました。そらとそると奏太君が殺されちゃう!私はそう思って、咄嗟に嘘をつきました。
「おまわりさん!こっちです!」
不審者はすぐに逃げて行きました。
奏太君を連れて、とにかく急いでその場を離れます。向かう先は近くの動物病院。あそこに逃げ込めば安全だし、そらとそるを助けられるかもしれない。
動物病院に着くと受け付けのお姉さんにまずそらとそるを預け、急患としてみてもらいました。そして受け付けのお姉さんに事情を話し、警察と親に連絡をしてもらいました。警察に保護されて事情を話していると、奏太君の親と私の親が迎えに来てくれました。
「よく頑張ったね、偉かったね」
「もう大丈夫だよ」
「そるとそらも命に別状はないよ」
私と奏太君はそこでようやく安心してわんわんと泣いてしまいました。警察のお兄さんは目頭を押さえていました。お兄さんもペットを飼っていたそうです。
後日犯人は逮捕されたそうです。その辺りの事情はよくわからなかったのですが、あとで聞いたところによると、犯人は近所の大学生だったそうで、奏太君を道連れに死のうとしていたそうです。奏太君はたまたま巻き込まれてしまったそうです。初犯だったため執行猶予がついたそうですが、遠くに引っ越していったためもう大丈夫とのことでした。
そるとそらは酷い怪我でしたが、獣医さんの懸命な治療のおかげで無事退院の日を迎え、またいつものように散歩が出来るようになりました。
その後数日経ち、奏太君とお話ししました。
「なんでそるとそらは奏太君が殺されちゃうってわかったんだろう?」
「あのね、僕、防犯ブザーを鳴らして必死に逃げながら、ママ!パパ!そる!そら!助けて!って叫んだんだ。それがそるとそらには聞こえたのかな」
「そっかー、偉かったね。そる、そら」
「わん!」
「んふわぁ」
「相変わらずそるの鳴き声は気が抜けるなぁ」
「ねー」
その後も、二匹の臆病で穏やかで優しい性格は変わらず、十五歳まで長生きしてから天国にいってしまいました。十二歳の頃には二匹とも認知症だと診断されましたが、私と父と母、奏太君のことは最期まで覚えていてくれたように思います。天国にいく時も、二匹仲良く一緒にいってしまいました。
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私と奏太君は今、うちのお庭にあるそるとそらのお墓の前にいます。二人で手を合わせて、どうかこれからもずっと見守っていてね、と声をかけます。すると、
「わん!」
「んふわぁ」
と聞き慣れた声が聞こえた気がして、思わずぽろりと涙が溢れました。奏太君は急に泣き出した私にあたふたしています。その様子がおかしくて、二匹の気持ちが嬉しくて、私はにっこり笑いました。
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