君が僕に心をくれるなら僕は君に全てをあげよう

下菊みこと

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冷たいのかな

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「でも兄様」

「うん?」

「私って冷たいのかな」

「なんで?」

きょとんとする兄様。

「だって、お義父さんとお母さんのこと知りたくないし、いじめっ子のことも知りたくないし、火事にあったみんなのこともう関係ないって思っちゃうし」

「もう、そんなこと気にしてたの?」

兄様は私を抱きしめる。

「言ったでしょ、それくらいの方が健全だよ」

「でも…」

ぎゅっと抱きしめる力が強くなる。

「それでいけば俺なんてもっと酷いし冷たいよ」

「え?どうして?兄様はこんなに優しいよ?」

「昨晩、コトハを蔑ろにした奴らの末路を見てスカッとしてた」

「あらまぁ…」

兄様からの告白に目を丸くしてしまう。

「兄様そんなことしてたの?」

「うん、それでコトハがどう思うかなって思ったんだけど、聞きたいなら話そうかと思って今日聞いたの」

「知りたいかって?」

「そう」

「そっか」

兄様は優しいけれど、やっぱりそういうところに祟り神としての性質が見え隠れする。

「でも、兄様。末路ってそんなに酷いことになってるの?」

「なってるなってる。祟りの効果としては十分かな」

「祟り?」

「うん、実はちょっとコトハに意地悪した人たちに仕返ししてたんだよね」

「え」

ギョッとしてしまうが、兄様は涼しい顔。

「コトハの守り神としての性質変化には影響してないから大丈夫だよ」

「ええ…」

「引いた?」

ちょっと不安そうな兄様は、ぎゅっとしていた私を離して顔を合わせて聞いてくる。

「あ、ううん!引いてないよ、大丈夫」

「そっか、良かった」

「でも、兄様がそんなことしてたなんて初めて聞いたから驚いた」

「僕も黙ってるつもりだったんだけどね?コトハが少しでも安心できたらなって思って言っちゃった」

「兄様…」

本当に兄様は私のことをいつも大事にしてくれる。

それが嬉しい。

「兄様、ありがとう」

「ふふ、どういたしまして」

「でも、あんまり人を祟っちゃダメだよ」

「よっぽどのことがなければしないよ、大丈夫」

「約束だからね」

私がそう言うと、兄様は笑った。

「うん、約束。コトハも一つお約束してくれる?」

「うん?なに?」

「ずっとそばにいて欲しいな」

「うん、ずっとそばにいるよ。お約束」

「うん、お約束」

兄様と素敵なお約束をして、この話はここで切り上げた。
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