君が僕に心をくれるなら僕は君に全てをあげよう

下菊みこと

文字の大きさ
上 下
46 / 88

私の幸せ

しおりを挟む
一連の流れを見て、やっぱり兄様は…祟り神様なのだと改めて認識した。

けれど、兄様は私を不幸になんてしない。

むしろいつだって、助けてくれる。

だから私は幸せになれたのだ。

兄様は、私だけの神様なのだ。

「兄様…」

「なに?コトハ」

「離れていかないでくれて、ありがとう」

「うん?どうしたの急に。おいで」

急にお礼を言いだした私に、兄様は面食らった様子。

兄様に手招きされて、兄様の足の間に面と向かって座る。

「何か不安になっちゃった?」

「…うん、ちょっとだけ」

「言葉にして教えてくれるかな?」

兄様は優しく私に促す。

自分の中で自分の感情を整理しながら、言葉にした。

「あのね、あの不審者のおじさん…兄様のこと悪く言ってたから、兄様も嫌な思いしたでしょう?」

「まあ、そうだね。誰になんと言われようが構わないけれど、コトハに余計なことをしてくれたのは心底腹が立つかな」

「嫌な思いさせちゃったのに…それでも兄様は私のそばにいてくれるから嬉しくて…でも、なんだかまだ不安なの。それがどういう気持ちなのか、自分でもわからなくて」

「そっか」

兄様は私をぎゅっと抱きしめる。

その力強さにほっとする。

私も兄様の背中に手を回して、お互いにぎゅっとした。

「ぎゅー」

「ぎゅーっ」

「ふふ、こうしていると落ち着くね」

「うん、兄様」

兄様とこうしていると、不安が和らぐ。

「不安にさせてごめんね、コトハ」

「ううん、兄様は悪くないよ」

「心配してもしなくても、僕はコトハとずっと一緒にいるからね」

「うん…」

兄様の言葉に安心する。

やっぱり、私の幸せは兄様と一緒にいることだ。

そしてマミちゃんと一緒にいること。

「兄様とマミちゃんと一緒にいられるだけで私は幸せ」

「僕もだよ」

「ずっと、こんな日々が続いて欲しいな」

「いつまでも、ずっと続くよ」

「本当に?」

「うん」

兄様は自信満々に頷くから、私は心底ほっとする。

「兄様に出会えてよかった」

「僕もコトハと出会えて良かったよ」

「ずっと一緒にいてね」

「もちろん」

あのおじさんが諦めてくれてよかった。

この幸せは、誰にも壊されたくない。

おじさんはきっと善意でやってくれたはずだけど、私はそんなのは求めていない。

「もう、おじさんは来ない?」

「来ないよ、今度こそ絶対」

「よかった」

おじさんは悪い人じゃないと思うから、邪険にすると可哀想かもだけど…やっぱり、もう会いたくないから。

「…本当に、良かった」

「今度こそ絶対大丈夫だからね」

兄様に頭を撫でられる。

この幸せは、手放したくない。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

ずっと温めてきた恋心が一瞬で砕け散った話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレのリハビリ。 小説家になろう様でも投稿しています。

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

逆ハーレムの構成員になった後最終的に選ばれなかった男と結婚したら、人生薔薇色になりました。

下菊みこと
恋愛
逆ハーレム構成員のその後に寄り添う女性のお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

死のうと思って家出したら、なんか幸せになったお話

下菊みこと
恋愛
ドアマットヒロインが幸せになるだけ。 ざまぁはほんのり、ほんのちょっぴり。 ご都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

処理中です...