君が僕に心をくれるなら僕は君に全てをあげよう

下菊みこと

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予習復習は完璧だから、今日も授業の内容がきちんと理解できた!

その上マミちゃんはもちろん他の友達もみんなで一緒に楽しく過ごせた!

今日も充実した日を過ごせてマミちゃんとるんるん気分で帰っていたのに、今日もまたあのおじさんに出会ってしまった。

「おい、君」

「出たな変質者」

マミちゃんがすかさず防犯ブザーを取り出す。

でも鳴らす前におじさんが言った。

「もうお祓いはしようとしない、でも忠告しておく」

「…なあに?」

「あれは、いくらイイモノに変質しかけているとはいえ元々悪いモノだ」

「…それで?」

「君を不幸にするかもしれない」

おじさんは言う。

「どうしても拒むなら無理強いはしない。だが、お祓いして欲しければ言ってくれればやってやる」

「やだ」

私は言った。

「兄様と過ごす日々は私の宝物。誰にもあげない」

「…そうか」

おじさんは諦めてとぼとぼ帰っていった。

おじさんの姿が見えなくなると、兄様が走ってきた。

「コトハ!」

「兄様!」

「ごめんね、すぐに来られなくて…っ」

兄様はそう言って私を抱きしめる。

「兄様、大丈夫。あの変質者はもう来ないと思う」

「コトハちゃんがびしっと言ったので、いい加減理解したと思います」

「もしだめでもマミちゃんが守ってくれるし」

「コトハちゃんは私が責任を持って送り届けるので」

「そっか…マミ、ありがとう。コトハも、よく頑張ったね。偉いね」

兄様は私を離した。

そして三人で手を繋いで帰ることにした。

マミちゃんを家に送り届けて、今日と昨日のお礼の菓子折りもお祖母さんに渡した。

そして私たちは私たちの家に帰ってきた。

「コトハ、明日からちゃんと下校するときには迎えに行くよ。三人で帰ろう」

「うん!」

変質者から身を守るにはそれが一番いいよね。

「校門で待ってるね」

「わかった!」

多分、あの人は悪い人ではなくて…純粋に私を守ろうとしてくれた優しい大人なんだと思う。

けど、強引すぎるし押し付けがましい。

それにどうせ助けに来るならもっと早く来て欲しい。

兄様が助けてくれていなければ、私はどうなっていたかわからないんだから。

今更出てきて、私を助けてくれた兄様を祓おうとするなんて…私は嬉しくない。

「兄様、ずっと一緒にいてね」

「もちろんずっと一緒にいる。一生を見守るよ。誰にも邪魔はさせない」

「うん」

兄様がこう言うならきっと大丈夫。

変質者のおじさんには悪いけど、私は兄様と一緒にいる方が幸せだから。

…ごめんね。
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