君が僕に心をくれるなら僕は君に全てをあげよう

下菊みこと

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食欲

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食欲というのは人間にとって重要なものだ。

今日も今日とてマミとともに宿題をこなつつ勉強を教えてあげていたコトハ。

数時間ほどみっちりお勉強を頑張った二人のために、夏でも食欲が湧くモノを食べさせたい。

そこで僕は考えに考えて…辛いものを作ることにした。

「はい、二人ともおまたせ。辛味噌ラーメンだよ」

「わあ!美味しそう!」

「けっこう辛いんですか?」

「いや、二人のために辛さはマイルドにしてあるよ。食べやすい辛さだと思う」

「マミちゃん、食べよ食べよ!」

三人でラーメンに手を合わせる。

「いただきます」

「いただきます!」

「いただきます」

辛さはマイルドで、深みのある味わいの味噌ラーメン。

チャーシューも自家製だ。

今晩はコトハさえ良ければチャーシュー丼にするのもアリかと画策していたり。

「どうかな、美味しい?」

「美味しい!すごく美味しい!」

良かった。

昨日の夜からチャーシューをこっそり仕込んでいた甲斐があった。

「すごく美味しいです、ナギさん」

「ふふ、二人ともよく噛んで味わって食べるんだよ」

「はーい!」

「はい」

もきゅもきゅ食べる姿も可愛い。

コトハは本当にいい子だな。

もちろんマミもね。

「宿題、今日の分も終わったんだよね?」

「うん!計画通り進んでるよ!」

「なら、食べ終わって一休みしたら少しシエスタしようか」

「え?」

「みんなでお昼寝しよう」

コトハがパッと笑顔になる。

マミも嫌がる様子はない。

なのでしっかり食べて、少しゆったりと雑談をしてから三人でゆったりとお昼寝タイムと洒落込んだ。

「ふう、お腹いっぱい食べてからのお昼寝タイムはいいねぇ」

「食べてすぐはあれですけど、少し雑談タイムも交えましたしね」

「夏休みってみんなでずっと一緒にいられていいね!兄様とマミちゃんとお昼寝できるなんて、最高!」

きゃっきゃと騒ぐコトハを真ん中に、広いベッドで三人で横になるだけ。

それだけのことだけど、なんとなく幸せな心地になる。

人の子の一生なんてあっという間だけど、できることならこのままずっと見守っていられたら…。

「コトハ、長生きするんだよ」

「え、うん」

「マミもね」

「もちろんです」

どうしたって僕は置いていかれる。

けれど、それまでの時間を出来る限り引き伸ばしたい。

そう願うのはわがままだろうか。
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