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見える子

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きゃーきゃー言っていた女の子達の中で、一人だけ冷静な子がいた。

コトハは気にしていないようだが、僕は様子が気になってちらりと見た。

彼女は僕に怯えているようで、けれど言った。

「あの、ナギさん。お時間いただけますか?」

「え、マミちゃん狡い!」

「んー。いいよ、奥で話そうか」

マミちゃんと呼ばれた子を自室に呼ぶ。

万が一にも変な憶測をされないようにドアは全開にして、コトハにも一緒にいてもらった。

残る四人にはリビングでテレビでも見ていてもらう。

「急にすみません」

「いやいや、気にしないで」

「マミちゃん、急にどうしたの?」

コトハが心配そうにマミちゃんとやらを呼ぶ。

「コトハちゃん、あのね」

「うん」

「コトハちゃんはこのヒトに騙されてる」

「え?」

「ん?」

話の流れがわからない。

「貴方…悪いモノですよね」

「え」

「おや、どうしてそう思うの?」

見える子かー、やっちゃったな。

「空気が禍々しいです」

「おやおや、ひどい言い草だ」

「マミちゃんひどい、兄様はそんなヒトじゃないよ!」

コトハは僕のために声を上げてくれる。

でも、せっかくの機会だから説明しておこうかな。

「コトハ、ごめんね」

「え」

「この子の言っていることは、そう間違いでもないんだ」

そして僕はコトハに、自分のことを語り出す。

「僕はね、祟り神という存在だった」

「祟り神…?」

「呪いを撒き散らす存在だったんだ。でもコトハが純粋に僕を信じてお祈りしてくれて、おかげでヒトの姿を得てコトハを守れるようになった」

「兄様…」

「だから僕の本質はこの子の言う通り悪いモノ。けれど、コトハを守るためなら僕はなんだってできる。いい子でいると誓うよ。だからこれからもコトハを守らせてほしい」

コトハは僕の言葉に驚いた。

だが、次の瞬間には微笑んだ。

「もちろんいいよ!」

「コトハ…」

「コトハちゃん、いいの?」

マミちゃんとやらが口を挟むが、コトハは頷いた。

「うん、だって兄様はずっと私を助けてくれてるもん」

「…そっか。コトハちゃんがいいならいい。口を挟んでごめんね」

「ううん。マミちゃんは私を心配してくれてたんだね、ひどいなんて言ってごめんね。ありがとう」

「ううん…」

「でも、どうして私を気にかけてくれたの?」

コトハの言葉に、彼女は苦笑いする。

「コトハちゃんが優しくしてくれたからだよ。多分無自覚なんだろうけど」

「え」

「うちもコトハちゃんに負けず劣らず厄介な家で…そのせいかクラスメイトからも腫れ物扱いだったんだ。でもコトハちゃんが私にも分け隔てなく接してくれたから、私もそのうちクラスに馴染めるようになった。コトハちゃんと過ごした一月は、私にとって一番幸せな日々だった」

「マミちゃん…」

「…そっか、苦労したんだね。これからもコトハと仲良くしてあげてくれるかな?」

マミちゃんとやらは目を見開いて驚く。

「え、いいの?私、貴方を疑ったのに」

「見える子には疑われて当然だよ。気にしないで」

「…ありがとう」

さて、コトハのためにもこの子も救わないとかな。

どうするのが一番いいのか、考えないとね。
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