君が僕に心をくれるなら僕は君に全てをあげよう

下菊みこと

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家に招く

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「あのね、兄様」

「なに?コトハ」

コトハがモジモジと言いにくそうにする。

「あのね、今度の日曜日にみんなが兄様に会ってみたいんだって」

「ああ、なるほど」

そういうことであれば、コトハのためにも引き受けよう。

「いいよ、連れておいで」

「いいの?」

「うん、何人くらい?」

「五人…」

なるほど、結構な人数だな。

とはいえ、問題はない。

「大丈夫だよ」

「本当に?」

「うん」

パッと笑顔になるコトハ。

受け入れてよかった。

そうと決まればジュースとお菓子を買っておかないとだ。










当日になって、五人の女の子が遊びにきた。

「こんにちは!」

「お邪魔します!」

「いらっしゃい」

玄関で出迎えれば、みんなきゃーきゃー言う。

「本物のナギさんだー!」

「すごーい!」

「ふふ、いつもコトハがお世話になってます。みんなありがとうね」

「はい!」

「これからもコトハをよろしくね」

にっこり微笑めば、またきゃーきゃーと騒ぐ。

リビングに案内して、そこで七人でジュースとお菓子でお茶会をする。

「ナギさんってかっこいいですよね!」

「ありがとう」

「恋人とかいるんですか!?」

「いないよ」

「えー!?うそー!?」

嘘なもんか。

コトハに出会うまでは孤独だったのだから。

「今まで交際経験は?」

「ん…昔、一人だけ」

僕が愛した村で、僕の生まれながらの許嫁だった女の子が一人いた。

もう、名前も顔も思い出せないけれど。

ただ、優しくて無垢な子供のような性格だったのは覚えている。

ずっと擦れることはなくて、純粋で…大切だった人。

「一人だけ!?」

「どんな人だったんですか!?」

「…優しくて、純粋無垢な人だったよ。同い年だったけど、どこか幼い印象だったかな」

「幼馴染とか?」

「そうだね、そんな感じかな」

同じ村で育った、仲のいい女の子。

幼馴染と言っていいだろう。

ただ、当時は許嫁としての意識の方が強かったけれど。

僕がこの子を守るんだ、なんて息巻いてたっけ。

結局あの子は、あの野蛮な奴らに殺されて守れなかったのだけど。

祟り神に転じたその時、仇こそ討ったが。

「今は連絡とか取ってないんですか?」

「んー、ちょっと色々あってね。そういうのはないかな。円満に別れたわけじゃないし」

「そうなんですか…」

「でも気にしないで!僕はあの子の話をするのは嫌いではないし」

まだ、何もかも忘れてしまったのに未だに好きだからね。

僕も、未練がましいなぁ。

「今でも好きなんですか?」

「うん、好きだよ」

にっこり笑って答える。

好きだよ、本当に。

大好きだった。
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