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祈祷

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「ただいまー」

「おかえり、コトハ」

「手洗いうがいしてくるね」

「うん」

コトハは最初こそ僕が送り迎えしていたけれど、今ではお友達と帰宅している。

僕はコトハが学校に行ってから帰ってくるまでの間に占いをして、帰ってきたらコトハの宿題と予習復習を見守る。

そして夕飯を一緒に作って食べる。

なのだが。

「兄様、うがいと手洗い終わったよ!」

「はい、お利口さん。コトハは偉いね」

「えへへ…あの、お勉強の前に一つ聞いていい?」

「なにかな?」

コトハがちょっと不安そうな顔をするので心配になる。

「あの、えっとね」

「うん」

「今日学校で、ナギさんは祈祷のサービスはしないのかって聞かれたんだけど…どうなのかなって」

なんだそんなことかと安心する。

深刻な話でなくてよかった。

「大丈夫だよ、コトハ」

「え?」

「僕は祈祷のサービスを増やしたところで困らないから」

「そうなの?」

「うん、コトハが学校に行っている間しか仕事しないって決めてるから過労にはならないよ」

コトハが首をかしげる。

「過労?」

「働きすぎちゃうことだよ」

「そっか。じゃあ兄様は時間を決めて働いてるから大丈夫…なんだよね?」

「そうそう、そういうこと。ただその分、お部屋のお掃除が日曜に一気にやらなきゃいけなくなっちゃったけどね」

コトハが学校に行っている間はずっと仕事だから、休みの日にお掃除せざるを得ない。

とはいえコトハは日曜日はお友達と遊んだりしているので、暇を持て余させたりはしないで済んでいるが。

「本当はコトハとお出かけしたりしたいんだけどな」

「夏休みになったら一緒にお出かけしようね!」

「いいね!そうしよう」

ああでもその間、占いや祈祷はどうしようか。

コトハが夏休みの宿題や予習復習を片付けている間にやるようにしようか。

「じゃあ、今度祈祷のサービス追加しておくね」

「うん!でもあんまり無理はしないでね、兄様」

「さっきも言った通り、無理はしないから大丈夫だよ」

「うん!」

僕をこんなに心配してくれるなんて、コトハはなんていい子だろう。

ヒトでない僕を、こんなにも好いていてくれるなんて。

「コトハ」

「なに?兄様」

「大好きだよ」

「私も兄様が大好き!」

コトハはパッと笑顔になる。

この笑顔を、これからも守り続けよう。

「じゃあ、宿題やるね」

「うん、隣で見てるね」

そしてコトハの宿題と予習復習を見てあげる。

内容をわかりやすく噛み砕いて教えれば、賢いコトハはきちんとその内容を覚えてくれた。

コトハはやっぱり教え甲斐があるなぁ。
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