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時が過ぎるのは早い

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パパとお兄様と仲良くなり、エマちゃんというお友達も出来て。

魔法使いさんと出会ってから毎日が幸せ。

そして幸せになると時が経つのが早く感じた。

私は今日で十八歳。

今日、今この瞬間から魔法使いさんと結婚出来る。

「魔法使いさん」

「なに?お姫様」

「この書類に私の名前を書くんだよね」

「そうだよ」

「私の名前って?」

魔法使いさんが私の名前を教えてくれる。

初めて聞いた私の名前は、数百年前の聖女様と同じ名前で。

なんとなく、魔法使いさんが私に名前を教えたがらない理由がわかった。

その後書類にサインされた魔法使いさんの名前を一生懸命に覚えつつ、魔法使いさんに聞く。

「魔法使いさんが初めから私に優しかったのは、〝前の私〟のせい?」

「ふふ。前も今も、僕の最愛は君だけだよ」

そう言って頬にキスされる。

前の私に嫉妬がないわけじゃないけど、私自身のことだし前の私がいてこその今だから。

「はい、国王陛下。これで僕たちは夫婦ですよね」

「ああ」

「じゃあ、お姫様。二人の新婚生活を始めようか」

「うん」

魔法使いさんの宣言通り、それからは穏やかな新婚生活が始まった。

たまにパパとお兄様と会って仲良くしたり、エマちゃんと遊んだりするけれど…ほぼほぼ魔法使いさんといちゃいちゃしてばかりの、ちょっと自堕落な生活。

でもそれがすごく幸せ。

煩わしいアレコレからは魔法使いさんが守ってくれるし。

国も基本的に平和で安全で豊かで、たまに実は聖女を囲っているのではないかと言いがかりをつけて他国が我が国に聖女略奪のため攻め入ろうとすることもあるらしい。

けど、何故か実行前に必ず魔物の襲撃に遭って計画が頓挫するとか。なんとなく、魔法使いさんは色々知っていそうだけど聞かない。

おそらく、私の知らない前の私に関するお話だろうから。

「今日も平和だね」

「そうだね、お姫様」

「はやく魔法使いさんとの子供が欲しいな」

「ふふ、楽しみだね」

二人の時間を楽しむ。

時々、得体の知れない誰かがこちらを見ているのには気付いているけれど魔法使いさんがなにも言わないので悪いものではないのだろう。

窓の遥か向こうから感じる視線に魔法使いさんにバレないよう優しく手を振って、その後魔法使いさんに飛びついてハグした。

私は自分で思っている以上にたくさん守られているのだろう。

聖女として祭り上げられ利用されただけの前回の私とは違って、きっと幸せな最期を迎えられる。

そう確信して、優しく抱きしめ返してくれる魔法使いさんの唇にキスをした。
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