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宰相
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「陛下」
「なんだ」
「教皇猊下が姫様の扱いを改めるように、と仰せのようです」
「今更か」
従兄弟である教皇は、普段うるさく口を出してきたりしない。
俺の事情も分かっているので、基本的に普段は味方してくれる。
けれど、今更になってそんなことを言い出したのは…。
「あの魔法使いの存在を慮るということか」
「ええ。魔法使い様は今、王子殿下の命綱。それを差し引いたとしても、我が国としては他国には取られたくない優秀なお方です」
「教皇としても無視できないか」
「教皇猊下は、国王陛下を思ってこそ仰っているのでしょう」
それは知っている。面白くないだけだ。
「それに…恐れながら、姫様に王位継承権はありません。争いの種にはなり得ない。であれば、姫として相応しい待遇を受ける必要があるでしょう」
「…お前までそんなことを言うとは」
「私は国王陛下の親友にして腹心の部下。であればこそ、国王陛下にこれ以上間違いはさせられません」
「王女を冷遇したのは、間違いだったと?」
「はい」
はっきり言われて頭を抱える。
「…はぁ。わかった、私が悪かった」
「謝る相手が違います」
「…チッ」
「それで、どの程度改善なさいますか」
「キュイヴル宮からアルジャン宮へ移す」
ここにはいくつかの宮がある。
私と王妃、王子が暮らしているのは一番豪華なオール宮。
王女に与えるアルジャン宮は今は空いているが、オール宮の次に豪華と言える。
そして王女が今いるのはキュイヴル宮。豪華で頑丈なのはそうだが、オール宮やアルジャン宮に比べれば見劣りするような宮だ。
「なるほど。それから?」
「それからとは?」
「教育や食事などは?養育費は?年間の予算は?」
「…教育などは後見人となった魔法使いに一任している。養育費もその他の費用も全て魔法使いが出すと自分から申し出た」
「そこはそのままですか…」
ため息を吐かれるが、その分の費用を他に回せるんだからいいだろう。
「あとは?」
「あとはとは?」
「姫様と会ったりしないのですか」
「は?」
そんなことをして何になる。
「…少しは父親らしいこともなさい、おバカさん」
「今更父親面をしろと?」
「今更でもいいからなんとかなさい。王子殿下はもう姫様を可愛がっていらっしゃいますよ」
「…」
「いい加減大人になりなさい」
仕方がない。
「…わかった。会ってやる」
「毎日一時間、姫様とのお茶の時間をセッティングしておきます」
「は?」
「よろしいですね?」
圧をかけられる。仕方がない…。
「…わかった」
「では、私は魔法使い様にお伝えしてきます。セッティングもしておくのでご案内を」
「…はぁ」
なんだか妙なことになった。
「なんだ」
「教皇猊下が姫様の扱いを改めるように、と仰せのようです」
「今更か」
従兄弟である教皇は、普段うるさく口を出してきたりしない。
俺の事情も分かっているので、基本的に普段は味方してくれる。
けれど、今更になってそんなことを言い出したのは…。
「あの魔法使いの存在を慮るということか」
「ええ。魔法使い様は今、王子殿下の命綱。それを差し引いたとしても、我が国としては他国には取られたくない優秀なお方です」
「教皇としても無視できないか」
「教皇猊下は、国王陛下を思ってこそ仰っているのでしょう」
それは知っている。面白くないだけだ。
「それに…恐れながら、姫様に王位継承権はありません。争いの種にはなり得ない。であれば、姫として相応しい待遇を受ける必要があるでしょう」
「…お前までそんなことを言うとは」
「私は国王陛下の親友にして腹心の部下。であればこそ、国王陛下にこれ以上間違いはさせられません」
「王女を冷遇したのは、間違いだったと?」
「はい」
はっきり言われて頭を抱える。
「…はぁ。わかった、私が悪かった」
「謝る相手が違います」
「…チッ」
「それで、どの程度改善なさいますか」
「キュイヴル宮からアルジャン宮へ移す」
ここにはいくつかの宮がある。
私と王妃、王子が暮らしているのは一番豪華なオール宮。
王女に与えるアルジャン宮は今は空いているが、オール宮の次に豪華と言える。
そして王女が今いるのはキュイヴル宮。豪華で頑丈なのはそうだが、オール宮やアルジャン宮に比べれば見劣りするような宮だ。
「なるほど。それから?」
「それからとは?」
「教育や食事などは?養育費は?年間の予算は?」
「…教育などは後見人となった魔法使いに一任している。養育費もその他の費用も全て魔法使いが出すと自分から申し出た」
「そこはそのままですか…」
ため息を吐かれるが、その分の費用を他に回せるんだからいいだろう。
「あとは?」
「あとはとは?」
「姫様と会ったりしないのですか」
「は?」
そんなことをして何になる。
「…少しは父親らしいこともなさい、おバカさん」
「今更父親面をしろと?」
「今更でもいいからなんとかなさい。王子殿下はもう姫様を可愛がっていらっしゃいますよ」
「…」
「いい加減大人になりなさい」
仕方がない。
「…わかった。会ってやる」
「毎日一時間、姫様とのお茶の時間をセッティングしておきます」
「は?」
「よろしいですね?」
圧をかけられる。仕方がない…。
「…わかった」
「では、私は魔法使い様にお伝えしてきます。セッティングもしておくのでご案内を」
「…はぁ」
なんだか妙なことになった。
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