4 / 27
王子
しおりを挟む
僕には妹がいる。
名前は…聞かされていない。どうしてだろう、妹の名前は誰も教えてくれない。
妹は、いるはずなのに会わせてもらえない。腹違いとはいえ、血を分けた兄妹だ。心配なのだけど。
とはいえ、僕は人の心配をしている場合ではない。
身体が弱いから。
「ゲホッ、ゲホッ…」
こんな身体でも勉強は一応出来るから、将来の王として問題ない程度の知識は身につけてある。また体調のいい日は鍛えるようにして、なんとか痩せ細ることのないよう頑張った。ただ、身体の弱さはどうしても致命的だった。
「国を、妹を守らなきゃいけないのに…」
僕がそう呟いたのと同時くらいに、ドアがノックされた。
「はい」
「新しい魔法使いです。入ってもいいですか」
「どうぞ」
新しい魔法使いは、フードで隠していたが犬耳が見えた。獣人だとわかった。偏見はないが、初めて見たので少し驚く。
「獣人は初めて?」
「はい、可愛らしい犬耳ですね」
「…驚いた。あの子と同じことを言うんだね」
「え」
「いや…それより、僕は耳がいいから聞こえちゃったんだけど」
そう言って、僕の方に屈む。耳打ちされた。
「妹さん、気になる?」
「!」
「もし僕が君を助けられたら、ご褒美に後見人の地位をもらって君とも会えるようにしようか」
「いいんですか?」
「いいよ。僕も色々興味があるし、君は思ったより良さそうだ」
良さそう、とは?
「じゃあ、魔力石を作ろうか」
「え」
「魔力の暴走には一番効果的な対処法だよ」
「出来るんですか?」
「こちとら長生きしてるからね」
指パッチンされ、その瞬間身体がすっと楽になった。そして、見れば魔法使いの足元に大量の魔力石。
魔法使いはそれを魔法で宙に浮かせて綺麗に磨き、僕に全部くれた。
「あげる」
「え」
「僕が欲しいのは後見人の地位。お金も宝石も魔力石も既に持ってるから、これは君がもらっておきな」
…とんでもない魔法使いかもしれない。
「君の身体がその魔力量に耐えられるようになるまであと数年必要。その間、王女殿下の後見人として滞在しつつ魔力石を作りまくってあげるよ。作ったのは全部君にあげる」
「…ありがとうございます。でも一つ」
「なに?」
「妹を傷つけたり、利用するのはやめてくださいね」
僕がそう言えば、魔法使いはにんまり笑う。
「やっぱり君、いいね」
「え」
「任せて。後見人として、必ず幸せにする」
…まあ、それならいいけど。
そして僕は健康を手に入れて、次期国王としてさらに期待されるようになった。
魔法使いは妹の後見人になった。そして、妹の名前を教えてくれた。でも、妹には秘密にしろと念押しされてしまった。
なんだかすごくワケありな人だと悟って、妹に同情した。でも悪い人ではなさそうで、妹にも会わせてくれるらしいから感謝する。
明日、妹に会えるのが楽しみだ。
名前は…聞かされていない。どうしてだろう、妹の名前は誰も教えてくれない。
妹は、いるはずなのに会わせてもらえない。腹違いとはいえ、血を分けた兄妹だ。心配なのだけど。
とはいえ、僕は人の心配をしている場合ではない。
身体が弱いから。
「ゲホッ、ゲホッ…」
こんな身体でも勉強は一応出来るから、将来の王として問題ない程度の知識は身につけてある。また体調のいい日は鍛えるようにして、なんとか痩せ細ることのないよう頑張った。ただ、身体の弱さはどうしても致命的だった。
「国を、妹を守らなきゃいけないのに…」
僕がそう呟いたのと同時くらいに、ドアがノックされた。
「はい」
「新しい魔法使いです。入ってもいいですか」
「どうぞ」
新しい魔法使いは、フードで隠していたが犬耳が見えた。獣人だとわかった。偏見はないが、初めて見たので少し驚く。
「獣人は初めて?」
「はい、可愛らしい犬耳ですね」
「…驚いた。あの子と同じことを言うんだね」
「え」
「いや…それより、僕は耳がいいから聞こえちゃったんだけど」
そう言って、僕の方に屈む。耳打ちされた。
「妹さん、気になる?」
「!」
「もし僕が君を助けられたら、ご褒美に後見人の地位をもらって君とも会えるようにしようか」
「いいんですか?」
「いいよ。僕も色々興味があるし、君は思ったより良さそうだ」
良さそう、とは?
「じゃあ、魔力石を作ろうか」
「え」
「魔力の暴走には一番効果的な対処法だよ」
「出来るんですか?」
「こちとら長生きしてるからね」
指パッチンされ、その瞬間身体がすっと楽になった。そして、見れば魔法使いの足元に大量の魔力石。
魔法使いはそれを魔法で宙に浮かせて綺麗に磨き、僕に全部くれた。
「あげる」
「え」
「僕が欲しいのは後見人の地位。お金も宝石も魔力石も既に持ってるから、これは君がもらっておきな」
…とんでもない魔法使いかもしれない。
「君の身体がその魔力量に耐えられるようになるまであと数年必要。その間、王女殿下の後見人として滞在しつつ魔力石を作りまくってあげるよ。作ったのは全部君にあげる」
「…ありがとうございます。でも一つ」
「なに?」
「妹を傷つけたり、利用するのはやめてくださいね」
僕がそう言えば、魔法使いはにんまり笑う。
「やっぱり君、いいね」
「え」
「任せて。後見人として、必ず幸せにする」
…まあ、それならいいけど。
そして僕は健康を手に入れて、次期国王としてさらに期待されるようになった。
魔法使いは妹の後見人になった。そして、妹の名前を教えてくれた。でも、妹には秘密にしろと念押しされてしまった。
なんだかすごくワケありな人だと悟って、妹に同情した。でも悪い人ではなさそうで、妹にも会わせてくれるらしいから感謝する。
明日、妹に会えるのが楽しみだ。
43
お気に入りに追加
201
あなたにおすすめの小説
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる