悪役令嬢が王太子に掛けられた魅了の呪いを解いて、そのせいで幼児化した結果

下菊みこと

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間諜の報告

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私は見てきたものすべてを国王陛下に報告する。

「…以上が私が見てきたものです」

「ふむ、少年少女に青年、そしてその主人…」

「なにか目的があり動いているのは確実。ですがそれを探ることはできませんでした」

「そうか…いや、ご苦労だった」

「はい」

国王陛下はヒゲを撫でて呟く。

「…ふむ。大陸全土を混乱に陥れてまで、一体なにがしたいやら」

「これは我が国だけで対処できる問題とは思えません…」

「お主の言う通りだな。かと言って派手な動きを見せれば、その者共が勘付くだろう。困ったものだ」

「…」

「…秘密裏に大陸内の各国に協力を要請し、その屋敷を包囲するほかあるまい。相手はマインドコントロールが使えるのだ。過剰戦力を投入するくらいでちょうどいいだろう」

国王陛下の瞳には憂いが見える。

「だが…マインドコントロール…まさか、魔族ではあるまいな」

「国王陛下、それはさすがにないかと」

魔族は、獣人と共に姿を消した。

獣人がその身を捧げてまで滅ぼしたのだ。

…とはいえ。

「獣人の子孫であるシャルロット様が、獣人の先祖返りとなったことと関連付けて考えていらっしゃいますか?」

「ああ、滅びたはずの獣人の血がこうして蘇ったのだ。魔族も同じように、なんらかの形で血を残していたのかもしれない」

「…なるほど」

であるならば、まずい。

魔族は強力な力を持つという。

あの屋敷にいた者だけだというのなら、少数しか残っていないだろうけれど…もしかしたらまだまだいる可能性だってあるのだ。

「しかし、今我が国にはシャルロットがいる。獣人の先祖返りとなったあの子なら…万が一魔族の復活があったとしても、なんとかしてくれるやもしれん」

「ええ、シャルロット様ならばきっと」

「だがあの子は、少し人のために無茶をしすぎる。世界のために自らの命を捧げてしまうやもしれん」

「世界とシャルロット様を天秤にかけることはできません」

「わかっておる。いざとなれば非情な判断をするのは国王として必要な仕事だ。だがなぁ…」

シャルロット様は、健気で優しい。

人々から愛されるお方だ。

だからこそ、最悪な事態は避けたいと国王陛下が願うのも無理はない。

それでも。

「どうかいざとなったときのためにお覚悟を」

「わかっておる…」

難しい表情の国王陛下。

この方の優しさは美徳だが、同時に弱みでもある。

いざとなったら、私が背中を押さねばならないかもしれない。

シャルロット様は国にとって必要な方だが、いざとなったら代わりは探せるだろう。

世界のための尊い犠牲とすることに、躊躇ってはいけない。
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