上 下
57 / 64

救出作戦

しおりを挟む
「なぁ…本当にやっちまったな…」

「どうする…?」

「とりあえず、口封じに王太子の婚約者を殺しておくべきか…?」

「でもよぉ、もし捕まったら…王太子の婚約者を殺したのがバレたらそれこそギロチンじゃ済まねえよ…」

「なんで俺たちはこんなことしちまったんだよぉ~…」

彼らはそんなことを延々と話し続けている。

私は影武者としての役割を全うするため、余計なことは言わない。

たとえ殺されるとしても、聖女様を守れるならば構わない。

私に施された情報抹消、情報改造の魔術は完璧だ。

私が死んでも、しばらく…国が私が影武者だったと発表する頃までは私が影武者とはバレないだろう。

「とりあえず、殺すのはあとにしよう…」

「それより、こいつはここにおいてそのまま逃げる準備しないか?」

「そうだよな、身代金とか絶対無理だって…」

どうやらこの犯罪者グループは割と現実が見えているらしい。

事前の情報でマインドコントロールがどうこうと聞いていたので、こうなったのはおそらく彼らの意思ではないのだろう。

だからといって聖女様を誘拐しようとしたことは許さないが。

私は聖女様に恩があるから。

聖女様のおかげであのインチキ占い師におかしくされていた被害者の一人、大好きな兄が家に戻ってきたのだ。

だから聖女様は絶対に守る。

本当に、感謝しているから。

「おい、お前」

ちらっと彼らを見る。

意外なことに、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

「悪かったな、俺たちもこんなことなんでしたのかわかんねぇ…詐欺とか、そんな犯罪しかしたことなかったのに」

いや詐欺も十分重大な犯罪だよバカ。

「でもな、俺たちも死にたくねぇんだ。だからお前さんをここに置いて逃げる。上手く人に見つけてもらってくれ」

ご勝手なことで。

「じゃあな!!!」

彼らは結局、尻尾を巻いて逃げた。

…逃げようとした。

「…っ、な、なんだ!?」

「身体が勝手に、刃物を…っ」

ああ、そうだ。

彼らはマインドコントロールを受けている。

聖女様を殺さなければ逃げられない暗示…いや、逃げようとしても聖女様を殺してからという暗示をかけられているのかもしれない。

ここまでか。

「や、やべぇ…嬢ちゃん、逃げろ!」

「逃げろと言われても…」

縛られてるし。

まあ、役割は果たせた。

仕方がない。

聖女様には本当に、兄を助けられた。

だから…これでいい。

十分だ。

「…ぅわああああ!」

刃が私に向かってきたその時。

「そこまでだ!」

騎士団が、私の救出に来てくれた。

結果、私は無事解放された。

犯罪者グループは、全員捕まった。

犯罪者グループは全員、ほっとした顔をしていた。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

秘密の多い彼との関係を切れない私の話

下菊みこと
恋愛
秘密の多い彼と思ったより愛し愛されていたお話。 御都合主義のハッピーエンドのSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

バイバイ、旦那様。【本編完結済】

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
妻シャノンが屋敷を出て行ったお話。 この作品はフィクションです。 作者独自の世界観です。ご了承ください。 7/31 お話の至らぬところを少し訂正させていただきました。 申し訳ありません。大筋に変更はありません。 8/1 追加話を公開させていただきます。 リクエストしてくださった皆様、ありがとうございます。 調子に乗って書いてしまいました。 この後もちょこちょこ追加話を公開予定です。 甘いです(個人比)。嫌いな方はお避け下さい。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

悪役令嬢に転生しましたがモブが好き放題やっていたので私の仕事はありませんでした

蔵崎とら
恋愛
権力と知識を持ったモブは、たちが悪い。そんなお話。

婚約破棄された私は、年上のイケメンに溺愛されて幸せに暮らしています。

ほったげな
恋愛
友人に婚約者を奪われた私。その後、イケメンで、年上の侯爵令息に出会った。そして、彼に溺愛され求婚されて…。

ホストな彼と別れようとしたお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。 あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。 小説家になろう様でも投稿しています。

ダメンズな彼から離れようとしたら、なんか執着されたお話

下菊みこと
恋愛
ソフトヤンデレに捕まるお話。 あるいはダメンズが努力の末スパダリになるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。

処理中です...