悪役令嬢が王太子に掛けられた魅了の呪いを解いて、そのせいで幼児化した結果

下菊みこと

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焚きつけたのは誰?

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「シャル、今日も生きていてくれてありがとう」

「ヴァレール様、そんなことでお礼を言われても困りますわ」

「だって最近、シャルは危ないことにばかり巻き込まれるから」

「たしかにそうですわね…」

「それで、あの武装蜂起した平民たちの話をしてもいいかな」

はて?

「幼いままのわたくしに話すなんて、びっくりですわ。そんなに大切なお話ですの?」

「そうなんだ」

ヴァレール様の真剣な表情に、聞く姿勢になる。

「どうしましたの?」

「まず、武装蜂起した彼ら。彼らはシャルの領地とは関係のない貧困にあえぐ村の民だった」

「それは押し入ってきた時の彼らの言葉で推察しておりましたけれど、やはりそうですのね」

「で、なんで関係のないシャルのところに押し入ってきたのかだけれど」

そう、それはわたくしも気になっていたことですわ。

「誰も彼もが、覚えてないというんだ」

「え?」

「いくら拷問にかけても、シャルたちを殺そうとした理由が思い出せない、わからないと」

「…」

思い出せない、わからないなんて。

メアリーをあんなにボロボロにしておいて。

「許せませんわ」

「シャル…」

「けれど、ヴァレール様はそれに裏があるとお考えですのね?」

わたくしがそう尋ねれば、ヴァレール様は頷いた。

「シャル、彼らが来たとき何か違和感を感じなかった?」

「…えっと、瞳が虚ろでなんだか怖かったですわ」

「瞳が虚ろ…」

やはり、とヴァレール様は言った。

「この件には、おそらく黒幕が別にいる」

「え」

「彼らは、マインドコントロールを受けた被害者だ」

ヴァレール様が言うには、彼らは何者かに操られて実行犯にされたということらしい。

「それは…」

その仮説が正しいならば、わたくしが彼らを憎むのはお門違いですわね。

恨むべきは黒幕ですわ。

「そういうことでしたの。ならば…でもやっぱり、そう割り切れませんわ。どうしてもメアリーを傷つけたのを恨んでしまいます」

「それは当然だし、仕方がないことだよ」

「ヴァレール様…」

「けれど、黒幕をどうやってあぶり出すか…」

「あ、そうですわ!」

突然大声をあげたわたくしにヴァレール様は驚くが、それどころではない。

「最近のエマ様の件、隣国の魔女の件、占い師の件。立て続けに起こる事件、わたくしがそれを解決したから、それらの黒幕がわたくしを狙ったのかも!」

「…なるほど、全ては裏で繋がっているとシャルは思うんだね?」

「ええ」

「…それはまずいな。もし本当であれば、国どころか大陸全土の問題になるかもしれない。隣国のことも踏まえるのならね」

「大変ですわ!」

けれど、マインドコントロールを受けたという彼らは何も思い出せないらしいから頼りにはならない。

どうしましょう?
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