15 / 68
お黙りになって わたくしの愛を否定することは許しませんわ
しおりを挟む
エマ様に会いに来た。
牢につながれたエマ様は、わたくしを見つけると瞳に火が灯った。
「なんで!どうしてあんたばかりが幸せになるのよ!」
「どうしてと仰いましても…わたくしは何もしていませんわ」
エマ様が何故わたくしを目の敵にするのか。
それすらわからない。
「なんでも持ってるあんたなんかがいるから、私が一番になれなかった!せっかく聖魔力を持って生まれた勝ち組だったのに、あんたのせいで負け組になった!」
不思議な考え方の人だ。
勝ち組も負け組もないだろうに。
力があるなら力なき者の力になる。
力がないなら力がある者に頼り、その代わりにお布施を払う。
ただそれだけ。
「聖女とは、それで勝ち組になれるというものではありませんよ?むしろ重責を担うことになる貧乏くじと思う人もいます」
わたくしは…選ばれたからには最善を尽くし、妃としても聖女としても最高の人になりたいけれど。
「なんなのよ!あんたのそういうところがムカつくの!」
「そういうところ?」
「ああ、ムカつく!ムカつく!カマトトぶって、良い人ぶって、そうやって何人騙してきたのよ!」
騙すとはなんのことだろう。
「どうせ王太子のことだって、本当は自分を飾るアクセサリーくらいにしか思ってないくせに!さも純情ぶって一途なフリをして!」
「お黙りになって」
思ったより冷たい声が出た。
ヒートアップしていたはずのエマ様も動きが止まる。
「わたくしの愛を否定することは許しませんわ」
「愛って…」
「ヴァレール様はわたくしの命。わたくしはこの愛のために心を捧げておりますの。さすがにもうあの日のような無茶はしないつもりですが、ヴァレール様のためなら本当にわたくしはなんでも出来る」
エマ様は、わたくしの言葉に唇を噛み締めて俯いた。
「どうして、こんな偽善者に私は負けたの…」
そのまま唇をぎりっと噛んだのだろう。
血が滲む。
だけれどわたくしは優しい言葉をかけることはしない。
ヴァレール様の妃となる以上出来る限り優しい女性でありたいが、エマ様はわたくしの誇りを…ヴァレール様への愛を貶した。
優しく接するなんて出来ない。
「…さようなら。もう二度と会うことはありませんわ」
「…くそぉおおおおおおお!!!」
元聖女候補とは思えない声を上げて、エマ様はその場にうずくまる。
わたくしはそんな彼女に背を向けて、ヴァレール様の元へ戻った。
「大丈夫だったかい?」
「はい。彼女には思うところもありましたが…なんだかスッキリしましたわ」
「それなら良かった」
優しく微笑んでくださるこの方を愛することこそが、わたくしの誇りであり幸せですわ。
牢につながれたエマ様は、わたくしを見つけると瞳に火が灯った。
「なんで!どうしてあんたばかりが幸せになるのよ!」
「どうしてと仰いましても…わたくしは何もしていませんわ」
エマ様が何故わたくしを目の敵にするのか。
それすらわからない。
「なんでも持ってるあんたなんかがいるから、私が一番になれなかった!せっかく聖魔力を持って生まれた勝ち組だったのに、あんたのせいで負け組になった!」
不思議な考え方の人だ。
勝ち組も負け組もないだろうに。
力があるなら力なき者の力になる。
力がないなら力がある者に頼り、その代わりにお布施を払う。
ただそれだけ。
「聖女とは、それで勝ち組になれるというものではありませんよ?むしろ重責を担うことになる貧乏くじと思う人もいます」
わたくしは…選ばれたからには最善を尽くし、妃としても聖女としても最高の人になりたいけれど。
「なんなのよ!あんたのそういうところがムカつくの!」
「そういうところ?」
「ああ、ムカつく!ムカつく!カマトトぶって、良い人ぶって、そうやって何人騙してきたのよ!」
騙すとはなんのことだろう。
「どうせ王太子のことだって、本当は自分を飾るアクセサリーくらいにしか思ってないくせに!さも純情ぶって一途なフリをして!」
「お黙りになって」
思ったより冷たい声が出た。
ヒートアップしていたはずのエマ様も動きが止まる。
「わたくしの愛を否定することは許しませんわ」
「愛って…」
「ヴァレール様はわたくしの命。わたくしはこの愛のために心を捧げておりますの。さすがにもうあの日のような無茶はしないつもりですが、ヴァレール様のためなら本当にわたくしはなんでも出来る」
エマ様は、わたくしの言葉に唇を噛み締めて俯いた。
「どうして、こんな偽善者に私は負けたの…」
そのまま唇をぎりっと噛んだのだろう。
血が滲む。
だけれどわたくしは優しい言葉をかけることはしない。
ヴァレール様の妃となる以上出来る限り優しい女性でありたいが、エマ様はわたくしの誇りを…ヴァレール様への愛を貶した。
優しく接するなんて出来ない。
「…さようなら。もう二度と会うことはありませんわ」
「…くそぉおおおおおおお!!!」
元聖女候補とは思えない声を上げて、エマ様はその場にうずくまる。
わたくしはそんな彼女に背を向けて、ヴァレール様の元へ戻った。
「大丈夫だったかい?」
「はい。彼女には思うところもありましたが…なんだかスッキリしましたわ」
「それなら良かった」
優しく微笑んでくださるこの方を愛することこそが、わたくしの誇りであり幸せですわ。
241
お気に入りに追加
664
あなたにおすすめの小説

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。
ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。
こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。
(本編、番外編、完結しました)

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。
金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。
前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう?
私の願い通り滅びたのだろうか?
前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。
緩い世界観の緩いお話しです。
ご都合主義です。
*タイトル変更しました。すみません。

水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います
黒木 楓
恋愛
伯爵令嬢のリリカは、婚約者である侯爵令息ラルフに「水魔法しか使えないお前との婚約を破棄する」と言われてしまう。
異世界に転生したリリカは前世の知識があり、それにより普通とは違う水魔法が使える。
そのことは婚約前に話していたけど、ラルフは隠すよう命令していた。
「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」
そう言われ続けてきたけど、これから命令を聞く必要もない。
「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」
飲んだ人を強くしたり回復する聖水を作ることができるけど、命令により家族以外は誰も知らない。
これは前世の知識がある私だけが出せる特殊な水で、婚約破棄された後は何も気にせず使えそうだ。

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

転生先は推しの婚約者のご令嬢でした
真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。
ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。
ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。
推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。
ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。
けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。
※「小説家になろう」にも掲載中です

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる