12 / 68
過保護なお兄様
しおりを挟む
「ふぅ…」
わたくしは寝室でホッと息をつく。
やっぱり一人で眠れるというのは快適ですわ。
「お兄様ったら、わたくしが幼くなっている間は要らないと言っても寝かしつけしてくるんですもの」
過保護なお兄様を思い出して思わずクスクスと笑ってしまう。
『お兄様、わたくし幼くなってももう一人で眠れますわ!』
『いや、悪い夢に蝕まれてはいけないからな。俺の妹を守るのは俺の役目だろう』
『もう、過保護過ぎますわ!』
『いいからいいから、ほら、ベッドで横になって。そう、では羊を数えるよ』
そうしてわたくしが寝付くまで、必ず手を握ってわたくしのそばを離れないお兄様。
お兄様が淡々と羊を数えて、わたくしはその優しい低い声にいつのまにか微睡んでしまっていた。
『ふふ、おやすみ。俺の可愛い妹よ』
そう言ってわたくしの額にキスをするお兄様に少し意識が浮上するけれど、また微睡んでそのまま眠る。
そんなわたくしにお兄様はクスクスと笑って、そして部屋を出る。
額へのキスは、この国では幼子から悪夢を退けるおまじない。
けれど、わたくし幼くなっていてももう十七歳ですのに。
お兄様ったら、仕方のない人。
『お前は結局、いくつになっても俺の可愛い妹だ』
『だからシャル。お願いだからもうあんな無茶はしないで』
『お前に何かあったら俺は今度こそ正気ではいられない』
幼くなって目覚めた初日に言われた、そんな脅しめいた発言もお兄様は多分本気で言っていた。
だから、これからはわたくしも無茶はできないなぁと思う。
『お前が王太子殿下を想うのならそれは止めないけれど、本当に許してよかったの?』
『いいんですの、お兄様。ヴァレール様は呪われていただけですもの!それにわたくし、許して差し上げますとヴァレール様に申し上げたんですのよ!』
『俺はお前を大切にしてくれる男を選ぶのが一番だと思うけれど』
『ヴァレール様も今、色々と反省なさってますのよ。お兄様だって見たでしょう?』
『…まあ、ね。今の王太子殿下は明らかにお前を溺愛しているね』
お兄様はある日婚約にも言及したが、あまりこの婚約をよく思っていない様子だった。
けれど元の姿に戻ったわたくしには何も言わずにいるので、認めてくださったのか様子見なのか。
いつかヴァレール様に嫁ぐ日に心から祝福してもらえるよう、わたくしも頑張らねば。
お兄様はわたくしに甘いから、ヴァレール様に愛されるわたくしを見せて差し上げればきっといつか心から祝福してくださるわ。
わたくしは寝室でホッと息をつく。
やっぱり一人で眠れるというのは快適ですわ。
「お兄様ったら、わたくしが幼くなっている間は要らないと言っても寝かしつけしてくるんですもの」
過保護なお兄様を思い出して思わずクスクスと笑ってしまう。
『お兄様、わたくし幼くなってももう一人で眠れますわ!』
『いや、悪い夢に蝕まれてはいけないからな。俺の妹を守るのは俺の役目だろう』
『もう、過保護過ぎますわ!』
『いいからいいから、ほら、ベッドで横になって。そう、では羊を数えるよ』
そうしてわたくしが寝付くまで、必ず手を握ってわたくしのそばを離れないお兄様。
お兄様が淡々と羊を数えて、わたくしはその優しい低い声にいつのまにか微睡んでしまっていた。
『ふふ、おやすみ。俺の可愛い妹よ』
そう言ってわたくしの額にキスをするお兄様に少し意識が浮上するけれど、また微睡んでそのまま眠る。
そんなわたくしにお兄様はクスクスと笑って、そして部屋を出る。
額へのキスは、この国では幼子から悪夢を退けるおまじない。
けれど、わたくし幼くなっていてももう十七歳ですのに。
お兄様ったら、仕方のない人。
『お前は結局、いくつになっても俺の可愛い妹だ』
『だからシャル。お願いだからもうあんな無茶はしないで』
『お前に何かあったら俺は今度こそ正気ではいられない』
幼くなって目覚めた初日に言われた、そんな脅しめいた発言もお兄様は多分本気で言っていた。
だから、これからはわたくしも無茶はできないなぁと思う。
『お前が王太子殿下を想うのならそれは止めないけれど、本当に許してよかったの?』
『いいんですの、お兄様。ヴァレール様は呪われていただけですもの!それにわたくし、許して差し上げますとヴァレール様に申し上げたんですのよ!』
『俺はお前を大切にしてくれる男を選ぶのが一番だと思うけれど』
『ヴァレール様も今、色々と反省なさってますのよ。お兄様だって見たでしょう?』
『…まあ、ね。今の王太子殿下は明らかにお前を溺愛しているね』
お兄様はある日婚約にも言及したが、あまりこの婚約をよく思っていない様子だった。
けれど元の姿に戻ったわたくしには何も言わずにいるので、認めてくださったのか様子見なのか。
いつかヴァレール様に嫁ぐ日に心から祝福してもらえるよう、わたくしも頑張らねば。
お兄様はわたくしに甘いから、ヴァレール様に愛されるわたくしを見せて差し上げればきっといつか心から祝福してくださるわ。
288
お気に入りに追加
665
あなたにおすすめの小説
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー

頭頂部に薔薇の棘が刺さりまして
犬野きらり
恋愛
第二王子のお茶会に参加して、どうにかアピールをしようと、王子の近くの場所を確保しようとして、転倒。
王家の薔薇に突っ込んで転んでしまった。髪の毛に引っ掛かる薔薇の枝に棘。
失態の恥ずかしさと熱と痛みで、私が寝込めば、初めましての小さき者の姿が見えるようになり…
この薔薇を育てた人は!?


【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……
ミィタソ
恋愛
伯爵家の次女——エミリア・ミーティアは、優秀な姉のマリーザと比較され、アレと呼ばれて馬鹿にされていた。
ある日のパーティで、両親に連れられて行った先で出会ったのは、アグナバル侯爵家の一人息子レオン。
そこで両親に告げられたのは、婚約という衝撃の二文字だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる