上 下
6 / 64

シャルの可愛らしさにノックダウン

しおりを挟む
今日は週に一度シャルロット嬢に会うという約束の日。

幼くなったシャルロット嬢は、記憶と知識はそのままらしい。

けれど、見た目に合わせて言動も幼くなったと聞いている。

どんな反応をされるか緊張しつつ、シャルロット嬢に会いに行く。

「ヴァレール様ぁー!」

「ああ、シャルロット嬢。走ったら危ないよ」

幼くなったシャルロット嬢は、僕を一目見て駆け寄ってきた。

シャルロット嬢はこんなにも素直な子供だっただろうか。

そういえば、僕は必要最低限の関わりしかシャルロット嬢と持っていなかったな。

立派な王になりたいからと、勉強ばかりに夢中になっていたが…もしかして、シャルロット嬢は本当は幼い頃もこうして僕と会いたかったのだろうか。

だとしたら、酷いことをしたかもしれない。

「むー、シャルって呼んでください!」

「…シャル」

「わーい!」

無邪気に笑うシャルロット嬢…シャルに、なんとも言えない気持ちになる。

思わず聞いてしまった。

「シャル、僕が好きかい?」

「はい、好きです!」

「僕は君に構ってあげなかったのに?」

「でも、ヴァレール様の頑張りはわたくし知ってますもの!」

シャルの言葉に驚いた。

「え?」

「たまにいただくお手紙で、立派な王になるため頑張っていると書いていたでしょう?なにをしたとか、なにを学んだとか。そんなヴァレール様だから好きなの!だから、構ってくれなくても大好きですわ!」

そんなことを言ってにこっと笑うシャル。

僕は、そんな幼い彼女にどうしようもなく惹かれるのを感じた。

そして、一途に自分を想ってくれていた彼女に酷いことをしたと反省した。

構ってこなかったことも、濡れ衣を着せるところだったことも。

全て取り返しがつかないことになるところだったのだ。

それを他でもない彼女がこうして助けてくれて、こうして教えてくれた。

だから、せめてこれからは彼女の献身に報いたい。

「シャル、なにか望みはあるかな?」

「じゃあ、一緒にお昼寝したい!」

「え?」

「お願い!」

そしてシャルのためにお昼寝した。

けれどそれも僕のためのおねだりだと知った。

横になるだけのつもりが、いつのまにか寝落ちしていて目が覚める。

「んん…おはよう、シャル」

「おはようございます、ヴァレール様。よく眠れましたか?」

「うん、頭がスッキリしてる」

「睡眠もお昼寝も大事ですよ!どうかご自愛なさってね」

にこっと笑うシャル。

僕の体調を気遣ってくれたようだ。

実際、シャルのことが心配で眠れなくなっていたから助かった。

「ありがとう、シャル。君はどうしてそんなにも…僕を慕ってくれるの?」

「だってわたくし、ヴァレール様に光を見たんですの」

「え?」

「国を想い民を想うヴァレール様は、この国の希望です。そんなヴァレール様の支えになりたくて…」

照れたように頬を押さえる。

僕はどうしてこの可愛らしい少女を顧みることなく自分のことばかりを優先してしまっていたのか。

「シャル」

「はい」

「これからは、君を大切にする。…ごめんね」

「ふふ、許して差し上げます!」

ああ、この子を僕は…守りたい。

今更、なのだけど。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生しましたがモブが好き放題やっていたので私の仕事はありませんでした

蔵崎とら
恋愛
権力と知識を持ったモブは、たちが悪い。そんなお話。

女騎士と文官男子は婚約して10年の月日が流れた

宮野 楓
恋愛
幼馴染のエリック・リウェンとの婚約が家同士に整えられて早10年。 リサは25の誕生日である日に誕生日プレゼントも届かず、婚約に終わりを告げる事決める。 だがエリックはリサの事を……

逃げて、追われて、捕まって (元悪役令嬢編)

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で貴族令嬢として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 *****ご報告**** 「逃げて、追われて、捕まって」連載版については、2020年 1月28日 レジーナブックス 様より書籍化しております。 **************** サクサクと読める、5000字程度の短編を書いてみました! なろうでも同じ話を投稿しております。

婚約者は私を愛していると言いますが、別の女のところに足しげく通うので、私は本当の愛を探します

早乙女 純
恋愛
 私の婚約者であるアルベルトは、私に愛しているといつも言いますが、私以外の女の元に足しげく通います。そんな男なんて信用出来るはずもないので婚約を破棄して、私は新しいヒトを探します。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

年下の彼氏には同い年の女性の方がお似合いなので、別れ話をしようと思います!

ほったげな
恋愛
私には年下の彼氏がいる。その彼氏が同い年くらいの女性と街を歩いていた。同じくらいの年の女性の方が彼には似合う。だから、私は彼に別れ話をしようと思う。

婚約者が最近流行りの断罪劇の本を読み漁っています。どうやら今夜実行に移すようですが・・・どうしましょう?

四折 柊
恋愛
 アリエルは最近婚約者の様子がおかしいことに気づく。彼は流行りの断罪劇を画策しているようで……。はたして上手くいくのか? 思いつめた彼の事情とは! 基本、両想いのほのぼのなお話。  アリエル・オルグレン公爵令嬢18歳(しっかりもの)  テオドア・マーレイ伯爵子息16歳(泣き虫)  

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

処理中です...