悪役令嬢が王太子に掛けられた魅了の呪いを解いて、そのせいで幼児化した結果

下菊みこと

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わたくしの立ち位置(ここから連載開始となります)

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「…はぁ」

ため息をつく。

わたくしは大陸一の大国、アドミラシオン王国の筆頭公爵家の娘。

厳しい父と、優しい母と、妹贔屓な兄に愛されて育った。

婚約者は王太子であるヴァレール様。

ヴァレール様は、国を想い民を想うこの国の希望そのもの。

「けれど、そんなヴァレール様は…わたくし、ヴァレール様をお救いできるのかしら」

国のため民のため頑張ってきたヴァレール様。

しかしそんなヴァレール様はある呪いを受けた。

聖女候補であるエマ様の仕業だ。

エマ様は聖魔力の使い手で、わたくしとエマ様は聖女候補同士のライバル。

わたくしも聖女候補であるから聖魔力が使えるが、魔力量はエマ様の方が上。

「ヴァレール様の呪いを解いて差し上げたいけれど…」

ヴァレール様に魅了の呪いがかかっていることがわかるのは、同じように聖魔力を持つわたくしだけ。

ヴァレール様を助けて差し上げられるのはわたくしだけ。

けれどそれは、わたくしの命を差し出すのと同じこと。

わたくしの聖魔力では、エマ様のかけた強力な呪いを解くためには命すら燃やす必要がある。

それは、わたくしにとってはとても怖いこと。

「死ぬのは怖い…だけど…」

わたくしは迷う。

もし命をかけてでもヴァレール様を守るのであれば、明日が最後のチャンスとなるだろう。

「ヴァレール様のお誕生日のパーティー。そこで大勢の目がある中やらなければ、またエマ様はヴァレール様に魅了の呪いをかけるに決まっている…」

やるなら明日。

けれど、死ぬのは怖い。

自力で解けてくれないかな、なんて都合のいいことを考えてしまう。

あるいは、他に魅了の呪いを解く手段はないだろうか。

「…そんなに都合よくは、いかないわよね」

ああ、死にたくない。

できれば、ずっとおそばでヴァレール様のご活躍を見ていたい。

…けれど、わたくしとヴァレール様のどちらが優先されるべきかなんてわかりきっている。

覚悟も決まらないまま、それでもヴァレール様を助けるためにわたくしは明日のお誕生日パーティーに向けて眠ることにした。
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