上 下
24 / 57

オプスキュリテへの想い

しおりを挟む
今日はオプスキュリテへの想いを綴ろうと思う。

彼は、孤独でした。

リトは娼婦を母に持っていました。母親の所属していた娼館から、父親はおそらく貴族か豪商。母親はとても世渡り上手な人だったようです。もし、リトが望むのならこのゴッデス家の名に賭けて必ず父親を探してみせますが、リトは父親を知りたくはないようです。恋しさは感じておらず、むしろ恨んでいる様子です。

遺品の日記を見る限り、母親はリトをとても愛していたようです。ですが、娼婦という仕事柄、昼夜逆転していたためリトとの時間を持たなかったようです。リトは、母親からの愛情を諦めていたようです。見事にお互いの想いがすれ違っていたようです。リトには大きくなったら…十四歳を過ぎたら遺品の日記を見せるつもりです。今は、見せたらきっと耐えられないでしょうから。母親からの愛情を否定することで母親が亡くなった事実をようやく受け入れられているようなので。

そんなある日、リトのところに強盗が入りました。母親は、リトをクローゼットに匿い、自分は殺されたようです。…リトを、守ってくれて本当にありがとうございます。こうなる前に、私がなにかしてあげられればよかったのですが…。残念ながらリトと会ったのはリトが母親を亡くしてから。…悲しいことです。

リトは母親の言いつけを守って、クローゼットの中でじっとしていたようです。その後、母親の遺体を見て泣いてしまったといいます。ですが、本人はなぜ自分が泣いているのかわからなかったようです。母親の愛情を否定して、自分の母親への恋しさを否定して、それでようやく自分を保っている小さな子。私は、今はわからなくていいのよと言ってあげるしか出来ません。私の無力さが、情けなくて泣きたくなります。いつか、受け入れられる歳になったら、リトと一緒に共同墓地にいければいいと思います。

そして、身寄りのなかったリトは我が孤児院、チャイルドパラダイスの最初の子供として引き取られました。

リトは最初、孤児院に対してあまり良くないイメージを持っていたようです。かなり警戒していました。まあ事実、ほとんどの孤児院では手に職をつけるためと言って強制労働を敷いたり、食事を抜いたり、暴力を振るう場合もあるようですから仕方ありません。

ですが我がチャイルドパラダイスでは、暴力もなく、一日三食おやつ付きです。調度品もきちんとしたものを用意していますし、仕事もありません。代わりに、勉強を教えています。ジェネラス神父様も優しいですし、私はチャイルドパラダイスの最初の子供であるリトを猫可愛がりしていました。

それがよくなかったのでしょうか?リトは心を開いてくれましたが、代わりに私に依存するようになりました。

でも、可愛いからつい許してしまうのです。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

私の夫と義妹が不倫していた。義弟と四人で話し合った結果…。

ほったげな
恋愛
私の夫はイケメンで侯爵である。そんな夫が自身の弟の妻と不倫していた。四人で話し合ったところ…。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される

めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」  ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!  テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。 『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。  新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。  アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。

処理中です...