妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

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お兄様と皇太子殿下が心配してくれました

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目が覚めると自室のベッドの上でした。お兄様とクリス様がベッドの横に椅子を置いて見守ってくれていたようです。エルもお兄様の膝の上にいます。

「エレナ、目が覚めた?おはよう」

「おはようございます、クリス様」

「おはよう、エレナ」

「おはようございます、お兄様」

「みゅう!」

「おはよう、エル」

お兄様に頭を撫でられます。お兄様もクリス様もどこかほっとした表情です。

「まあおはようといっても夜なのだけど…あ、今日はもう遅いから、僕もセヴラン邸に泊まっていくね」

「そうなのですね。クリス様と夜も一緒に居られるなんて嬉しいです」

「…可愛すぎる」

クリス様が顔を真っ赤にして、それを隠すように片手で覆います。

「エレナ、どこか痛いとかつらいとかないか?」

「大丈夫です、お兄様」

「ご飯は食べられそう?食欲はある?」

「んー…あんまりお腹は空いてないです」

「そっか…じゃあ、お腹が空くまでもう少しゆっくりしようか」

クリス様が優しく頭を撫でてくださいます。ほっとします。

「エレナ。改めて、今回のことは本当にごめん」

「え、クリス様は何も悪くありません!」

「いや、僕が悪いんだよ。エレナは僕の婚約者になったから狙われたのだろうに、守ってあげられなかった。ごめんね」

「そんなことありません!助けに来てくださったじゃないですか!」

上半身を乗り出してクリス様にぎゅっと抱きつきます。

「エレナ?」

「どうかご自分を責めないでください。私はクリス様が大好きなんです。クリス様には笑顔でいて欲しいです」

「…ありがとう、エレナ。愛してる」

「私もクリス様を愛しています」

クリス様に強く抱きしめ返されます。

「エレナ、もう一つ謝らないといけないことがあるんだ」

「…何でしょうか?」

「エレナに皇室の影をつける」

「…皇室の影。えっと、精鋭の方ばかりの」

「そう、それ」

何故それで謝られるのでしょうか?

「ごめんね、婚約者になる時にちょっとこっちでエレナのことを調べて。エレナが前にどんな生活を強いられていたのか知って」

「そうなのですね」

お兄様をちらりと見ます。お兄様は頷いてくれたので問題ないのでしょう。

「それで、エレナはやっと自由になれたのに…影をつけたらプライベートも何もないだろう?エレナに窮屈な思いをさせたくなくて、父上と母上にエレナに影をつけないようにお願いしていたんだ。僕がエレナを守るからって。でも、守れなかった。本当にごめんね」

「いえ、そんな!」

「だから、これからは迅速に対応できるように影をエレナにつける。窮屈な思いをさせるかもしれない。本当にごめん」

謝ってばかりのクリス様の頬にキスをします。

「言ったじゃないですか。私はクリス様が大好きなんです。クリス様には笑顔でいて欲しい。だから、謝らないでください。クリス様と一緒に居られれば、私は幸せですから。影の方が四六時中ついていたとしても、大丈夫です!」

にっこり笑えば、クリス様もようやく笑ってくださいました。

「ふふ、敵わないなぁ…好きだよ、エレナ」

「私もクリス様が大好きです!」

クリス様はもう大丈夫そうです。よかった。

「それで、エレナ」

「はい、お兄様」

「犯人が誰かわかっているのか?」

「…えっと」

わかってます。けど、言っていいものか…。

「エレナ、隠したいならそれでもいいけどそれは相手のためにはならないと思うよ」

「…クリス様。そうですよね」

言わなくてもいずれバレることでしょうし…。

「実行犯はポーラ様とリゼット様とサラ様の三人です。命令したのはオデット様だそうです」

「…なるほどね。わかった。エレナは気にせずゆっくりお休み」

「…ポーラ様とリゼット様とサラ様はオデット様に命じられて仕方がなかったんだと思います。情状酌量を求めます」

「うーん…優しさは美徳だとは思うけど。彼女達を助けるのはちょっと難しいかなぁ…まあ、エレナが望むなら減刑は求めてみるけど」

困った表情のクリス様。それでもお願いを聞いてくださいます。

「ただ、私オデット様は許せません。私に直接文句を言うなり危害を加えるなりすれば良いのに、ポーラ様達を巻き込んだのは卑劣だと思います。オデット様にこそ重い処罰を求めます」

「それはそうだね。僕の方からもこれでもかってくらい重い処罰を望むよ。だってこれ普通に殺人未遂だし。なあなあでは逃がさないよ」

殺人未遂、と聞いてぞっとします。改めて殺されかけたのだなと実感します。

「ああごめん、怖がらせたね。大丈夫。もう二度とこんなことが起きないようにオデット嬢には厳罰を求めるから。見せしめにもなるでしょ。もう誰もエレナに手を出そうと思わないようにするよ。だから大丈夫」

頭を撫でてもらいなんとか気力が回復します。うん、クリス様が大丈夫と言ってくださるのです。きっと大丈夫です!

「はい、クリス様」

「うん、素直ないい子だね。偉い偉い」

「ふふ。はい」

そんな私達の横で、お兄様は難しい顔をしていました。

「…お兄様?」

「どうしたの、マックス」

「いえ…オデット嬢はアダラール家の一人娘でしたよね。アダラール家も全力で抵抗して来そうだなと」

「あー。まあ厄介な相手だけど、頑張ってみるよ」

「お願いします」

私もクリス様もお兄様も、犯人に正しい処罰を望みます。

「みゅう?」

よくわかっていなさそうなエルは私が目覚めたことにご機嫌で飛び回っていましたが、重い空気に気付いたのか気付いていないのか私の頭の上に乗っかってきました。ちょっと重いけど可愛いです。
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