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皇帝陛下と皇后陛下が一緒にお茶でもと誘ってくださいました
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今日も今日とて先生から皇太子妃教育を受けます。先生の授業はとても楽しくて、内容がするすると頭に入ってきます。そして、いつも休み時間や帰り際にクリス様とお茶をしたり出来るので、私としては幸せしかありません。
今日もクリス様が来てくださるかなと楽しみにしていたのですが…。
「失礼するよ。私達の可愛い〝娘〟は勉強を頑張っているかな?」
「まあまあ!絵姿は見たことがあるけれど、とっても可愛らしい子ですね。母はクリスが素敵なお嬢さんを連れてきて、とても嬉しいです!」
「皇帝陛下、皇后陛下!?」
先生も両陛下が来ると聞いていなかったようで、慌てて頭を下げます。私も先生に続きます。
「ああ、いいんだよ。そんなにかしこまらないでおくれ。ほら、二人とも顔を上げて。私達は可愛い将来の娘の様子を見に来ただけなんだ。はやく私達に紹介しなさいとクリスに言っても、やきもち妬きなあの子はなかなか紹介してくれないからね。私達の方から来てしまえと思って」
優しく微笑む皇帝陛下はお噂通りとても穏やかなお方です。柔らかな雰囲気に心を包まれるような錯覚を覚えるほどとても親しみやすいお方です。それでありながら威厳を兼ね備える、まさに皇帝の中の皇帝というイメージです。将来はクリス様も皇帝陛下のような素敵な皇帝になられるのでしょうね。そしてその隣には私が立つことになります。より一層頑張らないとですね!
「私の可愛い将来の娘は、とても聡明だと聞きます。どれほどのものなのかしら?先生、教えてくださる?」
「エレオノール様はまさに天才です!ほとんど全ての分野において十分すぎるほど教養があります!魔法学だけは不思議なほどに知識がありませんが…まあ、皇太子妃教育には必要の無いものですので省いています」
「あらまあ。私は可愛らしい優秀な娘を持てるのね。母は嬉しいですよ」
手を胸の前で組んでキラキラした瞳で私を見つめる皇后陛下は、皇帝陛下のように穏やかなのですがとても少女のような雰囲気を感じます。普通ここまでキラキラした瞳で見つめられるとなんだか少し居心地が悪くなるものだと思うのですが、皇后陛下の独特の雰囲気に呑まれてそれもありません。むしろ純粋な好意を向けられて心地いいくらいです。
「ああ、私達ばかり話してごめんね。エレオノール嬢、なんと呼べばいいかな?もしよければクリスのようにエレナと呼んでもいいかい?」
「もちろんです!」
「エレナ、一緒にお茶でもいかがですか?母はエレナのことを深く知りたいのです。可愛い娘ですもの。仲良くなりたいです」
微笑む両陛下に精一杯の笑顔で応える。
「喜んで」
「まあ、嬉しい。あなた、エレナが受け入れてくれましたよ。早速ガゼボに行きましょう」
「そうだね。クリスに見つかる前に楽しもうか。あの子はやきもち妬きだから、すぐにエレナを連れ去られてしまうからね」
クリス様はそんなにやきもち妬きなのでしょうか?ともかく、私と両陛下はガゼボに移動しました。
「エレナ。母はエレナの好みがわからないので、オススメのお茶を用意しました。好みに合うと良いのですが…」
「いただきます。皇后陛下、ありがとうございます」
紅茶を一口。まるで花が咲くような芳しい香り。
「すごい…芳しいですね」
「気に入りましたか?」
「もちろんです、ありがとうございます!」
「それは良かった。クリスもよく好んで飲むものなのですよ」
「そうなんですね…」
知らないことがまだまだあるなぁと思います。少しずつでもいいから、クリス様のことをもっと知りたいです。
「クリスとは仲良くしているかい?」
「はい、とても優しくしてくださいますから。私もクリス様のお力になれればと思います」
「それは良かった。素晴らしい心掛けだね。お互いに支え合ってこその夫婦だ。これからもその気持ちを持ち続けられるといいね」
「はい!」
「そうだ、母はエレナのためにクッキーを焼いてみたのです。食べてみてくださいますか?」
皇帝陛下は美味しそうなクッキーを差し出してくださいます。
「いただきます、ありがとうございます」
一口ぱくり。…美味しい!
「すごく美味しいです、皇后陛下」
「ふふふ。母はクリスが幼い頃、よく手作りのお菓子を用意していたのですよ」
「すごいです!」
私も将来子供にそうしてあげたいなぁ。
「そうそう。私からもエレナにプレゼントがあるんだよ」
皇帝陛下が懐から箱を取り出します。
「ありがとうございます、皇帝陛下。これは何ですか?」
「これはね、もし万が一無理矢理魔力封じの魔道具を使われた時のためのお守りだよ。魔力を外に出せず魔力膨張症に襲われる可能性があるから、その時はこの箱に入れてある薬品を飲むんだ。これは使い方次第で毒にも薬にもなる。平常時に飲むと魔力欠乏症になるけれど、魔力膨張症に襲われた時ならだいぶ楽になるはずだよ」
皇帝陛下が私の両手を握りしめます。
「私達は常に誰かに命を狙われる立場にある。滅多なことはなかなか起きないけれどね。だから、肌身離さず持ち歩いておきなさい。私達はクリスを笑顔でいさせてくれる君を心から歓迎している。どうか、長生きしなさい」
「…はい、皇帝陛下!」
こんなにも歓迎していただけて、幸せです。
今日もクリス様が来てくださるかなと楽しみにしていたのですが…。
「失礼するよ。私達の可愛い〝娘〟は勉強を頑張っているかな?」
「まあまあ!絵姿は見たことがあるけれど、とっても可愛らしい子ですね。母はクリスが素敵なお嬢さんを連れてきて、とても嬉しいです!」
「皇帝陛下、皇后陛下!?」
先生も両陛下が来ると聞いていなかったようで、慌てて頭を下げます。私も先生に続きます。
「ああ、いいんだよ。そんなにかしこまらないでおくれ。ほら、二人とも顔を上げて。私達は可愛い将来の娘の様子を見に来ただけなんだ。はやく私達に紹介しなさいとクリスに言っても、やきもち妬きなあの子はなかなか紹介してくれないからね。私達の方から来てしまえと思って」
優しく微笑む皇帝陛下はお噂通りとても穏やかなお方です。柔らかな雰囲気に心を包まれるような錯覚を覚えるほどとても親しみやすいお方です。それでありながら威厳を兼ね備える、まさに皇帝の中の皇帝というイメージです。将来はクリス様も皇帝陛下のような素敵な皇帝になられるのでしょうね。そしてその隣には私が立つことになります。より一層頑張らないとですね!
「私の可愛い将来の娘は、とても聡明だと聞きます。どれほどのものなのかしら?先生、教えてくださる?」
「エレオノール様はまさに天才です!ほとんど全ての分野において十分すぎるほど教養があります!魔法学だけは不思議なほどに知識がありませんが…まあ、皇太子妃教育には必要の無いものですので省いています」
「あらまあ。私は可愛らしい優秀な娘を持てるのね。母は嬉しいですよ」
手を胸の前で組んでキラキラした瞳で私を見つめる皇后陛下は、皇帝陛下のように穏やかなのですがとても少女のような雰囲気を感じます。普通ここまでキラキラした瞳で見つめられるとなんだか少し居心地が悪くなるものだと思うのですが、皇后陛下の独特の雰囲気に呑まれてそれもありません。むしろ純粋な好意を向けられて心地いいくらいです。
「ああ、私達ばかり話してごめんね。エレオノール嬢、なんと呼べばいいかな?もしよければクリスのようにエレナと呼んでもいいかい?」
「もちろんです!」
「エレナ、一緒にお茶でもいかがですか?母はエレナのことを深く知りたいのです。可愛い娘ですもの。仲良くなりたいです」
微笑む両陛下に精一杯の笑顔で応える。
「喜んで」
「まあ、嬉しい。あなた、エレナが受け入れてくれましたよ。早速ガゼボに行きましょう」
「そうだね。クリスに見つかる前に楽しもうか。あの子はやきもち妬きだから、すぐにエレナを連れ去られてしまうからね」
クリス様はそんなにやきもち妬きなのでしょうか?ともかく、私と両陛下はガゼボに移動しました。
「エレナ。母はエレナの好みがわからないので、オススメのお茶を用意しました。好みに合うと良いのですが…」
「いただきます。皇后陛下、ありがとうございます」
紅茶を一口。まるで花が咲くような芳しい香り。
「すごい…芳しいですね」
「気に入りましたか?」
「もちろんです、ありがとうございます!」
「それは良かった。クリスもよく好んで飲むものなのですよ」
「そうなんですね…」
知らないことがまだまだあるなぁと思います。少しずつでもいいから、クリス様のことをもっと知りたいです。
「クリスとは仲良くしているかい?」
「はい、とても優しくしてくださいますから。私もクリス様のお力になれればと思います」
「それは良かった。素晴らしい心掛けだね。お互いに支え合ってこその夫婦だ。これからもその気持ちを持ち続けられるといいね」
「はい!」
「そうだ、母はエレナのためにクッキーを焼いてみたのです。食べてみてくださいますか?」
皇帝陛下は美味しそうなクッキーを差し出してくださいます。
「いただきます、ありがとうございます」
一口ぱくり。…美味しい!
「すごく美味しいです、皇后陛下」
「ふふふ。母はクリスが幼い頃、よく手作りのお菓子を用意していたのですよ」
「すごいです!」
私も将来子供にそうしてあげたいなぁ。
「そうそう。私からもエレナにプレゼントがあるんだよ」
皇帝陛下が懐から箱を取り出します。
「ありがとうございます、皇帝陛下。これは何ですか?」
「これはね、もし万が一無理矢理魔力封じの魔道具を使われた時のためのお守りだよ。魔力を外に出せず魔力膨張症に襲われる可能性があるから、その時はこの箱に入れてある薬品を飲むんだ。これは使い方次第で毒にも薬にもなる。平常時に飲むと魔力欠乏症になるけれど、魔力膨張症に襲われた時ならだいぶ楽になるはずだよ」
皇帝陛下が私の両手を握りしめます。
「私達は常に誰かに命を狙われる立場にある。滅多なことはなかなか起きないけれどね。だから、肌身離さず持ち歩いておきなさい。私達はクリスを笑顔でいさせてくれる君を心から歓迎している。どうか、長生きしなさい」
「…はい、皇帝陛下!」
こんなにも歓迎していただけて、幸せです。
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