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ナタリーに相談してみます
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暗い気分のまま家に帰ります。家に帰るとエルが私に向かって猛烈なスピードで飛んできました。慌てて受け止めます。結構な衝撃でしたが、可愛いので問題ありません。
「おかえりなさいませ、お嬢様!今日も学園は楽しかったですか?お友達の皆様はお元気でしたか?」
「…クリス様もティナ様もジェシー様もお元気でした。安心しました。学園で過ごす時間は、今までと変わらずとても楽しいものです。でも、ナタリー。私は悪い子なのでしょうか…」
「ええええええ!?どうしたんですかお嬢様!?誰かに何か言われましたか?何かされました?」
「違うんですナタリー…全部私が悪くって…」
「と、とりあえずお部屋に戻りましょう!蜂蜜たっぷりのホットミルクをお持ちしますから、少しだけでも飲みませんか?」
「…はい」
「甘ーいホットミルクに癒されながら、たくさんお話してください。案外今とは別の答えが見つかるかもしれませんよ」
「ありがとう、ナタリー」
部屋に戻って、ナタリーに手伝ってもらって制服から着替える。その間に他の使用人がホットミルクを持ってきてくれた。一口飲むと優しい甘さが広がって、心が落ち着きます。
「それで、何があったんですか?」
「えっと…学園で今度ダンスパーティーがあるでしょう?」
「はい、存じ上げております」
「そのダンスパーティーのパートナー、私はまだ決まっていなくて」
「だ、大丈夫ですよ!パートナーが決まっていなくても参加できるそうですから!」
「ありがとう。でも、そこは一人でもいいやって思って気にしていなくて…お友達と楽しめればそれでいいし…」
「そ、そうなのですね…」
…自分で言っててちょっと悲しいです。
「それで、ダンスパーティーのパートナーとして誰を誘うか、クリス様に本当になんとなく聞いてみたんです」
「…なんとなくですか?」
「はい。そしたらクリス様は誰かは言えないけれど好きな子を誘うって仰られて…」
「…ふむぅ。それでお嬢様はどう感じられたのですか?」
「なんだかすごく辛かったんです。悲しくて、苦しくて、胸を刺すような痛みを感じて。クリス様は大切なお友達なのに、その恋を応援しなきゃいけないのに、私…すごく嫌な気持ちになってしまって…応援なんて、出来そうになくて…」
「…うーん、なるほど。お嬢様。本当に気付いてらっしゃらないのですか?」
「え」
ナタリーは真剣な表情で私を見つめて来ます。
「お嬢様。自分で自分の気持ちに蓋をしていませんか?考えないようにしていませんか?」
「何を…」
「お嬢様。お嬢様は以前のお嬢様とはもう違います。政略結婚のためだけに生かされていた、それだけに価値を見出されていたお嬢様ではありません。誰からも愛されて、必要とされる。それが今のお嬢様です。旦那様は、政略結婚よりもお嬢様の気持ちを尊重した恋愛結婚を望まれています。だから、ご自分の気持ちに正直になってもいいのですよ、お嬢様」
ナタリーの言葉がじわじわと心に染み込みます。
「自分の…気持ち…?」
「お嬢様はクリス様のことをどう思いますか?」
「大切なお友達…」
「それ以外で、どんなことでも構いません」
「優しくて、かっこよくて。一緒にいると温かくて、甘やかしてくださって、ほわほわして、頭を撫でてもらえるのが大好きで」
「はい」
「笑顔が素敵で、ティナ様とジェシー様に対するちょっと砕けた感じの付き合い方が少し羨ましくて、スキンシップ恐怖症を治してくださった方で、甘え方を教えてくださった方で、あの声が好きで…」
「はい」
「好き…そう、好きなんです。好き、好き…好き」
ああ、やっと気付いた。私は、クリス様が多分…。
「好きになってしまいました…」
涙がぼろぼろと溢れます。こんなに温かな気持ちを知れて幸せで、でもクリス様には好きな方がいらっしゃる。私の思いは届くはずもない。こんなにも幸せで、こんなにも辛い。ああ、ジェシー様の仰られていた〝その胸の痛みは、幸せなものに変わる〟とは、こういうことだったのですね。たしかに、これはすごく幸せです。でも、だからこそすごくすごく辛い。でも。
「気付けて良かった…」
…明日。クリス様をダンスパーティーのパートナーとしてお誘いしましょう。当たって砕けろです。そして、今度こそお友達としてクリス様の恋を応援しましょう。だから今だけは、この気持ちを大切にさせてください。この気持ちを伝えさせてください。それだけで、私は幸せなのです。
「お嬢様。もう大丈夫ですか?」
「はい。ありがとう、ナタリー。見ないようにしていた、大切なことに気付けました」
「お嬢様。ナタリーはいつだってお嬢様の味方ですからね!」
「はい。大好きです、ナタリー」
「私もお嬢様が大好きです!」
甘いホットミルクを飲み干して、この甘い気持ちを確かめる。甘くて苦い、初めての恋の味。これはきっと、たとえ当たって砕けても、生涯私の宝物になるのでしょう。
「おかえりなさいませ、お嬢様!今日も学園は楽しかったですか?お友達の皆様はお元気でしたか?」
「…クリス様もティナ様もジェシー様もお元気でした。安心しました。学園で過ごす時間は、今までと変わらずとても楽しいものです。でも、ナタリー。私は悪い子なのでしょうか…」
「ええええええ!?どうしたんですかお嬢様!?誰かに何か言われましたか?何かされました?」
「違うんですナタリー…全部私が悪くって…」
「と、とりあえずお部屋に戻りましょう!蜂蜜たっぷりのホットミルクをお持ちしますから、少しだけでも飲みませんか?」
「…はい」
「甘ーいホットミルクに癒されながら、たくさんお話してください。案外今とは別の答えが見つかるかもしれませんよ」
「ありがとう、ナタリー」
部屋に戻って、ナタリーに手伝ってもらって制服から着替える。その間に他の使用人がホットミルクを持ってきてくれた。一口飲むと優しい甘さが広がって、心が落ち着きます。
「それで、何があったんですか?」
「えっと…学園で今度ダンスパーティーがあるでしょう?」
「はい、存じ上げております」
「そのダンスパーティーのパートナー、私はまだ決まっていなくて」
「だ、大丈夫ですよ!パートナーが決まっていなくても参加できるそうですから!」
「ありがとう。でも、そこは一人でもいいやって思って気にしていなくて…お友達と楽しめればそれでいいし…」
「そ、そうなのですね…」
…自分で言っててちょっと悲しいです。
「それで、ダンスパーティーのパートナーとして誰を誘うか、クリス様に本当になんとなく聞いてみたんです」
「…なんとなくですか?」
「はい。そしたらクリス様は誰かは言えないけれど好きな子を誘うって仰られて…」
「…ふむぅ。それでお嬢様はどう感じられたのですか?」
「なんだかすごく辛かったんです。悲しくて、苦しくて、胸を刺すような痛みを感じて。クリス様は大切なお友達なのに、その恋を応援しなきゃいけないのに、私…すごく嫌な気持ちになってしまって…応援なんて、出来そうになくて…」
「…うーん、なるほど。お嬢様。本当に気付いてらっしゃらないのですか?」
「え」
ナタリーは真剣な表情で私を見つめて来ます。
「お嬢様。自分で自分の気持ちに蓋をしていませんか?考えないようにしていませんか?」
「何を…」
「お嬢様。お嬢様は以前のお嬢様とはもう違います。政略結婚のためだけに生かされていた、それだけに価値を見出されていたお嬢様ではありません。誰からも愛されて、必要とされる。それが今のお嬢様です。旦那様は、政略結婚よりもお嬢様の気持ちを尊重した恋愛結婚を望まれています。だから、ご自分の気持ちに正直になってもいいのですよ、お嬢様」
ナタリーの言葉がじわじわと心に染み込みます。
「自分の…気持ち…?」
「お嬢様はクリス様のことをどう思いますか?」
「大切なお友達…」
「それ以外で、どんなことでも構いません」
「優しくて、かっこよくて。一緒にいると温かくて、甘やかしてくださって、ほわほわして、頭を撫でてもらえるのが大好きで」
「はい」
「笑顔が素敵で、ティナ様とジェシー様に対するちょっと砕けた感じの付き合い方が少し羨ましくて、スキンシップ恐怖症を治してくださった方で、甘え方を教えてくださった方で、あの声が好きで…」
「はい」
「好き…そう、好きなんです。好き、好き…好き」
ああ、やっと気付いた。私は、クリス様が多分…。
「好きになってしまいました…」
涙がぼろぼろと溢れます。こんなに温かな気持ちを知れて幸せで、でもクリス様には好きな方がいらっしゃる。私の思いは届くはずもない。こんなにも幸せで、こんなにも辛い。ああ、ジェシー様の仰られていた〝その胸の痛みは、幸せなものに変わる〟とは、こういうことだったのですね。たしかに、これはすごく幸せです。でも、だからこそすごくすごく辛い。でも。
「気付けて良かった…」
…明日。クリス様をダンスパーティーのパートナーとしてお誘いしましょう。当たって砕けろです。そして、今度こそお友達としてクリス様の恋を応援しましょう。だから今だけは、この気持ちを大切にさせてください。この気持ちを伝えさせてください。それだけで、私は幸せなのです。
「お嬢様。もう大丈夫ですか?」
「はい。ありがとう、ナタリー。見ないようにしていた、大切なことに気付けました」
「お嬢様。ナタリーはいつだってお嬢様の味方ですからね!」
「はい。大好きです、ナタリー」
「私もお嬢様が大好きです!」
甘いホットミルクを飲み干して、この甘い気持ちを確かめる。甘くて苦い、初めての恋の味。これはきっと、たとえ当たって砕けても、生涯私の宝物になるのでしょう。
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