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水害

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雨が降りました。土砂降りです。しかもずっと降っています。今日は臨時休校になりました。お友達に会えなくて寂しいです。そして、領民の皆様が心配です。我が家は安全な場所にしっかりと立っているから、絶対とは言えないけれど比較的安全です。

でも、領民達は?土砂災害は大丈夫でしょうか?洪水は大丈夫でしょうか?雨による事故は?

考えれば考えるほど不安になります。でも、私がウジウジ考えていても仕方がないのもわかっています。今は対応に追われるお兄様の邪魔にならないように、心の中で応援して静かに過ごすしかありません。

そう思っていたのですが。

「セヴラン公爵様!息子が!息子がまだ家にいるんです!救助に行かせてください!」

仕事で家を空けていた夫婦が避難所から我が家に突撃してきたようです。土下座する夫婦にお兄様は言います。

「駄目だ」

「公爵様、どうか!」

「俺が行く」

「…え?」

「領民は、俺の…私の宝だ。そして、子供は国の宝。それに…俺が出る方が確実にお前達親子は助かるぞ」

「…ありがとうございます!」

「ルーヴ!」

「アオーン!」

お兄様が大きな声で呼ぶと、狼が現れました。

「エレナ。後でちゃんと紹介するが、この子は私の使い魔だ。ルーヴという。今からルーヴと出てくるから、留守は頼む」

「…はい、お兄様。ルーヴ、お兄様を守ってね」

「わふっ!」

ルーヴのその鋭い瞳は、決意を固めたものです。少し、安心します。

「セバスチャン。私の留守中、各指示は私の名前の元にお前が出せ。任せたぞ」

「かしこまりました。お早いご帰宅をお待ちしております」

「そう急かすな、救助作業だぞ。…行ってくる」

「お兄様!」

お兄様に抱きつく。

「大好きです。早く帰ってきてくださいね」

「お前まで急かすのか?…まあ、任せろ」

お兄様から私のおでこにキスをされ、私も背伸びをしてお兄様の頬にキスをします。

「公爵様!これ、私達の家への地図です!お役に立ちますか!?」

「…ああ。必ず役に立つ。任せろ」

お兄様は、出発されました。
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