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お兄様から貴族の子女の通う学園に通ってみないかとお誘いを受ける

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あのお兄様からの多分野にわたるテストを受けてから数日。特に何事もなくお兄様との日々を送って心が癒されていく中で、リュシアン学園のパンフレットがお兄様に届いたそうです。何に使うのでしょうか?

リュシアン学園とは、私でも知っている知識としては…そうですね、まず貴族の子女の通う学園となります。ただし、貴族の子女なら誰でも入れる訳ではないのです。厳しい入学試験があり、それに受かった者だけが入れるハイレベルな学園なのです。逆に言えば、入れたら将来は約束されたも同然。箔が付きます。最強レベルで。

学園内では全ての生徒が身分に依らず平等とされます。基本的に男子が多く、特に次男や三男など爵位を持てないことが決まっている生徒はやる気が違うそうです。女子生徒は和気藹々の雰囲気で学園生活を楽しみつつ、将来貴族に嫁いだらもう楽しめない研究やら仕事やらに心血を注ぐといいます。

とても楽しそうだなぁと憧れていましたが、そんな優秀な方々の集まる場所に私が行くなど場違いですし、そもそも入学試験に受かるはずもありません。無理だと諦めもつきました。

「お兄様、そのパンフレットはいかがなさるのでしょうか?」

「エレナに渡そうと思って用意させたんだ。受け取ってくれるか?」

「えっ…お兄様、もしかして私がリュシアン学園に憧れているのを知ってパンフレットを取り寄せてくださったのですか?」

お兄様はエスパーなのでしょうか?

「いや、これはエレナをリュシアン学園に入れるために取り寄せたんだよ」

「…今なんと?」

「エレナの実力なら簡単に入学出来る。入学試験は厳しいし、まして編入試験ともなるとさらに厳しい。けれど、エレナなら大丈夫だ。エレナはさっきリュシアン学園に憧れていると言ったな?…挑戦してみないか?」

「…でも」

私なんかが受かるはずもないし、もし受かったとしても浮いてしまいます。私、研究にも興味がないし、お仕事も出来ません。学園生活自体はお友達が出来れば楽しめそうですが、そのお友達を作るのも私には困難です。出来損ないだから。

「…エレナ。私はエレナの幸せを一番に考えたい。だから、行きたくないならそれでも良いんだ。けれど、今行かずに後悔するより、行ってみて無理だったら逃げ帰ってくるとかでも良いんじゃないか?」

「え…」

「大丈夫。エレナの逃げ帰って来れる場所はここにある。最高なことにここからリュシアン学園は馬車で通える距離だ。寮生活を送る必要もない。いつでも逃げられるんだよ」

「お兄様…私…」

「ああ」

「チャレンジしてみたいです」

するりと言葉が零れ落ちました。お兄様は満足そうににこりと微笑んで抱きしめてくれました。またびくりと震えてしまったけれど、今日は抱きしめ返すことが出来ました。大きな進展だと思っていいですよね?
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