妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

文字の大きさ
上 下
5 / 103

家庭教師と使用人達の末路

しおりを挟む
「なに!?私が解雇!?馬鹿な!あの愚鈍なお嬢様を立派な公爵令嬢に育て上げたのはこの私だぞ!!!」

家庭教師の男が声を荒らげる。が、私は冷たい目を向けるだけだ。

「お嬢様を愚鈍な、と仰いましたな。撤回していただきたい」

私の侍従…私がどんなに妹を大切に思うか一番知っている私の片腕…が私がキレそうになっているのを察して口を開く。

「本当の事を言って何が悪い!あの出来の悪い活発なだけのじゃじゃ馬娘を従順で大人しい淑女に変えたのはこの私だ!功績を認められて重宝されるならともかく、何故解雇など!」

「…決めた。手切れ金も紹介状も渡さん。とっとと立ち去れ」

「なっ…!そんな横暴、いくら公爵家とはいえ許されるわけが…!」

「なら訴えればいいだろう。裁判所に妹への暴力の証拠でも渡してやろうか?困るのはどっちだろうな。言っておくが、本当ならそれこそ治安部隊に貴様を『たかが男爵家の三男風情が公爵家の令嬢に家庭教師という立場を利用して暴力を振るった』と訴えてやってもいいんだぞ。どうする?」

「…っ!!!」

まあ、公爵家の令嬢の家庭教師として抜擢されたにも関わらず、辞めるときに紹介状すら書いてもらえなかった時点でもう、家庭教師としてはやっていけないだろうけどな。…むしろ、例え他の仕事をしようとしても、この国で生計を立てられるかも怪しくなるが。

「…かしこまり、ました…申し訳、ありませんでした…すぐに荷物をまとめますので、何卒治安部隊にだけは…」

「さっさと荷造りを終わらせて出て行け。…それと、もし妹のことで変な噂を流したら殺す。覚悟しておけ」

「…は、はい」

ああ、気に食わない。だが、この男はもう終わった。この国で生きていくのも難しくなるはずだ。あと、この男の実家である男爵家にも苦情の手紙を送りつけてやる。それだけでも男爵家への制裁としては充分な効果が出るだろう。誰がどこで見ているか分からないのが貴族社会、だからな。

…いや、実際にはこの男を別邸に閉じ込めて毎日鞭打ちくらいはしたかったのだが、腹心の部下に止められてしまったので仕方なくこんな甘い処分にしているのだが。

あと、その他使用人達にも紹介状無しで解雇、手切れ金も無し、もし妹のことで変な噂を流したらどんな手を使っても殺すと脅しをかけるのも忘れなかった。みんなもうこの国では生きて行けまい。もちろん実家にも苦情を入れるのも忘れない。これで実家にも頼れまい。ざまぁみろ。

…本当はもっと痛めつけてやりたかったしなんなら拷問にかけたかったけれど。

とりあえず、この処遇についてはエレナの耳に入れる気はない。あの子は別邸での記憶なんて早々に忘れて幸せになるべきだし、優しい子だから知ってしまえば心配するに決まってる。それはダメだ。だから秘密。可哀想な、可愛いエレナは私が守るのだ。いつか、可哀想じゃなくなるように。世界一幸せな、可愛いエレナにするために。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

妹よ。そんなにも、おろかとは思いませんでした

絹乃
恋愛
意地の悪い妹モニカは、おとなしく優しい姉のクリスタからすべてを奪った。婚約者も、その家すらも。屋敷を追いだされて路頭に迷うクリスタを救ってくれたのは、幼いころにクリスタが憧れていた騎士のジークだった。傲慢なモニカは、姉から奪った婚約者のデニスに裏切られるとも知らずに落ちぶれていく。※11話あたりから、主人公が救われます。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

処理中です...