1 / 1
紆余曲折の末幸せを掴んだ
しおりを挟む
「このアホがぁ!!!」
「グハァっ…!!!」
私はとある辺境伯家の五女。
今、婚約者となったばかりの第三王子をぶん殴ったところ。
「だ、第三王子殿下!」
使用人達に駆け寄られる第三王子。当の本人はぽかんとしてる。間抜けめ。
「誰が!いつ!あんたが好きだなんて言った!私は一言もそんなこと言ってないわよ!」
「え、だ、だって…」
「私があんたを拒絶しなかったのは!お嬢様が!あんたの婚約者だったマリアお嬢様が!あんたが私を気に入っているようだから仲良くしてあげてとおっしゃったからよ!そのマリアお嬢様のご好意をよくも無駄にっ…」
マリアお嬢様は、公爵家のおっとりとしたお姫様。人の善性を信じ、人々に尽くす優しいお方。我が辺境伯家の次男が大規模な魔獣との戦闘で大怪我をした際も、無償で類い稀なる治癒魔法を施してくださった。その時から私はマリアお嬢様を信奉している。
マリアお嬢様は優しい。そのお力と性格から、まるで伝説上の聖女のようだと評される。
そのマリアお嬢様の愛を一身に受けたはずのこの男は!こともあろうに!マリアお嬢様に嫉妬して蔑ろにした挙句!辺境伯家のただの小娘を愛してると宣いマリアお嬢様との婚約を一方的に破棄して!そして今!
私に求婚してきたのだ!!!
「私はあんたみたいな恩知らず、死んでも受け入れないわ!」
「恩知らず…?」
「…あんた、まさか聞かされてないの?有名な話なのに?…あんたは昔病弱だった。せっかく生まれてきたのに、もって十年の命だった。そこをマリアお嬢様が、治癒の力でそこまで回復させた。マリアお嬢様とあんたの婚約は、それが縁だったのよ」
「え…?マリアが勝手に言ってた嘘じゃなく?」
「…はぁ!?本当に、本当に信じられない!ぶちのめしてやる!」
私は止める使用人たちごとなぎ倒して、第三王子をその内面に似合わない美しい顔面が崩壊するまで殴り倒し続けた。
結果、第三王子は全ての歯が折れ顔がパンパンに腫れ上がり恐ろしい形相になった。
結果から言うと、私はお咎めなしになった。
第一に、あのボンクラが勝手に公爵家の娘…しかも恩人との婚約を破棄したこと。
第二に、私がマリアお嬢様を信奉しているのは有名な話で王家の一族にすらさもありなんと思われたこと。
第三に、王家に貸しのあるマリアお嬢様が私のことを庇ってくださったこと。
そのおかげで第三王子を殴ったことを無罪放免にしてもらえた。
「一方で、第三王子殿下は治癒もろくにされないまま放逐されたけれどね」
そう言って笑うのはマリアお嬢様。
その表情はどこか憑き物が落ちたよう。
「彼の方に捨てられた時はこの世の終わりのように感じていたけれど、貴女が仕返しをしてくれてスカッとしたわ。目も覚めた。百年の恋もね」
そう笑うマリアお嬢様の表情は明るい。
「それに、わたくしにとって本当に必要なのが誰がわかったわ」
そうして、マリアお嬢様は私の左手を取ると薬指に指輪をはめた。
「この国では、貴族同士のアレコレで同性婚も認められているわ。どうか、わたくしと結婚して」
こうして、紆余曲折はあったが私は幸せを掴んだらしい。
「グハァっ…!!!」
私はとある辺境伯家の五女。
今、婚約者となったばかりの第三王子をぶん殴ったところ。
「だ、第三王子殿下!」
使用人達に駆け寄られる第三王子。当の本人はぽかんとしてる。間抜けめ。
「誰が!いつ!あんたが好きだなんて言った!私は一言もそんなこと言ってないわよ!」
「え、だ、だって…」
「私があんたを拒絶しなかったのは!お嬢様が!あんたの婚約者だったマリアお嬢様が!あんたが私を気に入っているようだから仲良くしてあげてとおっしゃったからよ!そのマリアお嬢様のご好意をよくも無駄にっ…」
マリアお嬢様は、公爵家のおっとりとしたお姫様。人の善性を信じ、人々に尽くす優しいお方。我が辺境伯家の次男が大規模な魔獣との戦闘で大怪我をした際も、無償で類い稀なる治癒魔法を施してくださった。その時から私はマリアお嬢様を信奉している。
マリアお嬢様は優しい。そのお力と性格から、まるで伝説上の聖女のようだと評される。
そのマリアお嬢様の愛を一身に受けたはずのこの男は!こともあろうに!マリアお嬢様に嫉妬して蔑ろにした挙句!辺境伯家のただの小娘を愛してると宣いマリアお嬢様との婚約を一方的に破棄して!そして今!
私に求婚してきたのだ!!!
「私はあんたみたいな恩知らず、死んでも受け入れないわ!」
「恩知らず…?」
「…あんた、まさか聞かされてないの?有名な話なのに?…あんたは昔病弱だった。せっかく生まれてきたのに、もって十年の命だった。そこをマリアお嬢様が、治癒の力でそこまで回復させた。マリアお嬢様とあんたの婚約は、それが縁だったのよ」
「え…?マリアが勝手に言ってた嘘じゃなく?」
「…はぁ!?本当に、本当に信じられない!ぶちのめしてやる!」
私は止める使用人たちごとなぎ倒して、第三王子をその内面に似合わない美しい顔面が崩壊するまで殴り倒し続けた。
結果、第三王子は全ての歯が折れ顔がパンパンに腫れ上がり恐ろしい形相になった。
結果から言うと、私はお咎めなしになった。
第一に、あのボンクラが勝手に公爵家の娘…しかも恩人との婚約を破棄したこと。
第二に、私がマリアお嬢様を信奉しているのは有名な話で王家の一族にすらさもありなんと思われたこと。
第三に、王家に貸しのあるマリアお嬢様が私のことを庇ってくださったこと。
そのおかげで第三王子を殴ったことを無罪放免にしてもらえた。
「一方で、第三王子殿下は治癒もろくにされないまま放逐されたけれどね」
そう言って笑うのはマリアお嬢様。
その表情はどこか憑き物が落ちたよう。
「彼の方に捨てられた時はこの世の終わりのように感じていたけれど、貴女が仕返しをしてくれてスカッとしたわ。目も覚めた。百年の恋もね」
そう笑うマリアお嬢様の表情は明るい。
「それに、わたくしにとって本当に必要なのが誰がわかったわ」
そうして、マリアお嬢様は私の左手を取ると薬指に指輪をはめた。
「この国では、貴族同士のアレコレで同性婚も認められているわ。どうか、わたくしと結婚して」
こうして、紆余曲折はあったが私は幸せを掴んだらしい。
145
お気に入りに追加
72
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説


トリスタン
下菊みこと
恋愛
やべぇお話、ガチの閲覧注意。登場人物やべぇの揃ってます。なんでも許してくださる方だけどうぞ…。
彼は妻に別れを告げる決意をする。愛する人のお腹に、新しい命が宿っているから。一方妻は覚悟を決める。愛する我が子を取り戻す覚悟を。
小説家になろう様でも投稿しています。

傷つけられた分、稼ぎましょう
下菊みこと
恋愛
裏切られたので家出したお話。
その後それをバネに稼いでプラマイプラスに持っていくお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
ざまぁは添えるだけ。
御都合主義のハッピーエンド。

【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人
通木遼平
恋愛
アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。
が、二人の心の内はそうでもなく……。
※他サイトでも掲載しています

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

救国の魔女様の幸福は
下菊みこと
恋愛
御都合主義のさらっと読めるSSです。
素直になれない案外ネガティブな救国の魔女様と、一目惚れして求婚し続ける一途でちょっと重い自分勝手な王太子殿下のお話です。
小説家になろう様でも投稿しています。


聖女とは国中から蔑ろにされるものと思っていましたが、どうやら違ったようです。婚約破棄になって、国を出て初めて知りました
珠宮さくら
恋愛
婚約者だけでなく、国中の人々から蔑ろにされ続けたアストリットは、婚約破棄することになって国から出ることにした。
隣国に行くことにしたアストリットは、それまでとは真逆の扱われ方をされ、驚くことになるとは夢にも思っていなかった。
※全3話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
オチΣ(・・;)!
でも、後継問題だけ片付けば、
ボンクラ王子様以外はみんな幸せ?
感想ありがとうございます。優秀な親戚の子を後継に据えればボンクラ王子以外はみんな幸せですね!
スッキリと素敵な作品ありがとう
(*≧∀≦)人(≧∀≦*)♪
感想ありがとうございます。楽しんでいただけましたなら幸いです!