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くだらない顛末
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妃の昔の日記の中身を見て、過去の自分自身に呆れ返る。
この頃の自分は本当にボンクラだった。優しく慈愛に溢れた妃にこうも書かれるくらいには。
遠く離れた、我が同盟国との国交を結ぶきっかけとなった…我が元婚約者。
アレも大変私に尽くしてくれた良い女で、その節は本当にお世話になっていたと思うし本当に申し訳ないと思っている。
が、私をここまで更生させてくれたのはやはり彼女が婚約者にと推薦してくれた我が妃だ。
「彼女は本当に聡明だから、それも見越して妃を推薦してくれたのだろうな」
…あるいは、最初は仕返しのつもりもあったかもしれないが。
ともあれ、彼女は夫とおしどり夫婦となり女公爵として幸せに堅実に暮らしている。
妃は聖女として、我が妃として。
数々の成功を収め、多くの人々が愛し感謝している。
息子たち娘たちも妃をとても愛している。
「そして、私自身も…妃を、愛している」
妃は、この日記の後本当に本当に聖女として頑張った。
そして我が妃となってからは、私が王子から王太子になるまでの間に私を更生させようとそれはもう頑張ってくれた。
ここまで傲慢なクズだった私を、賢君と言わしめるほどの男に変えてくれた。
いや、本当に大変だったと思う。
しまいには横っ面を張り倒されたレベルだし。
「それでも見捨てないでくれた」
そして、私は更生するに従って我が妃に本当に恋をした。
それはやがて愛に変わった。
妃は、一度私を軽蔑したはずなのにそれでも再び愛を返してくれた。
子まで産んで、その子たちも深く愛し。
その子たちも大きくなり、次世代の王として、あるいは聖女として…それ以外の子も、それぞれ国益のために身を尽くしている。
「国のため、国民のため、夫のため、子のため…十分すぎるほど頑張ってくれた」
だから、もういいのだと。
眠る妃の頬を撫でる。
妃はこんなどうしようもない男を、真に愛してくれていた。
だから、欲深い隣国の王が我が国を手中に収めんがため私にかけた呪いを代わりに一身に受けてしまった。
優しすぎる、愛が大きすぎる我が愛しの妃よ。
「もう、いいのだ」
お前は次世代の聖女は十分に育ったと王女を励ましたが、次世代の王となる王太子…息子も十分に育った。
私が受けるべき呪いは、私が受ける。
妻の眠るベッドの近くで、私は小指から血を流す。
すると妻を蝕む呪いは、本来の標的たる私の血の匂いに反応して私に襲いかかった。
聖女ではない私にはひとたまりもない。
「…国王、陛下?…国王陛下!………あなた!」
聖女である彼女は呪いから解放されれば、たちまち目を覚ます。
今際の際に、その顔を見られて良かった。
「いやっ…死なないで、あなたっ!」
泣いてくれるのが嬉しい。
「あいしてる」
最期に、ちゃんと言えてよかった。
この頃の自分は本当にボンクラだった。優しく慈愛に溢れた妃にこうも書かれるくらいには。
遠く離れた、我が同盟国との国交を結ぶきっかけとなった…我が元婚約者。
アレも大変私に尽くしてくれた良い女で、その節は本当にお世話になっていたと思うし本当に申し訳ないと思っている。
が、私をここまで更生させてくれたのはやはり彼女が婚約者にと推薦してくれた我が妃だ。
「彼女は本当に聡明だから、それも見越して妃を推薦してくれたのだろうな」
…あるいは、最初は仕返しのつもりもあったかもしれないが。
ともあれ、彼女は夫とおしどり夫婦となり女公爵として幸せに堅実に暮らしている。
妃は聖女として、我が妃として。
数々の成功を収め、多くの人々が愛し感謝している。
息子たち娘たちも妃をとても愛している。
「そして、私自身も…妃を、愛している」
妃は、この日記の後本当に本当に聖女として頑張った。
そして我が妃となってからは、私が王子から王太子になるまでの間に私を更生させようとそれはもう頑張ってくれた。
ここまで傲慢なクズだった私を、賢君と言わしめるほどの男に変えてくれた。
いや、本当に大変だったと思う。
しまいには横っ面を張り倒されたレベルだし。
「それでも見捨てないでくれた」
そして、私は更生するに従って我が妃に本当に恋をした。
それはやがて愛に変わった。
妃は、一度私を軽蔑したはずなのにそれでも再び愛を返してくれた。
子まで産んで、その子たちも深く愛し。
その子たちも大きくなり、次世代の王として、あるいは聖女として…それ以外の子も、それぞれ国益のために身を尽くしている。
「国のため、国民のため、夫のため、子のため…十分すぎるほど頑張ってくれた」
だから、もういいのだと。
眠る妃の頬を撫でる。
妃はこんなどうしようもない男を、真に愛してくれていた。
だから、欲深い隣国の王が我が国を手中に収めんがため私にかけた呪いを代わりに一身に受けてしまった。
優しすぎる、愛が大きすぎる我が愛しの妃よ。
「もう、いいのだ」
お前は次世代の聖女は十分に育ったと王女を励ましたが、次世代の王となる王太子…息子も十分に育った。
私が受けるべき呪いは、私が受ける。
妻の眠るベッドの近くで、私は小指から血を流す。
すると妻を蝕む呪いは、本来の標的たる私の血の匂いに反応して私に襲いかかった。
聖女ではない私にはひとたまりもない。
「…国王、陛下?…国王陛下!………あなた!」
聖女である彼女は呪いから解放されれば、たちまち目を覚ます。
今際の際に、その顔を見られて良かった。
「いやっ…死なないで、あなたっ!」
泣いてくれるのが嬉しい。
「あいしてる」
最期に、ちゃんと言えてよかった。
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