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まさかの出会い
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獣人の国である我が国では、絶対の掟がある。
運命の番…その相手と出会ったらなにがあってもそちらを優先するという掟だ。
運命の番に出会える確率は極めて低いから、恋人やら生まれついての婚約者やらは作るのだが…もし万が一運命の番が見つかったらそっち優先。
結婚しててもそっち優先になる。
だからまあ、こうなったら仕方がないと思うのだ。
「すまないレーヌ…こちらのサラという女性が、僕の運命の番だとわかったんだ…」
「あー…じゃあ、婚約は円満に解消ということで…」
「すまない、僕だけ幸せになって本当にすまない…!!!」
土下座する勢いの元婚約者に仕方がないから気にするなと声をかけて、お相手の運命の番に会釈してその場を去ろうとした。
…が、そういえばここは王家主催のパーティーの場で勝手に帰るのもあれだと気付きさあ大変。
え、気まずい…と思っていたら、さらにパニックになる出来事が起きた。
「我が君!いいえ、レーヌ様!」
「?」
「お久しゅうございます!俺を覚えていますか!?」
見慣れない人族の男。
「生まれてこの方人族と触れ合ったことなどないので人違いでは?」
「ええ、我が君が酷い…覚えていませんか?貴女のくうちゃんですよ」
「くうちゃん…くうちゃん!?」
「はい。前世では俺はれっきとした犬で、貴女は完全なる人族でしたね。今回は俺が人族で我が君は犬の獣人かぁ…お互いを想う気持ちがそうさせたんでしょうかね?」
「マジでくうちゃん!?本当に?絶対に?私の家族のくうちゃん!?」
「そうですよぉ~!ほら、我が君は良くやってくれましたよね。ぎゅーっ」
「くうちゃんだぁああああ!!!」
何故か前世飼ってた大型犬のくうちゃんが、人族になって帰ってきた。
くうちゃんと抱き合ってぎゅうぎゅうする。
くうちゃんとまた出会えたからとりあえずなんでも良し!!!
「ところで我が君、俺に運命の番の匂いは感じますか?」
「え?全然?」
「ぐぅっ…運命の番なら問答無用で連れ去れたのに」
「そもそも獣人族の運命の番は基本獣人族限定だよ?」
「そんなぁ…まあでも、婚約者に捨てられ…げふんげふん、婚約は円満に解消されて今フリーでしょう?結婚しましょう!」
くうちゃんったら先走り過ぎだ。
「もうちょっと良く考えてからプロポーズしようね」
「我が君をこの世界でずっと探してたのにそんなことをおっしゃる!?」
「え、あ、ごめんくうちゃん」
「もう我が君と離れたくない!結婚してください!」
「うーん…」
ちらっと両親の方を見る。
両親はゴーサインを出すので、くうちゃんに頷く。
「両親もオーケーらしいし、断る理由もないから結婚しようか?」
「わーい!我が君ー!!!」
「もー、くうちゃんったら!」
「あ、そうそう。我が君。俺一応この世界での名前はクラウドです。よろしくお願いします」
「くうちゃんはくうちゃんでしょ」
「…ふふ、はい、我が君!!!」
ところでクラウドってたしか…
「そういえば今日、人族のクラウドって名前の王族がここにいるらしいけど」
「あ、それ俺ですよ」
「え、くうちゃん…王族なの!?」
「第三王子ですよ、一応」
「わぁ、第三王子と婚約しちゃった」
「我が君と婚約なんて夢みたいです!」
ちらっと会場全体を見渡せばみんなこちらに注目している。
唯一、元婚約者とその番は二人の世界に入っているが。
「…くうちゃん、ちょっと目立ち過ぎちゃったね」
「バルコニーにでも出て二人きりになりましょうか」
くうちゃんとバルコニーに出る。
「まさかくうちゃんに出会えるなんて…」
「俺は自我が芽生えてすぐに我が君を探し続けていましたから…出会えると信じてましたよ」
元婚約者カップルも幸せそうだし、私も運命の番ではなくともくうちゃんと出会えたから幸せだし、よかったよかった。
「くうちゃん、運命の番じゃなくてもくうちゃんとなら幸せになれると思うから…今度はずっと一緒にいようね」
「我が君ー!大好きー!」
「よしよし、おりこうさん」
こうして私は、人間の国の第三王子であるくうちゃんと婚約することになった。
その後くうちゃんは、準備期間すら煩わしいと即行で人間の国から我が国へ嫁いできた。
我が侯爵家の婿養子になってくれたのだ。
しかもくうちゃん、父曰く超優秀でこれならすぐ代替わりしてもいいくらいらしい。
…実はくうちゃんには内緒だが、くうちゃんが婿入りしてくれる前に私の運命の番と出会った。
でも、私はくうちゃんと結婚すると決めていたから無視して立ち去った。
向こうも妻子持ちらしく、露骨に私から目をそらしたので掟破りはお互い様である。
くうちゃんへの愛は本能の誘惑にも勝ると確信できたので、これから先くうちゃんとの夫婦生活も怖くはない!
くうちゃんも私を裏切ることはないと信じているので、まさに相思相愛、お互いがお互いを信じ合えるだけの土台がしっかりあるはずだ。
「くうちゃん、お婿さんに来てくれてありがとう。愛してるよ」
「俺も我が君を心から愛しています!大好きです!」
「ふふ、もう…」
「我が君、また会えて本当によかった」
「私も良かったよ、くうちゃん」
運命ではなくとも、ある意味もっと運命的な出会いなんだ。
きっと、二人で幸せになれるはず。
私をぎゅうぎゅう抱きしめながら幸せそうに笑うくうちゃんに、そんな気分になった。
運命の番…その相手と出会ったらなにがあってもそちらを優先するという掟だ。
運命の番に出会える確率は極めて低いから、恋人やら生まれついての婚約者やらは作るのだが…もし万が一運命の番が見つかったらそっち優先。
結婚しててもそっち優先になる。
だからまあ、こうなったら仕方がないと思うのだ。
「すまないレーヌ…こちらのサラという女性が、僕の運命の番だとわかったんだ…」
「あー…じゃあ、婚約は円満に解消ということで…」
「すまない、僕だけ幸せになって本当にすまない…!!!」
土下座する勢いの元婚約者に仕方がないから気にするなと声をかけて、お相手の運命の番に会釈してその場を去ろうとした。
…が、そういえばここは王家主催のパーティーの場で勝手に帰るのもあれだと気付きさあ大変。
え、気まずい…と思っていたら、さらにパニックになる出来事が起きた。
「我が君!いいえ、レーヌ様!」
「?」
「お久しゅうございます!俺を覚えていますか!?」
見慣れない人族の男。
「生まれてこの方人族と触れ合ったことなどないので人違いでは?」
「ええ、我が君が酷い…覚えていませんか?貴女のくうちゃんですよ」
「くうちゃん…くうちゃん!?」
「はい。前世では俺はれっきとした犬で、貴女は完全なる人族でしたね。今回は俺が人族で我が君は犬の獣人かぁ…お互いを想う気持ちがそうさせたんでしょうかね?」
「マジでくうちゃん!?本当に?絶対に?私の家族のくうちゃん!?」
「そうですよぉ~!ほら、我が君は良くやってくれましたよね。ぎゅーっ」
「くうちゃんだぁああああ!!!」
何故か前世飼ってた大型犬のくうちゃんが、人族になって帰ってきた。
くうちゃんと抱き合ってぎゅうぎゅうする。
くうちゃんとまた出会えたからとりあえずなんでも良し!!!
「ところで我が君、俺に運命の番の匂いは感じますか?」
「え?全然?」
「ぐぅっ…運命の番なら問答無用で連れ去れたのに」
「そもそも獣人族の運命の番は基本獣人族限定だよ?」
「そんなぁ…まあでも、婚約者に捨てられ…げふんげふん、婚約は円満に解消されて今フリーでしょう?結婚しましょう!」
くうちゃんったら先走り過ぎだ。
「もうちょっと良く考えてからプロポーズしようね」
「我が君をこの世界でずっと探してたのにそんなことをおっしゃる!?」
「え、あ、ごめんくうちゃん」
「もう我が君と離れたくない!結婚してください!」
「うーん…」
ちらっと両親の方を見る。
両親はゴーサインを出すので、くうちゃんに頷く。
「両親もオーケーらしいし、断る理由もないから結婚しようか?」
「わーい!我が君ー!!!」
「もー、くうちゃんったら!」
「あ、そうそう。我が君。俺一応この世界での名前はクラウドです。よろしくお願いします」
「くうちゃんはくうちゃんでしょ」
「…ふふ、はい、我が君!!!」
ところでクラウドってたしか…
「そういえば今日、人族のクラウドって名前の王族がここにいるらしいけど」
「あ、それ俺ですよ」
「え、くうちゃん…王族なの!?」
「第三王子ですよ、一応」
「わぁ、第三王子と婚約しちゃった」
「我が君と婚約なんて夢みたいです!」
ちらっと会場全体を見渡せばみんなこちらに注目している。
唯一、元婚約者とその番は二人の世界に入っているが。
「…くうちゃん、ちょっと目立ち過ぎちゃったね」
「バルコニーにでも出て二人きりになりましょうか」
くうちゃんとバルコニーに出る。
「まさかくうちゃんに出会えるなんて…」
「俺は自我が芽生えてすぐに我が君を探し続けていましたから…出会えると信じてましたよ」
元婚約者カップルも幸せそうだし、私も運命の番ではなくともくうちゃんと出会えたから幸せだし、よかったよかった。
「くうちゃん、運命の番じゃなくてもくうちゃんとなら幸せになれると思うから…今度はずっと一緒にいようね」
「我が君ー!大好きー!」
「よしよし、おりこうさん」
こうして私は、人間の国の第三王子であるくうちゃんと婚約することになった。
その後くうちゃんは、準備期間すら煩わしいと即行で人間の国から我が国へ嫁いできた。
我が侯爵家の婿養子になってくれたのだ。
しかもくうちゃん、父曰く超優秀でこれならすぐ代替わりしてもいいくらいらしい。
…実はくうちゃんには内緒だが、くうちゃんが婿入りしてくれる前に私の運命の番と出会った。
でも、私はくうちゃんと結婚すると決めていたから無視して立ち去った。
向こうも妻子持ちらしく、露骨に私から目をそらしたので掟破りはお互い様である。
くうちゃんへの愛は本能の誘惑にも勝ると確信できたので、これから先くうちゃんとの夫婦生活も怖くはない!
くうちゃんも私を裏切ることはないと信じているので、まさに相思相愛、お互いがお互いを信じ合えるだけの土台がしっかりあるはずだ。
「くうちゃん、お婿さんに来てくれてありがとう。愛してるよ」
「俺も我が君を心から愛しています!大好きです!」
「ふふ、もう…」
「我が君、また会えて本当によかった」
「私も良かったよ、くうちゃん」
運命ではなくとも、ある意味もっと運命的な出会いなんだ。
きっと、二人で幸せになれるはず。
私をぎゅうぎゅう抱きしめながら幸せそうに笑うくうちゃんに、そんな気分になった。
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