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彼女はお友達を屋敷に招く
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「マドロン様!いらっしゃい!」
「お招きありがとうございます、テレーズ様!」
この日、テレーズは初めての貴族のお友達を屋敷に招いた。もちろんボーモンに許可は得ている。使用人たちはテレーズの初めてのお友達と知り、ものすごく張り切っている。
「わー……やっぱり侯爵家ってすごく広くて煌びやかですねー……」
まだ貴族に成り立てほやほや、平民の感覚が抜けないマドロンはしばらくぽーっと屋敷に見惚れていた。
「マドロン様のご実家は?」
「新興貴族とはいえ一応男爵家ですし、それなりの領地も与えられたので屋敷も用意しましたよ。正直実家住まいなのに、実家な気がしません。豪華過ぎて落ち着かないというか」
「なるほど」
「両親や兄、姉達は適応してますけどね」
「お兄様もいらっしゃる?」
「はい。天才三姉妹なんて呼ばれてますけどね、本当の天才は兄なんです。姉さん達も認める程の商才があるんですよ」
「詳しく聞きたいです!」
キラキラした目で見られたマドロンは、裏表のないテレーズの様子にほっとする。やはり、この貴族社会においてテレーズ様は特別だと改めて思っていた。
「私達姉妹はどちらかというと金食い虫なんです。興味の向くまま気の向くまま、お金を費やして魔道具ばかり作って。その魔道具を、貴族や商人を相手に売り込んでお金に換えてくれたのが兄。もちろん好き放題研究させてくれる両親にも感謝していますが、それを支えてくれる兄は必要不可欠なんです」
誇らしげに兄を自慢するマドロン。テレーズはそんなマドロンを微笑ましく思う。テレーズにも兄がいるので、気持ちは良く分かるつもりだ。前世では独りぼっちだったので、記憶を取り戻した今は余計にその存在の大きさを感じる。
「領地なんていきなり与えられて、そんな中でもやはり兄が領地経営をしてくれてなんとかなっています。今のところ、領民達からの評判も良いですよ。優しくて優秀な兄なんです!あ、もちろん姉達も大好きですよ?たまに意地悪だけど、何かあれば飛んできてくれるくらい優しいです。発明家としても学ぶことが多くて」
「とっても素敵ですね!」
「そうなんです!」
テレーズに兄達を褒められてご満悦のマドロン。
「兄が私達の発明をお金に換えてくれるので、男爵家にしては割とお金持ちな方ですし。領民達とも上手くいっていますし。兄がいるうちは我が家は安泰です。ただ、無理をしないか心配ですが……」
「そうですね。色々と忙しそうですものね」
「そうなんです……」
話に花が咲く。テレーズもマドロンも楽しそうである。邪魔をしないように気遣いながら、紅茶のおかわりを注いだり空になったお菓子の皿を下げるマルカ。彼女も、もうすっかりテレーズの専属メイドとして成長を遂げていた。
「お招きありがとうございます、テレーズ様!」
この日、テレーズは初めての貴族のお友達を屋敷に招いた。もちろんボーモンに許可は得ている。使用人たちはテレーズの初めてのお友達と知り、ものすごく張り切っている。
「わー……やっぱり侯爵家ってすごく広くて煌びやかですねー……」
まだ貴族に成り立てほやほや、平民の感覚が抜けないマドロンはしばらくぽーっと屋敷に見惚れていた。
「マドロン様のご実家は?」
「新興貴族とはいえ一応男爵家ですし、それなりの領地も与えられたので屋敷も用意しましたよ。正直実家住まいなのに、実家な気がしません。豪華過ぎて落ち着かないというか」
「なるほど」
「両親や兄、姉達は適応してますけどね」
「お兄様もいらっしゃる?」
「はい。天才三姉妹なんて呼ばれてますけどね、本当の天才は兄なんです。姉さん達も認める程の商才があるんですよ」
「詳しく聞きたいです!」
キラキラした目で見られたマドロンは、裏表のないテレーズの様子にほっとする。やはり、この貴族社会においてテレーズ様は特別だと改めて思っていた。
「私達姉妹はどちらかというと金食い虫なんです。興味の向くまま気の向くまま、お金を費やして魔道具ばかり作って。その魔道具を、貴族や商人を相手に売り込んでお金に換えてくれたのが兄。もちろん好き放題研究させてくれる両親にも感謝していますが、それを支えてくれる兄は必要不可欠なんです」
誇らしげに兄を自慢するマドロン。テレーズはそんなマドロンを微笑ましく思う。テレーズにも兄がいるので、気持ちは良く分かるつもりだ。前世では独りぼっちだったので、記憶を取り戻した今は余計にその存在の大きさを感じる。
「領地なんていきなり与えられて、そんな中でもやはり兄が領地経営をしてくれてなんとかなっています。今のところ、領民達からの評判も良いですよ。優しくて優秀な兄なんです!あ、もちろん姉達も大好きですよ?たまに意地悪だけど、何かあれば飛んできてくれるくらい優しいです。発明家としても学ぶことが多くて」
「とっても素敵ですね!」
「そうなんです!」
テレーズに兄達を褒められてご満悦のマドロン。
「兄が私達の発明をお金に換えてくれるので、男爵家にしては割とお金持ちな方ですし。領民達とも上手くいっていますし。兄がいるうちは我が家は安泰です。ただ、無理をしないか心配ですが……」
「そうですね。色々と忙しそうですものね」
「そうなんです……」
話に花が咲く。テレーズもマドロンも楽しそうである。邪魔をしないように気遣いながら、紅茶のおかわりを注いだり空になったお菓子の皿を下げるマルカ。彼女も、もうすっかりテレーズの専属メイドとして成長を遂げていた。
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