72 / 98
お兄さんの信奉する女神様とやらに会う
しおりを挟む
アリス先生が、先ほどの出来事をパパに話した。
エンキドゥさんは口を挟まず黙ってパパとアリス先生を見守る。
パパは全て聞き終わると、エンキドゥさんに頭を下げた。
「娘が世話になった。礼を言う」
「女神の命だ、気にしなくていい」
「だが、お前を信じていいのかわからない」
「そうだろうな、当然だ。自分はただ、魔族からお前たち人間を守り続けるのみ」
「そうか…」
パパとアリス先生は顔を見合わせて、これからどうするか考えている。
その間もパパはさりげなく私の頭を撫でるし、アリス先生は私のおじさんに触られた方の手を握って離さない。
「…ああ、女神が人間と話したいそうだ。ちょっと待ってくれ」
「は?」
「これで女神と話ができる」
エンキドゥさんが水晶を取り出すと、水晶から光が溢れて…ホログラム的な感じで女神様の姿が映された。
我が国教の神様じゃないけれど、たしかに神聖さを感じる美しい人。
「皆、無事ですね?よかった…エンキドゥ、ありがとう」
「女神、自分はいいから説明を」
「ああ、そうですよね…えっと、初めまして。魔の討伐を担当する女神である、ニンキガルです」
「ニンキガル様…」
「この度は、私が後手に回ったせいで怖い目に遭わせてごめんなさい」
頭を下げる女神様。
「女神様、顔を上げて。エンキドゥが助けてくれたから僕とアニエスは助かった」
「ありがとう、優しいですね。…ああ、そちらのお嬢さんはそんなに怖かったのですね。声が出なくなっている…私の力で癒しましょう」
パッと私の周りに優しい光の粒が舞って、身体も心も楽になった。起き上がってみる。
「アニエス!」
「起きて大丈夫かい?」
「うん。なんか楽になった。ありがとうございます、女神様」
「いえ、いいのです。それで、ここからが本題なのですが…」
女神様が申し訳なさそうに言った。
「魔を退けるには、世界に溢れる邪気を祓うのが一番です。そうすれば自然と存在出来なくなりますから」
「それで?」
「今、世界には魔王がいた頃と比べてやや少ないですが邪気が溢れています。なので、邪気を祓う必要に迫られているのです」
「…つまり?」
「私が力を授けますので、邪気を祓ってほしいのです」
なるほどと頷けばパパは言う。
「そのために恩を売ったのか?」
「いえ、そうではありません。純粋に誰にも犠牲になって欲しくなかったのです」
「…そうか。その力は誰でも使えるのか?もし誰でもいいなら俺がやろう」
「いえ、残念ながら根源の接続者にしか力を授けることができません」
パパとアリス先生は顔を見合わせて言う。
「なら僕が…」
「私がやります」
私が言えば、パパとアリス先生はギョッとする。
「ちょっとアニエス!?」
「何を言っている!?」
「だってさっきのでアリス先生は私が人質に取られたらなにするかわからないって…わかったから。だったら私がやる」
「アニエス…」
「人間、よく言った。そんなに小さくか弱くとも家族を大切にできる。自分は人間を尊敬する」
エンキドゥさんが褒めてくれるけど、パパとアリス先生はすごい傷ついた顔をする。
ごめんね、でもアリス先生にはちょっと任せられないや。
「…そちらのお嬢さんに力を授ける、ということでいいですか?」
「はい」
「では、力を授けます」
光の粒が私を包む。
「これで力は与えられました」
「…あの、邪気払いって具体的にはどうすれば?」
「貴女がいれば大丈夫です」
…ふむ?
「貴女が邪気に近づけば、邪気はそれで祓われます」
「じゃあ世界の邪気払いって…」
「はい、世界一周旅行をしていただければそれで」
「待って、ならアニエスは例えば魔族に触れられたりしたら…」
「魔族が死にます」
なんてことだろう、むしろ安全が増した。
パパとアリス先生がものすごく安心した顔でベッドに突っ伏す。
「よかったぁ…」
「思ったよりは危ないことはなさそうだな…」
「それでも魔族には狙われるだろうが、自分が守る。その代わり、世界一周旅行に行って欲しい」
「なら三人で、家族旅行に行こうか…」
「そうだな、しばらくの間留守はルイが守ってくれるから心配はない」
ということで、急ですが世界一周旅行が決まりました。
「苦労をおかけして大変申し訳ないのですが、どうか世界をお救いください」
「はい、頑張ります!」
「エンキドゥ、どうかお嬢さんを守ってね」
「もちろんだ、女神よ」
なんだか壮大な話になってしまったけど、まあ大丈夫でしょう。うん。
エンキドゥさんは口を挟まず黙ってパパとアリス先生を見守る。
パパは全て聞き終わると、エンキドゥさんに頭を下げた。
「娘が世話になった。礼を言う」
「女神の命だ、気にしなくていい」
「だが、お前を信じていいのかわからない」
「そうだろうな、当然だ。自分はただ、魔族からお前たち人間を守り続けるのみ」
「そうか…」
パパとアリス先生は顔を見合わせて、これからどうするか考えている。
その間もパパはさりげなく私の頭を撫でるし、アリス先生は私のおじさんに触られた方の手を握って離さない。
「…ああ、女神が人間と話したいそうだ。ちょっと待ってくれ」
「は?」
「これで女神と話ができる」
エンキドゥさんが水晶を取り出すと、水晶から光が溢れて…ホログラム的な感じで女神様の姿が映された。
我が国教の神様じゃないけれど、たしかに神聖さを感じる美しい人。
「皆、無事ですね?よかった…エンキドゥ、ありがとう」
「女神、自分はいいから説明を」
「ああ、そうですよね…えっと、初めまして。魔の討伐を担当する女神である、ニンキガルです」
「ニンキガル様…」
「この度は、私が後手に回ったせいで怖い目に遭わせてごめんなさい」
頭を下げる女神様。
「女神様、顔を上げて。エンキドゥが助けてくれたから僕とアニエスは助かった」
「ありがとう、優しいですね。…ああ、そちらのお嬢さんはそんなに怖かったのですね。声が出なくなっている…私の力で癒しましょう」
パッと私の周りに優しい光の粒が舞って、身体も心も楽になった。起き上がってみる。
「アニエス!」
「起きて大丈夫かい?」
「うん。なんか楽になった。ありがとうございます、女神様」
「いえ、いいのです。それで、ここからが本題なのですが…」
女神様が申し訳なさそうに言った。
「魔を退けるには、世界に溢れる邪気を祓うのが一番です。そうすれば自然と存在出来なくなりますから」
「それで?」
「今、世界には魔王がいた頃と比べてやや少ないですが邪気が溢れています。なので、邪気を祓う必要に迫られているのです」
「…つまり?」
「私が力を授けますので、邪気を祓ってほしいのです」
なるほどと頷けばパパは言う。
「そのために恩を売ったのか?」
「いえ、そうではありません。純粋に誰にも犠牲になって欲しくなかったのです」
「…そうか。その力は誰でも使えるのか?もし誰でもいいなら俺がやろう」
「いえ、残念ながら根源の接続者にしか力を授けることができません」
パパとアリス先生は顔を見合わせて言う。
「なら僕が…」
「私がやります」
私が言えば、パパとアリス先生はギョッとする。
「ちょっとアニエス!?」
「何を言っている!?」
「だってさっきのでアリス先生は私が人質に取られたらなにするかわからないって…わかったから。だったら私がやる」
「アニエス…」
「人間、よく言った。そんなに小さくか弱くとも家族を大切にできる。自分は人間を尊敬する」
エンキドゥさんが褒めてくれるけど、パパとアリス先生はすごい傷ついた顔をする。
ごめんね、でもアリス先生にはちょっと任せられないや。
「…そちらのお嬢さんに力を授ける、ということでいいですか?」
「はい」
「では、力を授けます」
光の粒が私を包む。
「これで力は与えられました」
「…あの、邪気払いって具体的にはどうすれば?」
「貴女がいれば大丈夫です」
…ふむ?
「貴女が邪気に近づけば、邪気はそれで祓われます」
「じゃあ世界の邪気払いって…」
「はい、世界一周旅行をしていただければそれで」
「待って、ならアニエスは例えば魔族に触れられたりしたら…」
「魔族が死にます」
なんてことだろう、むしろ安全が増した。
パパとアリス先生がものすごく安心した顔でベッドに突っ伏す。
「よかったぁ…」
「思ったよりは危ないことはなさそうだな…」
「それでも魔族には狙われるだろうが、自分が守る。その代わり、世界一周旅行に行って欲しい」
「なら三人で、家族旅行に行こうか…」
「そうだな、しばらくの間留守はルイが守ってくれるから心配はない」
ということで、急ですが世界一周旅行が決まりました。
「苦労をおかけして大変申し訳ないのですが、どうか世界をお救いください」
「はい、頑張ります!」
「エンキドゥ、どうかお嬢さんを守ってね」
「もちろんだ、女神よ」
なんだか壮大な話になってしまったけど、まあ大丈夫でしょう。うん。
417
お気に入りに追加
2,000
あなたにおすすめの小説
神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました
下菊みこと
恋愛
突然通り魔に殺されたと思ったら望んでもないのに記憶を持ったまま転生してしまう主人公。転生したは良いが見目が怪しいと実親に捨てられて、代わりにその怪しい見た目から宗教の教徒を名乗る人たちに拾ってもらう。
そこには自分と同い年で、神の子と崇められる兄がいた。
自分ははっきりと神の子なんかじゃないと拒否したので助かったが、兄は大人たちの期待に応えようと頑張っている。
そんな兄に気を遣っていたら、いつのまにやらかなり溺愛、執着されていたお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
勝手ながら、タイトルとあらすじなんか違うなと思ってちょっと変えました。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~
猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。
現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。
現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、
嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、
足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。
愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。
できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、
ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。
この公爵の溺愛は止まりません。
最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します
佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚
不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。
私はきっとまた、二十歳を越えられないーー
一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。
二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。
三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――?
*ムーンライトノベルズにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる