21 / 98
お嬢様に聞いてみる
しおりを挟む
あれから私は定期的にセリーヌ様とお茶会をしている。
セリーヌ様はすっかり婚活に前向きになって、今では素敵な婚約者もゲットしたという。
婚約者との関係も良好で、アドバイスした私はセリーヌ様にとても感謝された。
今日もそんなセリーヌ様と絶賛お茶会中なのだが、はたと思いついた。
そうだ、セリーヌ様なら皇帝陛下とパパの関係について知ってるかもしれない。
「セリーヌ様、セリーヌ様」
「なんですの?アニエスちゃん」
「セリーヌ様に質問してもいいですか?」
「もちろんですわ!なんですの?」
「皇帝陛下とパパの関係とか…聞いてもいいですか?」
聞いてちょっと不安になって、俯いてしまう。
セリーヌ様は、そんな私の頭を優しく撫でる。
「私に遠慮はいらないですわ。可愛いアニエスちゃんの質問ですもの。答えますわ」
「セリーヌ様…!」
「皇帝陛下にひどいことをされたとも聞きましたわ。皇帝陛下は一転してアニエスちゃんを庇護すると仰ったそうですけれど…気になるのも当然ですわ」
そしてセリーヌ様から聞いた皇帝陛下とパパとの関係は、割と壮絶だった。
皇帝陛下はまだ幼い第一王子だった頃、第二王子だった弟を敵国のスパイによる暗殺?で亡くしたらしい。皇帝陛下を庇ってのことだったとか。
皇帝陛下は自分のせいだと塞ぎ込み、それを幼く純粋な上自身も弟ラブで気持ちがよく分かると思っていたパパが「俺が従兄上の弟になる!」と本人に宣言してから依存というか甘やかしが始まった。
その後成長して、そこからが本当の共依存の始まり。パパの弟…私の本当のお父さんが、駆け落ちした。弟ラブだったらしいパパは落ち込み、皇帝陛下はそんなパパを甘やかした。
そんな状況で皇帝陛下は即位しパパは侯爵になり、二人の関係はますます歪み始めていったらしい。そしてその後、パパの婚約者がうんぬんかんぬんとかもあって取り返しがつかなくなったとか。そこは言葉を濁された。
「…控えめに言って地獄」
「ですわね」
「ていうか、本当のお父さんにそんな責任の一端が…」
「アニエスちゃんは悪くありませんわ」
「ううん…はい…」
でも、一番の原因はパパの婚約者さん…との出来事な気がする。話し振り的に。でもそこはセリーヌ様は言いたくないっぽい。そりゃあ人の婚約者の話だもんね。
「…お話してくれてありがとうございました」
「いいえ。このくらいならいくらでも」
子供相手でもちゃんと向き合ってくれるあたり、セリーヌ様は高飛車だけど結構いい人だ。幸せになってほしいな。
「ところで、皇室と教会の仲をパパが取り持ったって本当ですか?」
「あら、よくご存知ですわね」
今のうちに聞けるだけ聞いておけと、セリーヌ様に質問をさらに投げかける。セリーヌ様はまたも丁寧に答えてくれた。
「皇帝陛下は、神を信じておりませんわ。弟君のことがありましたから…信仰などかなぐり捨ててしまわれたんですの」
「はい」
その気持ちは、神への絶望は…想像を絶するほどのものだろう。
「元々皇室と権力闘争していた教会が邪魔だったのもあって、皇帝陛下は即位後すぐに教会をぶっ潰そうとしたんですの」
「あー…」
半分以上、弟を救わなかった神様への復讐に近いものだったのかな。
「皇帝陛下は反対意見も押しのけて教会潰しに躍起になり、実際色々と権力や法を使い教会の地位をだいぶ追い落としましたわ」
「わぁ」
「けれど、いよいよ本格的に教会を壊してしまおうという時侯爵様が待ったをかけたんですの」
パパも神様を信じてなさそうだったけど。
「…うふふ。さすがアニエスちゃん、その顔は気付いてますわね?ご名答ですわ。侯爵様はおそらく、皇帝陛下と同じく神を信じておりません」
「じゃあなんで?」
「さあ?色々な策謀もおありでしょう。けれど、教会を潰した結果広がる民の混乱なども憂慮されたものと思いますわ」
パパ、領民たちは本当に大事にしてるからね。ありそう。
「なるほどなるほど…」
「ふふ、他にも気になることがあればいつでも聞いてくださいまし」
「本当にありがとうございます!」
セリーヌ様はまた私の頭を撫でる。
優しい手つきに、なんとなく落ち着いた。
セリーヌ様はすっかり婚活に前向きになって、今では素敵な婚約者もゲットしたという。
婚約者との関係も良好で、アドバイスした私はセリーヌ様にとても感謝された。
今日もそんなセリーヌ様と絶賛お茶会中なのだが、はたと思いついた。
そうだ、セリーヌ様なら皇帝陛下とパパの関係について知ってるかもしれない。
「セリーヌ様、セリーヌ様」
「なんですの?アニエスちゃん」
「セリーヌ様に質問してもいいですか?」
「もちろんですわ!なんですの?」
「皇帝陛下とパパの関係とか…聞いてもいいですか?」
聞いてちょっと不安になって、俯いてしまう。
セリーヌ様は、そんな私の頭を優しく撫でる。
「私に遠慮はいらないですわ。可愛いアニエスちゃんの質問ですもの。答えますわ」
「セリーヌ様…!」
「皇帝陛下にひどいことをされたとも聞きましたわ。皇帝陛下は一転してアニエスちゃんを庇護すると仰ったそうですけれど…気になるのも当然ですわ」
そしてセリーヌ様から聞いた皇帝陛下とパパとの関係は、割と壮絶だった。
皇帝陛下はまだ幼い第一王子だった頃、第二王子だった弟を敵国のスパイによる暗殺?で亡くしたらしい。皇帝陛下を庇ってのことだったとか。
皇帝陛下は自分のせいだと塞ぎ込み、それを幼く純粋な上自身も弟ラブで気持ちがよく分かると思っていたパパが「俺が従兄上の弟になる!」と本人に宣言してから依存というか甘やかしが始まった。
その後成長して、そこからが本当の共依存の始まり。パパの弟…私の本当のお父さんが、駆け落ちした。弟ラブだったらしいパパは落ち込み、皇帝陛下はそんなパパを甘やかした。
そんな状況で皇帝陛下は即位しパパは侯爵になり、二人の関係はますます歪み始めていったらしい。そしてその後、パパの婚約者がうんぬんかんぬんとかもあって取り返しがつかなくなったとか。そこは言葉を濁された。
「…控えめに言って地獄」
「ですわね」
「ていうか、本当のお父さんにそんな責任の一端が…」
「アニエスちゃんは悪くありませんわ」
「ううん…はい…」
でも、一番の原因はパパの婚約者さん…との出来事な気がする。話し振り的に。でもそこはセリーヌ様は言いたくないっぽい。そりゃあ人の婚約者の話だもんね。
「…お話してくれてありがとうございました」
「いいえ。このくらいならいくらでも」
子供相手でもちゃんと向き合ってくれるあたり、セリーヌ様は高飛車だけど結構いい人だ。幸せになってほしいな。
「ところで、皇室と教会の仲をパパが取り持ったって本当ですか?」
「あら、よくご存知ですわね」
今のうちに聞けるだけ聞いておけと、セリーヌ様に質問をさらに投げかける。セリーヌ様はまたも丁寧に答えてくれた。
「皇帝陛下は、神を信じておりませんわ。弟君のことがありましたから…信仰などかなぐり捨ててしまわれたんですの」
「はい」
その気持ちは、神への絶望は…想像を絶するほどのものだろう。
「元々皇室と権力闘争していた教会が邪魔だったのもあって、皇帝陛下は即位後すぐに教会をぶっ潰そうとしたんですの」
「あー…」
半分以上、弟を救わなかった神様への復讐に近いものだったのかな。
「皇帝陛下は反対意見も押しのけて教会潰しに躍起になり、実際色々と権力や法を使い教会の地位をだいぶ追い落としましたわ」
「わぁ」
「けれど、いよいよ本格的に教会を壊してしまおうという時侯爵様が待ったをかけたんですの」
パパも神様を信じてなさそうだったけど。
「…うふふ。さすがアニエスちゃん、その顔は気付いてますわね?ご名答ですわ。侯爵様はおそらく、皇帝陛下と同じく神を信じておりません」
「じゃあなんで?」
「さあ?色々な策謀もおありでしょう。けれど、教会を潰した結果広がる民の混乱なども憂慮されたものと思いますわ」
パパ、領民たちは本当に大事にしてるからね。ありそう。
「なるほどなるほど…」
「ふふ、他にも気になることがあればいつでも聞いてくださいまし」
「本当にありがとうございます!」
セリーヌ様はまた私の頭を撫でる。
優しい手つきに、なんとなく落ち着いた。
276
お気に入りに追加
2,000
あなたにおすすめの小説
神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました
下菊みこと
恋愛
突然通り魔に殺されたと思ったら望んでもないのに記憶を持ったまま転生してしまう主人公。転生したは良いが見目が怪しいと実親に捨てられて、代わりにその怪しい見た目から宗教の教徒を名乗る人たちに拾ってもらう。
そこには自分と同い年で、神の子と崇められる兄がいた。
自分ははっきりと神の子なんかじゃないと拒否したので助かったが、兄は大人たちの期待に応えようと頑張っている。
そんな兄に気を遣っていたら、いつのまにやらかなり溺愛、執着されていたお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
勝手ながら、タイトルとあらすじなんか違うなと思ってちょっと変えました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~
猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。
現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。
現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、
嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、
足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。
愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。
できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、
ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。
この公爵の溺愛は止まりません。
最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる