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おじさん
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パパは私に甘々で、そして過保護になった。
「それでねパパ。お部屋にお迎えした猫ちゃんがね、夜になると大運動会してるの!可愛いでしょ」
「可愛いのは良いがそれで寝れるのか」
「全然平気!」
「それならいいが」
「それで、執事さんがそろそろ私に婚約者とか言ってたけど」
私の言葉に、お父様は眉を寄せる。その顔好き。
「俺はそんなこと許していない」
「でも早めが良いんじゃないの?」
「お前には早すぎる。まだ先でいい」
あらまあすっかり過保護になっちゃって。
あんまりにも溺愛されるようになってちょっとニマニマしてしまう。
「…なんだ」
「ん?今日もパパが大好きだなぁって」
「ふん…」
口の端がピクピクしてる。嬉しくてにやけないように必死なの丸わかりだ。
「ともかく、執事には俺から言っておくからそんなことは心配しなくていい」
「はーい」
顔のいいパパを毎日眺めて、溺愛されて、今日も私は幸せです!
でも、婚約者の話は気になるなぁ。
執事は、そろそろ決めるようにご当主様に進言するって言ってたけど。
ある日、パパと水入らずでお茶の時間を過ごしていたらお客様がきた。
「…おや。これはアニエスお嬢様。ごきげんよう」
「あ、マルソーおじさん。ごきげんよう」
「俺は無視か?」
「はは。相変わらずですね、ジャック様。お元気にしていましたか?」
「お前の顔を見て気分が悪くなった」
パパにボロクソに言われているこのおじさんはマルソー・オダ・クリゾベリル。伯爵様。
穏やかそうな外見に似合わず野心家らしく、どういう縁かパパにも無下に出来ない存在らしい。
「お嬢様との仲がすっかりと改善されたという噂は本当だったようですね」
「ふん。なにか文句があるか?」
「いえいえ、大変よろしいことかと」
ふん、と冷たくあしらうパパ。
「ところでお嬢様。そろそろ同年代のお友達などいかがでしょうか」
「お友達?」
「おい、なにを企んでいる?」
「うちの次男を、お嬢様の最初のお友達にどうかと思いまして」
「マルソーおじさんの次男さんとお友達に?」
突然のお話にきょとんとしてしまう。
マルソーおじさんは別に嫌いじゃないし、その息子さんなら悪くはないけど。
「…ふん。毎度毎度よく考えるものだ」
「いいではありませんか。天才と褒め称えられるお嬢様の支えになれれば、息子も幸せでしょう。お嬢様の情操教育にもよろしいと思いますが?」
「知らん」
冷たいお父様の態度にもマルソーおじさんはめげない。
「アニエス。お前はどうしたい?」
「…私が決めていいの?」
「お前自身のことなんだ。好きにしろ」
…ふむ。
それなら私は…。
「それでねパパ。お部屋にお迎えした猫ちゃんがね、夜になると大運動会してるの!可愛いでしょ」
「可愛いのは良いがそれで寝れるのか」
「全然平気!」
「それならいいが」
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「ふん…」
口の端がピクピクしてる。嬉しくてにやけないように必死なの丸わかりだ。
「ともかく、執事には俺から言っておくからそんなことは心配しなくていい」
「はーい」
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「俺は無視か?」
「はは。相変わらずですね、ジャック様。お元気にしていましたか?」
「お前の顔を見て気分が悪くなった」
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「ふん。なにか文句があるか?」
「いえいえ、大変よろしいことかと」
ふん、と冷たくあしらうパパ。
「ところでお嬢様。そろそろ同年代のお友達などいかがでしょうか」
「お友達?」
「おい、なにを企んでいる?」
「うちの次男を、お嬢様の最初のお友達にどうかと思いまして」
「マルソーおじさんの次男さんとお友達に?」
突然のお話にきょとんとしてしまう。
マルソーおじさんは別に嫌いじゃないし、その息子さんなら悪くはないけど。
「…ふん。毎度毎度よく考えるものだ」
「いいではありませんか。天才と褒め称えられるお嬢様の支えになれれば、息子も幸せでしょう。お嬢様の情操教育にもよろしいと思いますが?」
「知らん」
冷たいお父様の態度にもマルソーおじさんはめげない。
「アニエス。お前はどうしたい?」
「…私が決めていいの?」
「お前自身のことなんだ。好きにしろ」
…ふむ。
それなら私は…。
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